結婚10年目で今更旦那に惚れたので国出したら何故か他国の王太子に求婚された件。~星の夢2~

愛早さくら

文字の大きさ
32 / 206
2・旅程と提案

2-15・国境での化かし合い

しおりを挟む

 合流して後、最後の集落で1泊し、早朝から数時間、然程、険しくはないものの山道を進むと、ファルエスタとの国境にある検問所にたどり着いた。
 見ると向こう側では見える位置で、ファルエスタ側の出迎えが待機してくれている。
 顔ぶれを見ると、先方の宰相と騎士団長が一行の中に含まれていた。
 到着すると同時ぐらいに、検問所の中から入国の際にも顔を合わせたジアレフ司教が歩み出てくる。
 彼と別れた時に目の前で変えて見せた時の姿に戻していた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・馬車を見て、残念そうな顔を見せる。

よかった・・・・、無事だったんですね……」

 とてもよかったなどとは思ってもいなさそうな声で小さく呟いた。
 ティアリィはそれに目を細め、ちらとファルエスタ側の出迎えを見る。
 彼らは何も知らぬ顔をして其処に立っていた。
 確かに、考えてみればすぐにわかることだった。ティアリィ達の変化させた後の馬車の姿など、知っているのは彼ぐらいのものだったのだから。だが、ファルエスタの目もある今この場で、これ以上何かできるとは思えない。もっとも何かあったとしても切り抜ける自信はあるのだが。
 顔に出ている辺り、大した存在とも思えない。
 まぁいいかとそれはさておき、にこやかに司教へと近づいた。

「お久しぶりですね、ジアレフ司教。おかげさまで、無事此処まで来ることが出来ました。忠告してくれて助かりました」

 何も知らない顔をしてそう告げた。
 司教は一瞬びくりと体を揺らして、次にゆるゆるとようやく口元を笑みの形に引き上げる。

「お役に、立てたようでしたら……よかったです」

 握手などは交わさない。それが出来る位置まで、彼は近づいては来なかった。思えば入国の際にも、そこまでは近づいてこなかったなと思い出す。つまり、はじめから・・・・・かと。

「色々とお世話になりました。では、これで」

 短い言葉を交わして、早々に先へ急ごうと歩み始めたティアリィの背を、しかし司教が呼び止めた。

「あの、」
「何か?」

 振り返る。目の前で司教は少しためらって、ややあって小さく口を開いた。

「少し、遅れはするのですが、我が国、聖王のご息女も、ファルエスタに留学する予定なのです。同じ立場・・・・の者同士、どうぞ気にかけて頂ければと」

 それを聞いて、ティアリィはなるほどと目を細めた。だがすぐに小さく微笑んで。

「そうだったのですか。それは存じませんでした。充分に気にかけさせて頂きます」

 如才なく言葉を返すと、司教はほっと、小さく安堵の息を吐いたようだった。

「くれぐれも宜しくお願い致します」

 深々と頭を下げる司教を背に、ティアリィ達は国境を抜けた。
 待ってくれていたファルエスタの出迎えの一団と合流する。

「ご無事で何よりです。お聞きしていたよりも人が増えた・・・・・のですね」
「ええ、折よく・・・こちらの商会の方たちとご一緒することが叶いまして」

 にこやかに一歩先に進み出てきたのは宰相だった。だが、彼は途中でぴたりと足を止めた。まるでそこから先へは進めないとでもいうように。手を伸ばしても届かない位置。ちょうどティアリィ自身が自分へと張っている防御魔法の境目ともなる位置だ。防御魔法の効果は、国にかけている守護結界と同じ意味を持つ者だった。
 なるほどとちら、それに目を止め、意図して範囲を少し狭める。其処でようやくもう一歩を進めることが出来た宰相から意識を逸らさないまま周囲を見回すと、一緒に来ていたらしい騎士団長は、検問を抜けるため一度、馬車から降りていたピオラが、再び馬車に残りこむのに、紳士らしく手を貸していた。勿論、手袋越しとは言え直接に触れて。ピオラにも同じ防御魔法をティアリィはかけていた。
 どうやらあちらは問題ないらしい。
 ならば当面気を付けるべきは、ひとまず目の前の彼だけのはず。
 この宰相の名前は何と言ったのだったか。そうだ、確か、コルナルダ。
 結界に抵触しているらしいことには気づいていながらも気付かないふりをして、ティアリィはにこやかに笑いかけた。

「出迎え、助かりました。の国では少々、いろいろとありましたので……この先はずっとご一緒に?」
「ええ、そのつもりです」
「でしたら、後で打ち合わせを」
「この先に村がありますので、宜しければ其処で。ひとまずは先を急ぎましょう」

 予定はそこまで押してはいないけれど、少しばかり遅れているのは事実だった。
 なんとかそんな事務連絡を交わしていて不自然じゃない程度にまで狭めた防御魔法の向こう側でコルナルダ宰相は当たり前の顔をしてティアリィと言葉を交わしている。
 先程の司教よりよほど狸だなというのが、この宰相を目の前にしたティアリィの感想だった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。 フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。 ●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。 性表現は一切出てきません。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。 するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。 初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。 しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。 でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。 執着系α×天然Ω 年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。 Rシーンは※付けます ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

処理中です...