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*04・昼下がり②
しおりを挟む執務室の隣には仮眠室を整えてあった。
浴槽はないがシャワーもある。
仮眠室と言うだけあって決して広くはなく、だけど、足を伸ばして寝るのに十分な大きさのベッドは、常に使用出来る状態で用意されていて。
ベッドの他にあるのは、一人がけのソファだけ。
窓もない仮眠室は薄暗く、執務室からしかつながっていない関係もあって、灯りを付けなければ真っ暗になる。
特にこんな風に扉を閉めてしまうと、音も漏れない密室の出来上がり。
難点というならば、鍵がないところだろうか。
だけどそんなもの、結界を張ってしまえば済む。
「執務室でそのまま始めたりしない分別を褒めて欲しいほどだよね」
「何言ってんだ、お前」
もっとも、執務室で致したことがないとは言わないけれども。
かっちりと整えていた騎士服の襟元を寛げ、リシュが小さく笑いながらこぼした言葉に、マディは呆れたような声で返した。
「就業時間にこんなことに誘ってる時点で分別があるって言わねぇんだよ」
言いながら後ろから抱きすくめられ、びく、思わず体を震わせてしまう。
「乗ってくる君にも勿論ないけどね」
分別なんて、そんなもの。リシュになければマディにもあるはずがなく、だけどこんなもの、ただの言葉遊びだなんてことお互いに分かっている。
それでもなんとなく癪に触って、肩口に顔を埋めるように、唇を寄せてきたマディの髪の毛を、くしゃとやや乱暴にかき混ぜてやった。
「おい、髪の毛やめろ。ぐしゃぐしゃになんだろ」
「はは。元から鳥の巣みたいな頭してるんだから、少しぐらい乱したって大差ないよ」
「全然ちげぇわっ! これでも絡まらないようにはしてるんだっての」
知ってるだろ?
「ぁっ……」
言いながらマディの器用な手はリシュのあまり乱れていなかった上着を乱していく。
ぐいと下に引かれたことによって、露わになった首筋に、かぷり、小さく歯を立てられた。
そのままちゅ、ちゅ、と幾度も口付けられ、時折、噛まれたり舐められたりしているうちに、そこまで高まっていたわけでもないリシュの性感が、否が応でも刺激された。
「ぁっ、ぁっ、んんっ……」
張り詰めて苦しくなってきた腰元の象徴に誘われるようにして、リシュは自分からベルトを外し、下肢を緩めていく。
騎士服、特にリシュが身に纏う団長用の装飾が他よりも多いそれは決して着脱しやすくは出来ていないが、幾度もこんなことをしていてはお互いに慣れないわけがなく、さして労もなく、だけど何処かもどかしく思いながら引きずり下ろした。
「んっ、はっ……待ても、出来ないのか……? 少し離せ、脱ぎにくい」
身を捩ったのに、マディからの拘束がきつくなる。
「マディ?」
声を尖らせたリシュに、マディは肩の辺りにひときわ強く吸い付いてきて。
「誘ってきたのはお前だろ」
文句を言うなと言わんばかりに、とさ、ベッドへと押し倒してきた。
眉を顰めるリシュへと覆いかぶさってくるのへ、溜め息一つ。
なんとか露わに出来た素足でマディの体を、誘うように挟み込んだ。
抵抗しているわけではないのだと、そうして行動で示してやる。
「そうだよ。俺が誘ったんだから、お前はいい子にしてなきゃね」
伸ばした手でまた、柔らかなマディの髪をかき乱して。
「マディ。ほら……」
くちづけを強請るよう、目を伏せると、途端に力強く唇を塞がれた。
「んっ、んんっ!」
強引な舌に口を割られ、口内をかき回され、リシュもそれへと積極的に応えていく。
あくまでも暇つぶし。
少しばかり出動から遠ざかっているものだから、くすぶった熱を吐き出す為でもあった。
ならばこそお互いに、欲をぶつけ合うだけでも構わないはず、そこにこんな情熱的なくちづけなど、決して必要でなどないだろうに。
思いながらもリシュはそれをこれまで拒んだことはなく。
否、勿論、先程のように焦らすようにだとか場所だとかタイミングだとかで待つよう命じたことはあるのだけれど。
とにかく応えることそのものには何ら異論など抱いてはいない。だから。
「ぁっ、ぁっ、んんっ、ぁんっ!」
続けて体中を弄られ、敏感な肌のあちこちに触れられても。ただ小さく喘ぐばかりで、いっそ自分からも逞しい雄の体を引き寄せさえしたのだった。
そこまで身長には差がないはずなのに、自分とは比べ物にならない胸板の厚さに、ほんの少しだけ面白くない気持ちを抱きながら。
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