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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)
9・世界は輝いている⑨
しおりを挟むユセアナの言葉にルナス様はぎょっとするように驚き、
「はぁっ?! あ、いや、でも、あの、その……」
と何事かを言いかけ、だけど更に、
「陛下」
と、重ねて呼びかけるユセアナの声にぴたりと口を閉ざし。
「私共はこれをお渡りだと考えております。対外的にはどうあれ、内情では陛下はリュディ様を妃にと望んで下さったとお伺いいたしておりましたが、それは間違いだったのでしょうか?」
静かに問いかけるユセアナの言葉に、
「いやっ! 間違いではないっ! 書類上はすでに彼を俺の妃としてある。彼はもう、俺の正妃だ」
などとはっきりと言い切って下さって。
僕はますます泣くばかり。
だだだ、だって、妃だって、他でもないルナス様が! 僕はルナス様の妃なんだって!
「ならば何も問題はございません。聞けば後継者問題も憂慮なさっておられるとか。子供をお作りになるのも早ければ早い方がよろしいでしょう。どうぞ陛下ご自身でもって、リュディ様にお情けをくださいますよう。それが何よりの慰めとなりましょう」
などと続けられたユセアナの言葉の意味は、僕には実はよくわからなかったのだけれど、そんなことどうでもいい。
今、自分の至近距離にルナス様がいる。それが全て。
「陛下。これはリュディ様も含めた私共の相違です。ですので、躊躇なさらずに、さぁ」
ユセアナのさらなる促しに、ついにルナス様に抱きこまれた僕は、幸せで幸せで。
結局ただ泣くばかりだった。
ルナス様に抱きしめられている! まるで夢のようだ。
僕が喜んでいるのは、ユセアナには伝わっていた頃だろう。
僕がどんなに幸せだと思っているのかも、きっと。
抱きしめるルナス様の腕が力強くて、温かくて。自分とは全然違うことにびっくりする。
僕はこんな風、誰かに抱きしめられたことなんてこれまでない。
勿論、出立の時に、母様と抱擁し合ったりなどはしたけれど、それはこんなにぎゅっと、力強いものでなどなかった。
僕はただただ涙に濡れながら、
「ぅっ、……ひっく、ぅう……へぃ、か……」
そう、小さな小さな声でルナス様のことを呼んで。それが僕の出来る精一杯で。
それからはまるで嵐のよう。
ちゅっと、ルナス様から降らされたくちづけ。唇同士の触れ合い。初めてこんなにも間近で見たルナス様はやっぱりかっこいい。
どきどきして堪らなくて涙が出た。
ちゅ、ちゅ、ちゅ、と何度も何度もくちづけられ、いつの間にか隣の部屋、寝台の上へと組み伏せられていて、そして……――その後のことを、実は僕はあんまり覚えていない。
ただ、幸せだったのは確かである。
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