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3・偽りの学園生活
3-14・変わらない心情
しおりを挟む確かに、自分にも悪い所はあった。それぐらいティアリィだって自覚している。
いくらいろいろな事情が重なったからとはいえ、ミスティに知らせず国を出るなど、皇后という立場にいる人間として、どう考えても相応しくない行動だった。
仕事なら問題なく回っていたとか、国政などにも大きな影響がなかっただとか、実際にはほとんど毎日帰っては来ていただなんてことは言い訳にもならない。
わかっている。わかってはいるのだが、同時に、ミスティの怒りのポイントは、きっとそこじゃないんだろうなぁということも、ティアリィはよくわかっていた。
何せ今あげたような理由だけなら、感覚的にほとんど変わらないミスティが、問題とはしないだろうことも間違えようもない事実で、だから、皇后なんて立場なのに出国した、ことをミスティは怒っているわけではないのだ。
ならば何か。簡単な話だ。
ミスティにだけ、黙っていたから。
単純にミスティの個人的な感情として、自分にだけ知らせず行動された、というそれ自体がショックで、だから機嫌を損ねているのだろうと予測できた。
ティアリィにはそれが間違っていないだろう自信がある。
伊達に5歳から一緒に育ってきてはいないのだから。
かつ、伴侶となってももう十年だ。
ただ、そんな行動に出ざるを得なかったティアリィの心情は、だいたい一月ほど経っているのだが、その期間では到底足りなかったらしく、国を出た時からあまり変わっておらず、やはりどうしてもミスティにはわだかまりが残ったまま。
自分の悪い部分もわかっていたし、逃げられない、ことを理解していてなお、釈然としない気持ちが拭いきれなかった。
「ティーア」
ミスティは、凍り付いたような怖い雰囲気を纏ってにっこりと笑ったまま。だけど決して何も強要はしなかった。
ただ、名前を呼んでティアリィ自身の行動を促しただけだ。
ティアリィは眉根を寄せ、不機嫌な顔を隠しもせず、しかし逆らわずにミスティについていく。
そんなティアリィにミスティは笑みを深め、先に立って歩みを進めた。
向かう先は王宮内。
そもそもポータル自体が王宮の敷地内、城門近くに設置されていて、王宮内に入るにしても、それほどの距離はない。
精々が歩こうと思えば歩ける程度。
だからこそミスティも今、歩いてそちらへ向かっていて。
否、あえて馬車などを使わないのは、ティアリィに少しでも落ち着く時間を与えようというミスティなりの思いやりだろうか。……――むしろそれにより、追い詰めようとしていると考えた方がらしい気がする。何分ミスティなので。
ティアリィの眉根はますます不機嫌に寄せられた。
ミスティがちらと振り返って気付き、今度は少しだけ苦く笑う。
「いい加減に落ち着いてくれたかなって思ってたんだけど……その様子なら、まだみたいだね」
加えて、今のティアリィの状態をある程度正確に言い当ててきた。
ティアリィは応えず視線を逸らせる。
ミスティの言うように、落ち着いてなど全然いなかったからだった。
頷きたくはなく、かといって否定してしまうと嘘になる。返す答えがないというのが、今のティアリィの心情としては正しい。でも。
「でも、ごめんね。僕はもう限界なんだよ」
ミスティが前に向き直って告げたことは、ティアリィにもわかっていたことだった。
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