恋の終わりもその先も~ずっと好きだった幼なじみに失恋したので、

愛早さくら

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02・マディ

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 マディはレマディオ・フェリティラと言って、フェリティラ公爵家の次男に当たる。
 おそらくは公爵家を継ぐだろう予定の人物であり、俺の幼なじみでもある。そして俺の副官と言ってもいい人物でもあった。
 階級は王立うちの騎士団の副団長。
 俺ほどではないが、武力――……マディの場合は主に体術だろうか? ちなみに俺は剣術の方が得意なんだ。体術だけはマディに敵わないんだが、これは多分体格差もあるんだろう、とにかく武力や、魔術に優れている。
 同じ年ではあれど、俺より数ヶ月だけ年上で、ふわふわのくせ毛をしていて、そして目がかわいい。
 俺もまぁ、目は大きい方なんだけど、マディの目はくりっとしていて、ちょっと垂れ気味で、だからか、童顔に見える方なのではないかと思う。
 それでいて男らしさや精悍さも併せ持っているなんていったいどうなっているというのか。
 存在自体がずるい・・・と言っていいだろう。
 俺より少しだけ濃い、赤みを帯びた金髪と琥珀色の瞳はまるで宝石のよう。
 全体的に柔和そうに見えるけど、仕草や口調なんかは案外と粗野だ。
 腹立たしいことに、俺より5センチばかり背が高く、たったそれだけしか違わないはずなのに、体格差を意識せずにはいられないぐらいには、体の厚みがあって。
 もっとも俺は? マディとは違って美しいので?
 かわいい、だなんて印象は間違ってもないだろうが、女性的な美しさがあるだとかなんだとかは言われたことがある。
 俺は男なんだが。
 女性的な美しさって何だ、俺にも女性にも失礼ってものだろう、そんなことを言っていたやつは多分、認知が歪んでいたのだろう。それはともかく。
 マディは垂れ気味の目がかわいいのだ。
 ふわふわな髪も、まるで犬だとか猫だとかみたいで。
 つけられているあだ名が狂犬・・であることも相俟って、間違いなくなのだろう。
 正確には『狂戦士バーサーカー狂犬いぬ』だ。
 なお、『狂戦士バーサーカー』とは俺のことを指しているのだが、初めにそう言いだしたやつもやはり認知が歪んでいるとしか考えられない。
 俺のように美しい『狂戦士バーサーカー』があるものか。

「何言ってんだよ、ぴったりじゃねぇか……自覚ねぇのかよ、お前……」

 とか何とか、他でもないマディが言っていたけれど知ったこっちゃない。お前の目も節穴か。

「魔獣って見ると、暴走馬車みたいに突っ込んでいくだろ、いつも」

 などとも呆れたように、疲れたようにぼやかれたけれど、マディこそ、俺が止めなければ止まれない『狂犬いぬ』の分際で何を言うのかという話だ。
 そんな風に俺とマディは幼なじみらしく仲が良かった。
 公爵家と王家。それぞれ同じ年。当然、そこまで近くはなくとも縁戚関係にはあるし……――確か、再従兄妹とか、その甥とか叔父とかだったはずだ。だから、当たり前のように物心つく前からほとんど兄弟のようにして育って、学校も一緒で、卒業した後の就職先・・・まで一緒だった。
 もっとも、身分も踏まえて元々その予定で育てられたという部分もあるだろう、つまりマディは幼い頃から、俺に仕えることを半ば決められていたという話だ。
 それは何もおかしなことではないし、別に不満もない。
 やはり、身分も踏まえて、例えば俺の側にいるのが嫌だと思うなら、離れていったって誰も咎められないことだろう。
 マディはティシクニ公爵家の人間でありながら同時に隣国リゼナシアの王甥でもあるからだ。
 母親がリゼナシアの現国王の王兄なので。
 そして俺はそんな、幼い頃からずっと一緒にいるマディに――……恋をしているのだった。
 子供の頃から、ずっと。
 それは、マディ本人に、これまで告げたことのない・・・・・・・・恋心だった。
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