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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)
25・塔の外にて⑥
しおりを挟む「……なぜ、こちらにいらっしゃるんです?」
サネラ様のお声は、どこか強張っていらっしゃるように感じられた。
そこで僕はようやく、この女の人がここに居るのは、サネラ様にとっても予定外なのだろうことを察する。それぐらいには、なんだか怖い声だった。
僕は柔らかく優しくお話になるか、もしくは申し訳なさそうなサネラ様しか知らなかったので、正直意外に思う。こんなにも怖い声を出される方だったのか、と。
女の人のお名前を呼ばれないのはわざとだろうか。よくわからない。
勿論、僕はそんなサネラ様の影に隠れるようにして泣くばかり。
女の人はこちらを見て、多分、笑ったのだと思う。視界は涙の所為でずっと滲んでいるのでよくわからないけれど。
「あら? 私がこちらに居てはいけませんでしたの?」
華やかな声にサネラ様の気配がますます尖る。
「いいえ、まさか。ですが本日はご予定になかったと記憶致しておりましたので」
慇懃とも取れる言葉は、だけど僕には、予定外にこんなとこまで来ないで欲しかったと言っているように聞こえた。多分、それは女の人にも伝わったことだろう。でも、女の人は強い人らしくて、サネラ様のお言葉に何ら動揺したようには見えなかった。
「まぁ! まるで私に来てほしくなかったみたいね? 聞けば今日は人払いもなさってらっしゃるとか。どのような御用がおありだったのかしら? まさかそこの子供のためだなんておっしゃいませんわよね」
言いながら女の人の視線が僕へと突き刺さってきて、僕はびくりと震えてしまう。
ぶわとますます更に涙があふれた。
なんだか怖い。
「もちろん。この方をお連れしたのはたまたまですし、人払いは陛下と少し内密なお話があったものですから。この方とは関係ございません」
にこと、サネラ様が微笑まれた気配。それを受けて女の人は、多分目を細めたのだと思う。
僕はただ、わけがわからなくて怖かった。
ああ、ルナス様。
6日ぶりにお会いするルナス様がこれほどまでに近くにいるのになんだか遠い。
頭が痛くて気持ちが悪くて。そして怖くて。なんだかよくわからないでいるうちに、どうやら女の人はどこかへ行くらしく、
「それでは陛下。本日はこの辺で。良いお返事をお待ちしておりますわ」
なんて、辞去の挨拶を交わしている。
それに対してルナス様が小さく頷かれたのが分かった。ただ。
「ああ。よくわかった。だがその返事は申し訳ないがお断りすることになるだろう」
と、ルナス様と違って僕にはよくわからないけどはっきりとお断りなさっていらして、途端の女の人の気配が尖ったのがわかった。
怖かった。
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