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9 side.グレイス
しおりを挟む「因果応報、ね」
天井を仰ぎながらグレイスは呟いた
いつか学んだ異国の言葉…今の自分にぴったりだと鼻で笑う
大好きな双子の姉の婚約者が初恋の人だと知った日から全てが崩れ始めた
いや、きっと彼に恋心を抱いた瞬間からだろう
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
アカデミーでの彼は誰よりも注目を集める存在だった
皇太子の従兄弟にあたるリアム子公爵
女生徒の間では皇太子様派と子公爵様派と別れるほどの人気ぶり
そんな彼に心を奪われたのは、偶然皇太子様と会話をしている場面に出くわしてしまった日だった
「…エウレディア侯爵家か?」
「あぁ」
自分の家の名前が教室から聞こえてきてしまい思わず廊下で立ち止まったグレイス
「あの双子令嬢のどっちだ?まぁどっちも同じ顔と噂だが…どちらでも同じことか」
皇太子様の言葉に思わず眉根を寄せてしまう
双子だからって…
「同じではないと思うぞ」
「っ」
皇太子様とは違うその人の声に弾かれたように顔を上げるグレイス
「グレイス嬢はアカデミーでもなかなか優秀だと評判だし、武術にも長けていると聞く。フローリア嬢は外出こそ少ないが引けを取らないほど聡明で…儚く優しく美しい方だそうだ」
そう…姉はとても素敵な人なの…みんなが知らないだけ
「じゃあそのフローリア?嬢でいいじゃないか」
またこの御方は…どれだけ姉と私を侮辱する言い方をすれば気が済むのかしら
「何故そんな言い方を…お2人とも素晴らしい女性だ。僕は、それぞれを見てみたいんだ」
それぞれ
私達を「フローリア・エウレディア」と「グレイス・エウレディア」として見たいと仰った
そんな些細な、他の人にはなんて事ない言葉がグレイスにはたまらなく嬉しかった
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「人って…簡単に恋に落ちるくせに諦めるのは…どうしてこんなに難しいのかしら」
ぽつぽつと呟くグレイス
自分の姿、自分の声で自分の心配をされた摩訶不思議な一時から
どれくらい時間が経っただろうか
『グレイス…!』
「…やめて……」
『グレイス、お茶でもどう?』
「……やめて、呼ばないで…」
『グレイス』
「っやめてよ………お姉ちゃん………」
本当は分かっていた
姉が、自分の婚約を破棄させて妹の私に結ばせようとしていた事も
姉が、病で苦しみ外にも出られない日々を過ごす中で、私との時間をどれほど楽しみにしていたのかも
それなのに…私はとんだ捻くれ者だ
どうして姉のように素直になれなかったのだろう
姉の優しさを素直に受け取っていればこんな暴走もしなかったのに
「……ごめん、お姉ちゃん」
空気に触れるだけでも痛みに顔が歪むほど重たい身体をゆっくりと動かし、
便箋と白紙の紙を手に取る
震える手で、呼吸で…2通の手紙をしたためる
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