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第1章・泣き止まない我が妃へ(ルナス視点)
3・受理できない嘆願と、泣くばかりの彼について①
しおりを挟む俺は心の底から深く、深く溜め息を吐いた。
「何くたびれた顔してんですか。とっととこの書類に目を通して下さいよ」
べたり、執務机に懐く俺の頭を、束ねた紙束でべしと叩いたのは幼馴染みであり、これでもこの国、シュネリニアの宰相を務めるサンネラニエ、サネラで俺に対する扱いの悪さは、今更なことだった。
俺は恨みがましい目でサネラを見た。
サネラは鬱陶しいと言わんばかりの眼差しをこちらへと寄越している。
俺はしぶしぶ体を起こして、差し出された書類に目を通した。
「ん? なんだこれ。テュナコル元公国領の扱いに対しての嘆願? って、こんなの飲めるわけないじゃないか。敗戦に対する補償の一環として税率が他の5倍だって? こいつはあの場所を潰したいのか?」
ただでさえ戦火で疲弊した領土に鞭打って、いったいどうしたいというのか。これでは名目上だけであっても、リュディを補償の代わりとして召し上げた意味がない。
こちらとしては彼のことは、正しく王妃として迎え入れたかったのをぐっと堪えて、こんなことを言ってくる者たちを抑える為もあって、甚だ不本意な状況での受け入れとなっているというのに。
その上で更に法外な税を課す嘆願とは恐れ入る。
「正しく潰したいんでしょ。なんの恨みがあるんだか。いえ、恨みを買っているのは陛下かもしれませんけどね」
「俺かよ。でもこいつって、親父も頭抱えてたやつだろ。代変わりして与しやすくなったとでも思ってんのかな」
「そう思ってたら、予想以上にあんたが手強くて恨んでんじゃないですか」
「そんなんでいちいち恨まれてたらやってらんないんだけど。却下」
「でしょうね。ひとまずこちらからも整合性が取れていないと付け加えて差し戻しておきます」
「そうしといてくれ」
気安いやり取りの末、手早く否の印をつけ、たった今渡された書類を突き返す。
当たり前の顔をして受け取ったサネラも、溜め息を吐きつつ肩を竦めた。
「で、陛下は何を項垂れてたんです?」
その上で改めて問いかけられ、俺は再度深く溜め息を吐いた。
「いや、リュディが……」
「ああ」
「……泣き止まなくて」
「…………ああ」
口に出したのは溜め息の理由。
先程の書類にもあったテュナコルから迎え入れ、不本意ながら塔へと留め置いている、俺の最愛についてだった。
可愛くてきれいなリュディ。
大事に大事にしたいのに、俺は泣き顔しか見たことがない。
先程のサネラの相槌に、えらく時間がかかっていたのはこれが今更なことだからか。
「……それって、ですが、いつものことでは?」
「そうだけど」
案の定、首を傾げられ、俺はまたしても溜め息を吐いた。
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