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第2章
2-10・地下牢③
しおりを挟むどうして。
リティアにはわからなかった。
ここに閉じ込められていったい何日経ったことだろうか。それさえも。
この地下牢のような場所は、どうも何らかの結界が張られているようで、息をするだけでもなんだか少し息苦しかった。
おまけに差し入れられるのがほんの僅かの食事と水のみ、当然、身だしなみを整える為の何かなどあるはずもなく、水場さえ部屋の中にはない。
不潔であることを良しとは出来ないリティアには少しばかり辛い環境と言えた。
「仕方がないのかしら」
呟いて指先に魔力を纏わせる。幸い、水は差し入れられているのでコップのようなものはあった。
そこに、普段は全く行使しないせいで、慣れないばかりの魔術を試みると、幸いにして上手く出来たようで、瞬く間にコップには透き通った水がなみなみとあふれ出した。
「あら?」
どうやらむしろ過剰に出し過ぎてしまったらしい。
地下牢には相応しくない、瑞々しい水の気配が辺りに満ちている。
当然、差し入れられる水だけでは足りず、喉は渇きを覚えていたので、自分で出現させた水に唇を寄せた。
澄んだ水は、差し入れられているそれよりずっとおいしく感じられて、これならとリティアは一人頷いた。
まずは精霊と交信しようとしてみる。
だが、この近くにはいないのか、それとも張られているらしい結界の所為か、彼らの気配ひどく遠く、弱く、連絡を取るのは容易ではないようだと判断せざるを得なかった。
次いで乱れた身だしなみが気になったので、やはりあまり行使したことのない洗浄魔法で体や衣服、髪の毛の汚れを失くしてみた。
先程一度魔術を使用したことによって、少しは慣れてきたのかもしれない。今度は失敗することなく、思った通りの結果が得られて、なんとかなりそうだとリティアは思った。
そして、自身の腹部に注目して。
「ごめんなさいね、少しだけ我慢していて」
声をかけそっと、その部分の時間を止めた。
だってここにはペクディオがいないのだ。
そうするより外にない。
そうでもしなければきっと、リティアは早晩、魔力欠乏により動けなくなってしまうだろうと思われた。
それは避けた方がいいことぐらい、今のリティアにだってわかったので。
リティアは深く溜め息を吐いた。
いつまでここにいればいいのかもわからず、ここがどこなのかもわからず、リティア一人でこの状況をなんとか出来るとも思えず。だけど、生きなければとそう思う。
こんな場所で朽ちるわけにはいかないのだ。だってリティアのことを。
「陛下」
愛しいペクディオが、求めてくれているのだから。
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