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しおりを挟む夏祭りの外で遊びに出かける日は、その次の土曜日に決まった。
翌日の休みの最終日となる日曜は昼過ぎからバイトで、他の日は予定が合わなかったからだ。
どこに行くか、だとか何をするかだとかはまだ決めてはおらず、おいおい連絡を取り合う予定だった。
それはともかくとして、先に夏祭りである。
家族に、今年は友人と行く予定だと告げると、母がいそいそと取り出してきたのは一着の浴衣。
見覚えのないそれは、新しく仕立てられたものなのだろう、青みの強い紺地で、俺は思わず眉根を寄せた。
「母さん、それ、」
「いいでしょ? あなた用よ。高校に上がったんですもの。そもそも、貴方、今年一年で身長伸びてるじゃない。去年までのは流石に小さいし。そっちを直してもよかったんだけど、せっかくだから。着せれる機会が出来てよかったわぁ」
聞けば兄と妹にもそれぞれ別で、新しく仕立てたのだと言う。
二つ下の妹は兄と、川辺の花火大会の方へ行くらしい。
ちなみに俺は三人兄弟で、俺は真ん中。兄とは四つ離れていた。つまり兄と妹は六歳差で、兄は妹を猫かわいがりしている。
今までも夏祭りに浴衣を着ていくことは幾度もあって、母ならば仕立てるだろうことも予想出来てはいた。けれど。
「今年行くの、男友達となんだけど……」
浴衣で行くのは、流石に気合が入り過ぎなのではと思ってしまう。彼女とのデートだとかならともかく。
思わず緩くこぼす俺に、母はくるっと目を瞬かせて、
「何言ってるの。そんなの気にし過ぎよぉ、それに一緒に行くお友達って、館城くんなんでしょ? いつも送ってくれる子。あの子だったら喜びこそすれ、引いたりなんかもしないわよ」
と軽やかに笑い飛ばした。
度々、どころかほぼ毎回、バイト帰りなどに迎えに来る和凪は、当然のように母とも顔見知りだった。
必然、兄も妹も、何なら父も和凪の顔は知っていて、
「お前、あれほんとにただの友達かぁ?」
なんて片眉を上げたのは兄。
「いいじゃない、イケメンだし。お兄ちゃんたちとはまたちょっとタイプが違うよね。目の保養だわ」
なんて、何処かウキウキしながら弾んだ声を上げたのは妹だ。
母も、
「そうねぇ、礼儀正しいし、いい子よね」
と高評価で、おそらくはそれもあっての、この浴衣なのだろう。
俺はそれ以上ごねても仕方がないかと溜め息一つで、結局、夏祭りは真新しい浴衣を着ていくことにする。
なんとなく面映ゆく思うのは、きっと初めて男友達と向かう夏祭りだから、勝手が違う所為なのだろう。
想像すると、何とも言えない気持ちにならざるを得なかった。
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