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第2章
2-9・地下牢②
しおりを挟む文官は地下牢に赴いた。
その場所は国王たるペクディオにも秘されている場所で、言うならば城の最下層。
ペクディオ自身、場内に地下牢などがあることは知っていても、実際にそのような場所に赴いたことなどなく、何処にあるのかさえ把握していないような場所だった。
王族としては特におかしなことではない。
代々の国王を紐解いても、城の隅々までもを把握している者の方が少ないくらいなのである。
特にペクディオの興味はリティアにしか向かっておらず、他などすでに意識の外なのではないかと思われた。
だからこそペクディオはそんな場所のことを知らず、リティアが自分の過ごす城のすぐ下、地下牢に捕らわれていることになど気付かないまま。見当違いの場所ばかり探し続けている。
また、地下牢には逃亡防止用にいくつかの結界が張られていて、気配やそういったものまで外からだとわからなくなっており、余計にペクディオがリティアに気付く可能性を低めるのに役立っていて。
そうでなくば、魔力を使うことにもそれを使用した探査能力にも秀でたペクディオが、これほどまで近くにいてリティアに気付かないはずがなかった。
何カ所かに設置されている、衛兵の守る結界を手順通りに進んで地下牢まで足を運ぶ。
文官自身、この道を通るのは初めてだった。
それも当たり前と言えただろう。
何せここは本来、犯罪者などを捕らえる為の場所。特に、城に侵入した賊などの自白を促すために使用されるような場所である。
ここを訪れるのは、衛兵や一部の騎士など、治安を守るための役職についているような者がほとんどで、文官などが足を運ぶような場所ではなかった。
薄暗く、じめじめしていて、決して衛生的と言えず、壁や床には取れない染みが、そこかしこにこびり付いている。それらがいったいここでどんなことが行われてきたのかを物語っているかのようで、文官は足を進めるにつれ、どんどんと険しい顔へとなっていった。
おまけに重ねられた結界の所為でか、ひどく息苦しいのである。
こんな所に長居などしたくない。
その為には何としても、件の魔女の口を割らせなければ。
決意も新たに歩みを止めない文官は、つまりは心の底から、リティアを魔女であると信じているのである。
それを止める者などやはり誰もおらず。護衛も兼ねて付き従う衛兵たちの誰もが皆、文官と同じ気持ちで。
ようやくたどり着いた最奥、地下牢の中では、一人の少女がぼんやりと、こちらへと視線を投げかけてきたのだった。
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