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第1章
1-45・未明。だから次へ③
しおりを挟むそもそも、俺のこの王宮の現状を伝えてくれたのは侍女たちである。
俺一人ではきっと、そんなにすぐには気付かなかったことだろう。
「ティーシャ様。こういったことを、わたくしたちの立場でお伝えするのはあまり良くないのかもしれませんけど……ここの王宮は、少々問題があるようですわ」
そんな風に、最大限気を使って伝えられたことは、この王宮の人員の仕事ぶりが、あまりによろしくないなどということだった。
曰く、彼ら彼女らは別に不真面目なわけではないのだという。サボっていたりするものなどほとんどおらず、むしろ皆、懸命であるようには見えるとのこと、反面、手際が悪いものが多くどうしても気になってしまうのだとか。
「こういった仕事ですと、それぞれの職場で違う部分があるものですから、一概には言えないのですけど、それでも共通する内容というものはございますわ。それはナウラティスであってもリセデオであっても同じこと。きっとココもそうでしょう。ですけれども……」
もっと細かい、作業のやり方のようなものなのだと彼女は言った。
「見る限り、ですけど、彼ら彼女らは、おそらくそれぞれの仕事に従事する際、充分な引継ぎや教育を受けられなかったのではないかと思われます。技量にばらつきがございますし、統率や統一化などがどうにも足りていないように見えて……」
それは事前に聞いていたこの王宮のこれまでを考えると、納得できる話だった。
ここはルスフォルが連れ戻され王位に就く少し前に、随分と大規模な人員の整理が行われたのだそうだ。
なんでも、そもそもルスフォルが連れ戻されるきっかけとなった両親である当時の国王、王妃夫妻及び、兄である王太子が揃って亡くなった理由が、一部の私欲に走った貴族の謀殺であったとのこと、それを嘆いた今の宰相や騎士団長が忠義の基、不穏と思われる者たちを軒並み一掃してしまったらしい。
それによりただでさえ人員が減っていた所に、本来なら関係のなかったはずの幾人もの者達までもが、恐怖などもあってか王宮を去っていったらしく、明確に人員が不足してしまったとのこと。
その上、新たに補充しようにも補充できる者さえおらず、忙しさに押し流され、教育にまで手が回っていなかったのだとか。
幸いだったというべきかむしろ不幸だったのか、残っていたのは不真面目ではない者ばかり。自分達さえがんばれば、などという思想が蔓延した上、現状を打開する余裕も失っていたようだということだった。
頭が痛くなるとはこのことだろう。
なにせ、俺がそれなりの数の人員を連れてきたため、王妃付きだった者達がそのまま余ることとなり、他の部署に回されたのだが、回された先で少しばかり余裕を持つことが出来たというのだから救えない。
細かい疲弊はともあれ、明確に健康を害している者が出ていないのは奇跡である。
そんなあまりにも目に余る状況の中、ひとまず俺が試みたのは、どう見ても疲弊している彼ら彼女らに休息を促すことだった。むしろそれしかしていないと言っていい。
何故なら、俺は使用人としての技術的なものとなると、全く教わってはいなかったし、立場的にも細かく彼ら彼女らに指示を出すのは好ましくないのではないかと考えたからだ。
侍女たち曰く、これに関しては考え過ぎだとのことだったが。
王妃という立場であれば、そういった方面にも口を出せるのが一般的なのだとか。
だが、俺だってこれまで受けてきたのは教育のみ。政務や公務などに携わるのは初めてである。加減も何もかもわからない。そんな状態で手や口を出せることなど限られた。
だから、そういった人員の、特に技術不足に関しては、侍女や侍従などに任せることとした。
同じ職場となったのだ、仕事のやり方を教え合うなどということぐらいならして見せる、と力強く請け負ってくれたので。
人員の増員などについては、この王宮特有のこれまでの慣習などもある。すぐにはどうにもできないだろうから、徐々に試みていくこととする。
正直な話、俺はそんなことよりも優先したいことがあったので、出来ることを厭うつもりはないけれど、それにばかりなど構ってはいられなかったのだ。
ちなみに幾度かルスフォルに休憩を促したのも、見兼ねて声をかけたに過ぎない。
ルスフォルとはどうせ夜に会うこととなるので、それ以上の過分な接触など、必要とは考えなかった為だった。
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