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第1章・泣き止まない我が妃へ(ルナス視点)
13・君に捧げる花の色③
しおりを挟む塔へと辿り着き、今朝ぶりに目にした彼は、やはりほとほとと泣いていた。
ああ、また。
涙を流す姿を見ると胸が痛む。
どうして、泣いているのだろう、わからない。
「えっと、あー、その……リュ、ディ。あー、あの、これ、を」
頬を涙で濡らす彼へと、そっと花を差し出した。
彼がパチリ、目を瞬かせる。
それと同時、つと、また一つ、目尻からこぼれた涙が滑らかな頬を伝っていった。
潤む瞳もキレイ。
リュディはまっすぐな髪をきれいに伸ばしていて、長さはおそらくは腰に届くほどではないかと思う。侍女が丁寧に手入れしているのだろう、いつ見ても艶やかに光を放って。淡い水色の色味も相俟って、どんな時でもなんだかひどく涼しげだった。
なんとも言えず儚い印象を受け、いっそ冷たくさえありそうにも思えるのだけれど、実際に触れるとどれほど温かいのかを俺はもう知っている。
そんなことまでもを想像し、どくん、胸の高鳴りと共に下肢へと熱が集まった。
ああ、彼は泣いているのに。
今、俺の目の前にあるのはあくまでも泣き顔なのに。どうしてこんなことを思うのだろう。
キレイで、かわいくて。だから……――触れたい。これは欲で。
なんて醜い。
そこまで思って、途端、手にした一輪のこの花さえ、色褪せていくようだった。
何かを彼に送りたくて。それで選んだものだったのに、どうしてもひどく汚らわしいものにも思えてしまう。
まるでこの花が、俺の欲に染まってでもいるかのようで。
「あー、すまない、これはその、あー……」
どういえばいいのか。すでに花は差し出してしまっている。これを今更引っ込めるのも、きっと印象が良くないことだろう、思うと容易に手を引くことも出来ず、俺は密かに途方に暮れた。
リュディの涙は止まない。でも。
「お花……」
ぽつん。
落ちた小さな声。
涙に触れて、少し震えているけど、可愛らしいそれは、少女のように高くはなく、かと言って大人の男性ほど低くもなく。耳に心地いい高さですとんと俺の耳に忍び込んでくる。
彼は声まで美しいのだ。透き通って、でも実際に耳にするのはいつも涙で震えているのだけれども。
気付けば俺は彼の言葉に後押しされるように頷いていた。
「あ、ああ、そう、花、だ。その、ここは……色味が、少し乏しいから……慰めに、なればと思って」
それで選んだ濃い色の花。目にも鮮やかな青紫。
ゆっくりと彼の手が伸び、俺の差し出した花を受け取った。
そのまま彼の胸元で握り込まれる花を目で追っていると、振ると、彼の肩が震えて。
「お、は……な……ぅっ……ふっ……」
呟き、やはりほろほろと涙を流し始める。
ああ、また、泣かしてしまった。
だけど受け取ってくれた。
この時の彼の涙のわけは、結局俺にはわからないままだった。
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