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第1章・泣き止まない我が妃へ(ルナス視点)

14・君に捧げる花の色④

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 ちなみにその夜も俺はいつも通り彼に触れた。
 だけどやっぱり彼は泣いたまま。
 あの花が、いったい彼にどう受け止められたのか、それさえ結局、俺にはわからなくて。
 だけど俺は知っている。あの花が塔の中、大切に飾られていることを。
 泣く彼が、だけどもしかしたら、俺を厭っているわけではないのかもしれないことを。
 なにせ俺はその後も、花だけではなく、他にも幾つもの小さなものを、彼へと差し出した。
 その一つ一つを蔑ろにすることなく、彼は全て大切にしてくれているようで。
 それがつまりは彼の心を、示してでもいるかのようで。
 胸がいっぱいになった。
 そうして時はゆっくりと過ぎていく。
 泣き止まない彼と、そんな彼の元を毎晩訪れる俺と。
 彼のことが気に入らない一部の貴族も何も変わらない。
 決定的な何かがないせいで、こちらとしても取れる対策がなく、ただ、出来るのはじりじりと気付かれないように彼らの影響力を削いでいくことだけ。
 特に、王宮で雇い入れている人員にはことさら気を付けて、新しい人材の審査の目は、自然どんどんと厳しくなっていった。
 とは言え、そもそもが王宮で働くこととなるので、もとより非常に難しい基準をクリアする必要があったのだけれども、その基準にいくつかの項目が新たに付け加えられたという程度。主にこれまでの交友関係などの調査に時間を割くようになっている。
 勿論、問題の者たちの影響を受けてない人材を探すために。
 同時に、元から王宮にいる使用人たちの中でも、彼らと通じていそうな者達を少しずつ遠ざけていく。
 それでも彼を塔からは出せないまま。やがて彼は無事に子供を産み落とした。
 男の子だ。
 もう少し大きくなれば王太子として立太子させられることだろう。その頃にはきっと、彼を明確に王妃として遇せるはず。
 幾度となく送った細かい贈り物は塔の中にあふれ、保存魔法をかけた花達もほとんどが飾られたまま減ることはなく。俺はそれを目にする度、リュディに受け入れられているような気持ちになっていた。
 未だに俺は彼の泣き顔以外を目に出来ていないのだけれども、次第にそれでもいいかと思い始めている。
 否、やはり泣き顔ではなくて、例えば笑った顔が見たい、それはいっそ念願とも言えるのだけれども、拒絶されているわけではないのは確かで、だから、きっと俺は油断していたのかもしれない。
 もしかしたら彼は、少しずつでも、俺を受け入れ始めてくれているんじゃないかなんて。そんなことまで思っていた。
 まだ、泣き止んでなんてくれていなかったのに。
 俺は勘違いしていたんだ。
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