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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)

24・塔の外にて⑤

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 だけど、もうすぐ、きっとルナス様のいる部屋に続いているのだろう扉が見えてきた頃にそれに気付いた。
 ルナス様が一人ではないということに。
 誰かが居る。
 気配は微かだ。
 辛うじておそらくは貴族だと思われるけど、ルナス様の魔力に比べると、比べ物にならないぐらいにしか、もう一人の誰かの魔力はなく、それもあっておそらく、サネラ様は気付いていないのだろう、そう思った。
 だけどそもそも、なんとなくルナス様はお一人でいらっしゃるとばかり思っていたけれど、サネラ様がそうおっしゃっていらしたわけではない。
 だからそもそも、もう一人の気配というのもいて当たり前なのかもしれず。
 色々な意味でよくわからない、思う間に気付けばルナス様がいらっしゃるのだろうお部屋の前に着いたようだった。
 サネラ様が一応という感じでノックをして、だけどしっかりと返事を待ってから部屋に入っていく。
 開いた扉の先、そこにいたのはようやくお会いできたルナス様。
 そして案の定、見たこともない誰か。
 とてもキレイな女の人だった。
 応接スペースのような所で、ソファに向かい合って座っている。
 ルナス様がサネラ様の後ろ、隠れるようにして続いた僕を見て目を見開いて驚いている。
 同時にサネラ様もサネラ様で、何故か驚いていらっしゃるようだった。
 僕は何もわからない。
 ただ、頭が痛くて、気持ちが悪くて、地面は揺れていて。視界はいつも通り滲んでいた。
 ああ、ルナス様。
 ルナス様のお姿がよく見えない。だけどこれはいつものこと。
 ただ、驚いていらっしゃる、ということはルナス様は僕がここに来ることをご存じでなかったということで。サネラ様はルナス様にお伝えしないまま、僕を此処に連れてきたのだろうか、そう思った。

「リュ、ディ……? 何故ここに……」

 小さな声で呟くようにルナス様がそうおっしゃる。
 そのお声はどうしてか苦く聞こえて、僕はなんだか悲しくなってしまった。
 ルナス様。
 しゃくり上げる僕は勿論、声なんて上げられない。
 ルナス様、ルナス様、ルナス様。
 6日ぶりのルナス様。
 ようやくお会いできたルナス様。
 ルナス様が恋しくて、もっとお傍にお寄りしたくて。体調が悪いのも相俟あいまって、ぐちゃぐちゃな心で泣くばかりの僕は、その時ルナス様のことしか見えていなかった。
 つまり、先程目にした誰だか知らない女の人のことなんて、全く頭からなくなっていたということだ。
 ようやく僕がその女の人のことを思い出したのは、サネラ様が呆然と小さな声で呟かれたからだった。
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