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8 出会い

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 ー13年前ー
 「あら!あなたの髪、まっしろでお空の雲みたいね!」

そう言いながら少年の髪を触る少女

シルバーブロンドにオリーブ色の瞳の可愛らしい笑顔を向けるその子に、一瞬で心を奪われた少年

 「くもなんていわれたの、はじめてです…」
 
 「そうなの?こんなにキレイな白なのに!」

 「ゆきのようだと、いわれてます」

 「雪?見たことないわ!」

 「おやイヴィ、雪を知らないのかい?」

少女の横から現れた茶髪の少年が雪について語り出す

 「真っ白で冷たくて、何もかも飲み込んでしまうものさ

人の命を奪うこともある恐ろしいものだよ」

 「…」

 「まぁヨハネス、物知りなのね」

まあね!と鼻を伸ばす少年

 「でも、この子の髪の毛を見て?
まっしろでふわふわで、

陽の光にあたってキラキラしてるのよ!

雪みたいって言われてるなら…
きっとこの子みたいにふわふわで柔らかくて、

キレイでロマンチックなものなはずよ」

うっとりと白髪の少年を見つめ、頭を撫で続ける少女


 「ありがとう…ございます」

 「いーえ!そうだ、いいこと教えてあげる!」

ずいっと耳元に近づく少女
突然の事に驚き、顔を赤らめる少年

 「わたしね、あの男の子と将来結婚するの、婚約者ってやつ!ステキでしょう?

あなたも、愛する人と出会ったらわたし達みたいに

愛し愛される2人になるのよ?あなたなら出来るわ!

とってもロマンチックな容姿だもの!」

ばいばーい!と手を振り、少年に手を引かれ走り去る勢いのある嵐のような少女だった…



彼女の声を閉じ込めるように耳を押える少年



この時から、彼の心にはずっとあの少女が居続けた




 














懐かしい夢を見た



幼い頃、城で出会った白髪の少年

覚えたての“ロマンチック”という言葉を使いまくっていたあの頃

意味こそよく分かっていなかったが、

その言葉はあの子にピッタリだった



あの、雪のような白い髪…


あの時来ていたのは、アルステッド帝国の使節団

そこに同伴していたのは当時の皇帝とその息子



もしかして…

 「おはようございます、イヴ」

 「っ!ウィル…起きていたのね」


肌と肌が密着し合う

抱きしめられたイヴリンは彼の腕の中で尋ねる


 「ウィル…貴方もしかして、幼い頃デイビス帝国に使節団と一緒に来ていた?」

 「…はい」

 「やっぱり…じゃあ、あの時会った男の子は」

柔らかく微笑むウィリアム
初めて見る彼の笑顔に、思わず見惚れてしまった

 「やっと、思い出してくれましたか」

 「え」

 「僕は、初めて会ったあの日から
貴女のことだけを想い続けていました。

婚約者がいると知っていましたし、僕にも婚約者がいました。

でも、抗えなかった。心の中には貴女が居続けるのです…

僕の髪を優しく撫で、明るい日差しのような笑顔を向ける愛らしい貴女が」




彼は、ずっと私を想い続けていた

私がヨハネスに熱を上げている間もずっと…




数ヶ月前、

イヴリンの婚約が解消された話を聞きつけた彼は、

迷うことなく彼女に縁談を持ちかけた


婚約者の公爵令嬢には側室でもいいからそばに居たいと縋られたが、

たった1人の愛しい人を、
愛し愛される存在となれるよう

自分の身勝手さに申し訳なく、心苦しく思いつつも断ったのだ。



 「…ヨハネスが屑野郎でよかった」

 「え?」

 「じゃなきゃ、貴方と結婚できなかったんだもの」

 「そこだけは、感謝しないとですね」

 「貴方は、不貞なんてしちゃダメよ?」

 「絶対有り得ません。
貴女だけを愛していたのですよ、10年以上もずっと」

 「あら、一途ね」

 「当たり前です。それに、そんな事しようものなら貴女から鉄拳が飛ぶでしょう?」

 「!知っていたのですね…」

 「貴女のことなら全て知っています。
…身体も隅々まで」

 「まあ!私だってウィルの事知ってるわよ!」

布団にくるまりながら笑い合う2人

薪の鳴り響く部屋

外では空気中に舞う雪の結晶が陽の光に反射し
ダイヤモンドダストが美しく輝く





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