Angel☆Doll

隣の大橋さん

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昔昔の☆そんなお話(前編)

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程無くして騒ぎを聞き付けて警察がやってきた。なんか面倒でまずいような気もしたけど、下手に逃げて誤解を受けるのも嫌だなと思ってたら父さんが電話をかけて警察の知り合いという人と何か話たら、
俺たちはとくに警察から追及もされず、ひとまず俺たちは保護され病院に送られた。

優那には父さんが着ていた上着を着せて俺は脱ぎ捨てられた自分の制服であろう残骸を着たのだけど、なんでこんなにボタンがはじけとんだりしてるのだろうか?

そもそも、なんで俺、裸で優那にまたがってたんだ?しかも優那の服、ビリビリに裂けてしかも泣いてたし……


待った。

これ、違う意味で俺は警察沙汰になってしまうのでは……

いやいや俺、全く分かんないし

というか分からないことが立て続けに起きたうえに途中で記憶がプッツリないし、気づいたら……跨がっていて……うあああ!もうほんっと訳わかんねー!

俺は検査が終わるなり頭を抱えて病院の端に座り込んだ。


『学、大丈夫?』

俺はギクっとして思わずザッと後退した。検査を終えた優那が心配して俺を覗きこんで声をかけてくれたんだ。

きれいに血とか拭き取って、体は浄められ薄い水色の病衣に身を包んでる優那。

しかし、朝の全裸事件といい、さっきの裸で馬乗り事件といいこんなときにあれだけどぶっちゃけ気まずい、まともに顔なんか見れなくて不自然に思い切り避けてしまった。さすがにこれは咄嗟とはいえまずい。


『い、いや、いやいや俺は大丈夫、うん。大丈夫。む、むしろ優那さんの方が……肩……』

平然つくろってチラチラ優那の顔色をうかがいながら話すけどドギマギしすぎて益々不自然だ。でも優那はニッコリ微笑んで『僕は平気だよ』っと答えてくれた。


『優那くん、学!』

すると父さんの声がして声のする方向を振り向くと心配そうな表情の父さんと父さんと年端変わらない刑事さんがそこに立っていた。

年端は変わらないけどその刑事は眉間に深くシワが寄っていて訝しい、どこか気難しいそうな顔をした人で黒い髪の五厘刈りの坊主頭。
グレーのスーツをビシッと決めてガタイも良く、スーツの上からだけど逆三角形の筋肉質というのがよくわかった。

『龍児、この2人が12年前に研究室から助けたという成功作2体か。』

その刑事さんは父さんにそう話、眉間にシワを寄せながら俺達を一人一人見た。睨んでるわけではないのだろうけど元が険しく厳しい頑固そうな人だったのでまるで睨まれたような錯覚になる。

『ああ。なあ昌之(まさゆき)、頼む、電話で話した通り刑事になったお前の力で何とかこの二人を人間として保護してもらえないだろうか?』

父さんがその坊主の人を昌之(まさゆき)と呼び話した。昌之と言う人は深いため息をついて答える。

『無理だ。俺ではこうして厄介なものをくぐりぬけて連れ出すことで精一杯だ。それに国が総出で揉み消そうとした研究だぞ、全て消去、破棄したはずの全ての研究体が生きてると分かれば失敗作に限らず、そこの成功作2人も国が消しに来るかもしれない、もしくは研究機関に連行だ。龍児、だからは俺は研究の真実を知ったとき俺とともにすぐに研究から手をひいて日本に帰国すべきだったんだ秀一しかりな』


一体なんの話をしているんだろう?研究とか国とか、それに失敗とか成功とか、なんかさっきも同じことを聞いたかもしれない……それにあんなに切羽つまってる父さんを見るのははじめてだ。

『それに龍児、俺はあくまで警察だ。万が一そこの2人を国のお偉いさんからしょっぴけと言われれば、俺は国の犬、連行しなくてはならない立場だ。お前達も、自分の事はよく理解してるだろう?冷たいようだがどうか悪く思わないでくれ。』

昌之さんは優那と俺にそういった。俺は思わず『えっと……ごめんなさい、よくわからないんです…』と言ってしまうと昌之さんがギロリと俺を見て『よくわからない?』と聞き返してきて俺はビクッとしてしまう。


『あ、あの……その……すいません……でも本当によくわからないんです、何て言うか1度に理解出来ない事が一変にきたというか……俺自身見たものがどこまで本当の出来事でどこまでが夢なのかも分からなくて……途中ぷっつり抜けてる部分もあるし……それであげくのはてにいきなり連行って言われても困るっていうか……すいません、あの……偉そうに言ってしまって……』

俺はオドオドしながらも思っていた本当の事を話した。




『龍児……』

昌之さんのギロリとした視線は父さんに困ったように向いた。父さんも半ば困惑して黙って俯いた。

『ねえ、父さん……父さんも何か知ってるの?』

父さんは黙ったまま、そして昌之さんは深いため息をついた。

『龍児、本当に人間として育てるつもりだったのか?』

昌之さんがいった。

『人間として育てるつもりとかじゃない、この子達は人間なんだよ昌之……』

すると父さんはゆっくり顔をあげて俺を見るといつもの優しげな微笑みを見せてから昌之さんにそういった。


『だが龍児、事は起きてしまったんだ。もう隠しきれない。』

昌之さんがそういうと父さんは少し考えたあとにゆっくり俺の元に歩いてきて俺を見上げ、手をのばして頭を撫でてくれた。


『学、今まで黙っていてそして困惑させてすまない。今からお前に隠してきたこと、全てを話すがどうか、落ち込まずに聞いてほしい。どんな形でもお前は俺の大事な息子で家族だ。変わらない俺のかけがえのない心優しく育ってくれた宝物だよ。』


そう話す父さんの眼鏡の奥に見え隠れする瞳が優しいけど悲しげで、きっと今から話される事はあまりよくない話なんだろうなと察しがつく。

『ここでは話すな龍児、他の患者も通る。一階の応接間を使え』

昌之さんにそういわれて俺と父さん、そして優那と昌之さん四人で一階にある一角の応接間に向かうのであった。


応接間といわれる部屋に入ればソファーが2つ足の低いガラスのテーブルに向かい合わせに並べられて窓にはブラインドが半開きになってかけてある。
俺と優那、父さんと昌之さんというコンビでソファーにすわって向かい合わせになった。妙な緊張感が走る。

するとそんな静寂を父さんが最初に破った。


『まず話をするには俺がまだ生物、遺伝子の研究員だったときの話をしなければならない。』



父さんは昔の話をしはじめるのだった。




舞台は12年前に遡る。






『やっと着きましたねアメリカはロサンゼルス!なんかドキドキしてしまいますね、龍児さん!ここから龍児さんの新しい研究がはじまるとなると私も身が引き締まります!』

このソバカスのメガネの茶髪がまだ短くて今のポニーテールにできないセミロングヘアーの青年はまだ20代前半の若き七緒透だ。

成田から飛行機で約10時間かけてやってきたアメリカ合衆国、降り立ったのはロサンゼルス。


空港の外に出るとその日は清々しいばかりの真っ青な晴天だった。

七緒は海外旅行用の大きなキャリーを引き、大きなリュックを背負い
銀の縁の丸いメガネの奥のおっとりとしたタレ目はキラキラさせてはじめて降り立つアメリカの土地に胸を弾ませ龍児に話すが返事がない。
不思議に思った七緒が振り返ると龍児はカメラを手にパシャパシャと出てきたロサンゼルス空港を撮っていたりお土産を物色していたり、服装も黄色にピンクのハイビスカスがプリントされたアロハシャツにモスグリーンのハーフパンツ、麦わら帽子にサングラスをかけてまるでハワイ旅行に来たような格好であからさまにうかれていた。

七緒はスタスタと龍児の元に赴きポカっと龍児の頭を軽くポカっと叩いて引き摺るように今回は、他の日本から選ばれた研究員たちと現地スタッフとの待ち合わせ場所の空港の外にある時計台に連れていくのだった。

『いいですか龍児さん、あなたは数いる研究員の中から選ばれた日本代表のそのうちの1人の研究員なんですよ!アメリカに観光しに来たんじゃ無いんですからねっ』

七緒はプンプンと頬を膨らませてそう言うと龍児は

『いいじゃないか、せっかくのロサンゼルスなんだから少しくらいはしゃいでも~』

と、まるで子供のように答えるのであった。

『今から研究員の皆さんに会うんですよ!気を引き締めないと……って、ほら!皆さん来てますよ!急いで龍児さん!』


 七緒は待ち合わせの時計の下を見るとすでに待っている数人の日本人たちを見つけるなり小走りにそこに向かった。

待ち合わせの時計の下には同じ20代~30代の若き研究員の青年が2人待っていた。
1人はガタイのいいスーツ姿でまだ頭には黒いふさふさの毛があったボブカット頃の若き頃の昌之ともう1人は何年も着まわし続けたよれた地味な茶色のセーターに深緑のジーンズとクシャクシャな茶髪、ひょろりと細く不健康そうな青年。猫背で目の下にはクマが出来ている地味な青年。

『すいません!遅くなってしまって……私は七緒透、桜木龍児博士の助手をつとめています。あちらのアロハシャツの人が桜木博士でして……』

『どうぞよろしくお願いします』

龍児はサングラスをメガネ戻し、七緒に紹介されれば帽子を外して頭を下げて挨拶をした。

『俺は真壁昌之(まかべまさゆき)だ。ずいぶん派手な格好だな』

昌之はギロリと龍児を見下ろした。この当時から鋭い視線と険しい眉間のシワは変わらないようだ。七緒は気まずそうに『あはは…』と苦笑いするが龍児は空気を読まず『そうスッかー?持ってる私服で地味なの選んできたんですけどね』というものだから後ろから七緒が思い切りドスッと龍児のわき腹を殴った。龍児は『ぐおっ』呻く。


『すいませんねー!本当に、桜木博士緊張シーなところがあるんですっ派手な服着て気分でもあげとかないとテンション駄々下がりになっちゃうからーもう本当に、オホホホホホ……』

七緒ははぐらかすように先に着いていた2人にそう言うのであった。


『はじめまして、僕は戸部秀一(とべしゅういち)といいます。そういう服着こなしちゃうなんて凄いですね……憧れちゃうな……』

そしてこのどこか冴えない地味な青年こそ後に優那の養父となる戸部秀一、その人だった。


『俺、たくさんこういう服あるんで着てみます?』

龍児が秀一にニコニコと悪気もなくそういうと秀一は困ったように

『あ……いや、僕そういうのはちょっと……』

引き気味で断ったのであった。

真壁昌之、戸部秀一、桜木龍児、七緒透。
なぜこの四人がアメリカにやって来たのか、それは1か月前に彼らに届いた手紙からはじまる。

手紙の内容はアメリカの研究チームが国をあげて挑んでる新生命体遺伝子操作プロジェクトに日本からも有能な遺伝子研究の一任者たちに力を貸してほしいとのことだった。

その手紙が龍児に届いた時の龍児と七緒は手紙を読むなりお互いに歓喜の声をあげて飛びはねて抱き合った。何せ報酬額は100万ドル。日本円に換算すると1億4000万円、それに数ある日本の遺伝子研究者の中から日本の代表に選ばれたのだ。名誉なことこの上ない、このプロジェクトに携わること誇りに思えた。

おそらくそれは龍児だけではない、そこにいる当時の昌之や秀一も手紙を受けとった時は同じ気持ちだったに違いないだろう。

『桜木博士、僕貴方の発表した論文読みました!同い年とは思えないほどの素晴らしい論文で……そんな凄い人とこれからチーム組めるなんて……』

『え、同い年?!』

失礼な話だが、秀一はやや老けていたので歳上かと思っていた。

『俺もアメリカに来る前に読ませていただいた。とても説得力のある内容で確かに同年とは思えない立派なものだった。』

『え、あなたも?』

昌之がそういえばこれもまた失礼な話なのだが昌之は眉間にシワがあるしガタイもあるしどっちかと言えば老けて見えて歳上だと思っていた。
パートナーの七緒に関しては真逆に若い娘のようでそれはそれで同い年には見えないし

なんだか自分が一番年齢相応な外見じゃないかな?と龍児はその時思うのだった。


『最近博士号取得したばかりで桜木博士って呼ばれるの慣れてないし……皆同い年なんだろう?俺のことは龍児でいいよ』

龍児は自前のムードメーカーを発揮し初対面の二人だったもの迎えが来るまで話が弾んだのであった。

ほどなくして待ち合わせ時間より10分遅れて黒のBMWの車がやってきた。
運転席から降りてきたのはスラリと背の高いモデル体型の白人の青年
年端は龍児達の2、3歳くらい歳上だろうかワンレンのストレートの光の辺り具合で白銀に見えるグレーのロングヘアーにホワイトが強い水色の瞳に長い睫毛の中性的で妖艶な美青年。どこか優那の面影があり優那の10年後はあのように成長するのではないのだろうか、ミステリアスな色気があり作られた様な何もかも美しい青年。

白衣を羽織り、中には黒のタートルネックのTシャツと黒いズボン十字架のシルバーのネックレスをかけていてどこぞの俳優やモデルなんかよりはるかに完璧な美しさを持つ青年が車から降りてきて微笑か浮かべ龍児達のもとに歩み寄ってきた。


『遅くなってすまない、日本のルーキー達。来る途中事故渋滞があってね。迂回していたら時間より遅くなってしまって……と、自己紹介がまだだったね、はじめまして私はレイザ・ロック・グローリー、君たちに手紙を日本政府に依頼した者だよ。』

レイザの口からは出た言葉は流暢な日本語だった、そういってニッコリ微笑む。落ち着いた大人の青年という雰囲気。

『まさかグローリー博士自ら出向いてくださるとは!』

昌之が嬉しそうに声をワントーン上げてそういった。

『ほ、本物のグローリー博士……わ、わあ……僕、ずっとずっと憧れだったんです!』

秀一もくたびれたような目を開きキラキラと尊敬の眼差しで180ほどある身長のレイザを見上げた。

『グローリー博士って?』

龍児がいうと再び隣にいた七緒がドスっと龍児の脇腹めがけて深く思いパンチをすれば龍児は案の定呻いた。うずくまる龍児に七緒は大きくなりそうな声を必死に抑えヒソヒソと耳打ちをする。

『世界的に有名な遺伝子科学研究の第一人者ですよ!わずか15歳でケンブリッジ大学を主席で卒業、超天才児と名をはせて20歳になるころにはすでに博士号を取得、今現在は多数の著書出して時折メディアにも多々取り上げられて何より今回のこの日米合同プロジェクトの指揮を国直々に依頼された超天才科学者、というか手紙にも名前が書いてあったじゃないですか!』

七緒が熱く語るとレイザは苦笑いをしながら話だす。

『なんだかそう言われると恐縮だよ、私はただ興味のあるものをとことん追求していっただけなんだよ。だからそこまで言われるほどの事は決してしていないんだ……ここで立ち話もあれだから皆車にのって、またせてしまったお詫びにランチは私がご馳走しよう。』

ボンネットを開けてキャリーケースを詰めて助手席に龍児、後ろの席に昌之、秀一、七緒を乗せると車は発進させまずロサンゼルス郊外の静かな場所のレストランにレイザは車をとめ、今まで食べたことのないような豪華なランチをご馳走してもらい、会話も弾みお互いが日本でなんの研究していたかなどの他愛ない会話に花が咲き楽しいひとときを過ごしてから

これから彼らが取り組むプロジェクトの研究室に向かうのだった。






ロサンゼルスの活気ある町並みからどんどん人里離れて車が木々生い茂る山道入ると道は舗装されておらずボコボコと激しく揺れしばらくそれが続くと
なにもない更地にたどり着き一旦レイザだけが車から降り、地面におもむろに手を当てると地面が割れてトラック1台分通れる地下へと続く道が現れる。

『手紙にも事前に書いていたが研究ラボは関係者以外立ち入り禁止だ。それが研究員の家族でも、もちろん研究内容も国家機密。口外したときは何かしらの罰が国から下るだろうね。私でも想像できないほどの』

レイザは再び車に乗り込みそういうと再び車にエンジンをかけて地下へと進んでいくのであった。

ラボの中は近未来のまるでSF映画に出てくような場所で地下の駐車場に車を停めていったんこれから住むことになる部屋に案内され、研究着に着替えてからまた集合と言われる。

部屋は別々で秀一と昌之は各シングルの部屋、そして七緒と龍児は同じ部屋のセミダブルの部屋に過ごすことになった。

各部屋に荷物をおいて早速持ってきた白衣の研究着に着替えてレイザの指定した場所に七緒と龍児が向かう。指定されたのはB棟最下層の研究室の扉の前。

扉は厳重なパスワード入力制のデジタルキー。分厚いガッシリとした鉄のシルバー色の扉の前にレイザとすでに支度を終えてまっていた昌之が立っていた。七緒と龍児が到着し、すぐあとに秀一が息を切らして走ってきた。
秀一だけ白衣姿だけではなくバインダーとペン、さらに首からデジタルカメラを下げてレンズの分厚い眼鏡をかけてやってきたのであった。
眼鏡をかけることによりますます冴えなく地味な雰囲気に拍車をかけた。



『遅くなってごめんなさい、なかなか持ってきたものがカバンから見つけられなくてせっかくの研究、メモできることがあれば少しでも記録に残して起きたかったから……』


運動は苦手なのだろう、ゼイゼイ息を切らして秀一はそういう。

『秀一君は研究熱心だね、でも撮った写真やメモをとったものを複製して誰かに渡したり外には持ち出してはいけないよ』

レイザはフフっと笑いそういった。


『もちろんです!僕は憧れのグローリー博士のような世界的な人助けに役立つ科学者になるために、一刻も人類遺伝子細胞研究を発達させて治癒力の強化とスピードをあげ、障害や難病で不自由な人たちの生活を少しでも楽にできる人助けの研究をしたいんです!だからこのプロジェクトで学んだことを自分のなかにだけでも吸収しておきたくて!』

シオシオとしてた冴えない地味な秀一だったがその話を一度すれば目をキラキラさせて言うのであった。

『秀一君はとっても優しい子なんだね……実に興味深い……』

実に興味深いという言葉を放ったときに目を細め秀一を見るレイザ、秀一はハッしてあわてて言葉を紡ぐ。


『そ、その、遅れてきたのに自分のことをズラズラと勝手に話し込んでごめんなさい!』

秀一が頭を下げればズコッと分厚い眼鏡がずれた。

『何も謝ることじゃないさ顔をあげなさい、秀一君。』

『あ………』

レイザの細い指が伸びてくいっと秀一の顎をあげて顔をあげさせる。
キラキラとした美しいレイザの顔がずいぶん近くにくると、秀一はボンと赤くなって眼鏡がずれたまま固まる。顔が美しいだけではない、コロンだろうか?それともレイザの使っているシャンプーの香り?シトラスないい香りがして一瞬で酔いそうになる。


『さあ、皆揃ったしラボのなかを案内しよう』

レイザはニコッと笑ってスっと秀一から離れカツカツとパスワードキーを解錠して扉がウィーンという機械音と共に開きレイザを先頭に中に進んだ。
レイザの後ろに昌之、七緒が続き龍児も進もうとしたがポーっと立ち尽くす秀一が残っていて『置いていかれるぞ?』龍児が不思議そうに秀一に呼び掛けると秀一はハッとして顔を真っ赤にしてズレた眼鏡を直し龍児とともにラボのなかに入るのだった。

後に龍児は秀一とレイザの関係が深くなりそして来るべきの日、秀一の決断によって彼らの悲しい結末を見届けることになるのを、このときは思いもしなかった。



中はガラスの通路でガラス越しに様々なロボット達が試験管に様々な色のした液体をいれたり遠心力で分離させたりいろんな実験作業が全てロボットたちによって行われていた。


『他に研究員はいないのですか?』

昌之が先頭を歩くレイザの背中に問うとレイザは歩き続けたまま答えた。


『米国全土の優秀な研究員は少し前まではいたのだけど、どうも私の思う研究と相違があってね……今は私がデータを打ち込んだ機械達と私だけだよ。どうも米国人とは昔からうまく付き合えなくてね……私自身祖父が日本人だったし実家も日本文化8割の家庭で育ったものだから、でもこの壮大なプロジェクト、いくら最先端の機材を投入したとしても私1人では不可能だ。そこで私は新たな研究員を国に要請し私たっての願いで次は日本人の研究者でと願したんだ。そこで選ばれたのが君たち昌之君、秀一君、龍児君の3人というわけだ。それに1か月後に国の鑑査が来るんだよ、それまでにある程度の成果をあげておかないといけなくてね。でもいくら国から資金を莫大につぎ込まれたとしても私1人で1か月で成果をあげるなんて無理だよ』

レイザはそう話してくれた。そしてしばらく歩き進めるとまた1つ大きなパスワードキーの同じ鉄の扉にたどり着く。


『ここが君たちに担当してもらうラボだ。まず入る前に確認の意味で今回のプロジェクトの目的が3つあったはずだ1人ずつそれを話して欲しい。まずは昌之君』

レイザが龍児の助手でついてきた七緒以外の3人を見て問いかけた。

『細胞共生進化による新たな遺伝子生成及び生物の作成です。』

昌之は答えた、レイザが『細胞共生進化とは?』再び昌之に尋ねる。

『細胞共生進化とは細胞が別の物質を取り入れてその別の物質の良い所だけを残し新たな細胞を気づくというもの。例えば地球が誕生したとき生物にとって酸素というもの元々猛毒だった。しかし細胞が酸素を取り入れてエネルギーに変えることによって細胞を変化させた生命体、ミトコンドリアが誕生し生物は細胞共生進化によって進化を続け今現代にいたる生物みなの核になったことがあげられます。』

昌之がそう答えると満面にレイザは微笑み『お見事』と誉める。

『はい、正解次は秀一君』

『は、はい!えっと……生成した新たな生物達の経過と能力テストです!意図的に共生進化させた生命体の今後の経過とそれらが備え持つであろう超人的な能力をいろんな方面からテストします!』

『そして龍児君すなわちそれは……』

『今後の人類医学発展の貢献に繋がり、もしこれが成功し実用化されれば人間は皆、事故などで四肢を切断するような大怪我をしても超再生能力でみずらで治癒が可能になりさらに様々な作業が各超人的進歩で楽になり結果、人類の未来の研究となります。』

『皆、こんな質問は愚問だったね、さすがだよ。』

レイザはにっこりと笑い皆にパチパチと小さい拍手をした。

『そこで、君たちにまず見てもらいたいのは現段階の研究結果達だ。きっとさぞかし驚くだろう、何せ形になったのを見るのは君たちがはじめてなのだからね。びっくりすると思うがどれも危害を加えない温厚な共生進化でうまれた生き物達ばかりだ。皆手にアルコールをした手袋と除菌済みのマスクをつけたら開けるよ』

レイザの用意した手術用のゴムの手袋に医療用のマスクをつけると、ついにしまっていたゲートが開きその姿を表し、そして龍児達は驚愕した。


部屋は地下にも関わらず青い空があり、太陽があって、そして草木花が1面を覆った温室。

そして二足歩行の犬や猫、人間の言葉を話すシカや鳥達
顔のある大樹。

まるで昔呼んだ絵本のページがそこに現れたようだった。

『す、すごい!これら全てがグローリー博士の研究成果なのですか!共生進化させるための遺伝子細胞の配合は拒絶反応が著しく難しいとされるのに、知らないところでここまで技術が進歩してるなんて……!』

七緒は声をあげた。


『植物や各動物の遺伝子を人間の遺伝子と配合させて新たな遺伝子を作り出し、第三の人類を作り出す。ここにいるみんなの人間遺伝子は私から採取した遺伝子なんだよね。正直いうとぞくに彼らは失敗と呼ばれる試作品という言い方になってしまうのだけど……』

するとレイザ達に気づいた動物達がレイザに子供のように口々に『ハカセだ!』『ハカセだ!遊ぼう!』そういってかけよってきた。

『なんだか愛着が湧いてしまってね、まるで自分の子供のようなんだ。国にに依頼されたプロジェクトいえど生まれてきたこの子たちは無実だ。だ生涯、我が子のように育てていこうと思うよ』

レイザは二足歩行の小さい猫を抱き上げるとその猫はキャッキャッと喜ぶ。
すると動物たちは龍児たちの匂いを嗅いだり興味津々に近寄ってくる。

『ねーねー、このお兄さんたちハカセのお友達?』

もう一匹の二足歩行の猫が見上げて聞いてきた。


『そうだよ、これからしばらく一緒に暮らすんだ。お兄さんたちを困らせちゃダメだよ?』

『そうなんだー!いっぱいこれからいっぱい遊ぼうね!』

猫でもニッコリと笑う表情がはっきりと分かる。


『遊びはまた今度、お兄さんたちを研究所を案内しなくちゃいけないんだ。また夕飯の時にくるから、それまでこの前出した小学生のドリル、ちゃんとやっておくこと、やってなかったら掃除当番だよ』

すると一同あからさまに『ヤバい』という顔をして、あわててレイザの宿題出したであろう宿題をしに走り去っていった。レイザはニコニコと手をふって見送るとくるりと龍児たちを見る。


『そして、君たちに担当してもらいたい今回のプロジェクトの最も成功作に近い第三の人類はこのラボを抜けた先にいる。より人間に近いまま動植物の細胞の良いところを取り込み共生進化させた、私は小さい頃からアメリカンコミックが大好きでね、そこに出てきた合成獣、キメラというものが出てくるんだ。そこからあやかってこの共生進化させた細胞をキメラ細胞と名付けた。そのキメラ細胞の最終形だ。』

レイザは再び話ながら奥に進み龍児たちを連れていく、そしてその扉の前についにやってきた。


『こころして、見てほしい、これが新たな科学の進歩だ。』


レイザは鍵を開けるとついにその全貌が現れた。

『おや、お客さんかい?うーん、どの男も冴えないね。』

扉が開くなり少年の声がした。その方向を見れば床を四角くくりぬいたような水深が10メートルほどの深い水槽があり、水槽をのぞくと見たことのない魚たちが泳ぎ岩や海草もあってまるで小さな海がそこにあった。

そしてその小さな海を優雅に泳ぎ、人工の岩肌に登り座ってこっちを見ている上半身裸の10代後半の少年。
髪は真っ黒で長くウェーブがかかってアメジストのような紫の瞳に長い睫毛、そして首には漢数字で『壱』とかかれ、何より見張るのは彼の下半身。
こちらも黒い色をしたタコの足が8本。
下半身がタコなのだ。まだ今のような妖しさと艶やかさは足りないものの、彼は間違いなく、ファースト、学たちの前に最後に現れたあの美しく妖艶な青年の若いころの姿だ。


『どの男も私好みじゃないね、強いていえば後ろのノッポ。あんた男らしい体と顔つきしてるじゃない。アタシのお世話役、あんたになら任せていいわよ』

ファーストは腕を組ながら8本あるうちの1本の足で指差した男は、厳格を絵にかいたような男、昌之、その男だった。


『彼はファースト、ご覧の通り海の生物の細胞と私の細胞を掛け合わせ進化して生まれた実験体1号だよ。ファーストからファイブまでは混ぜた動植物の影響が外見にでてしまってね。ファーストの場合、海中でも呼吸ができて会話も可能、水深10メートルまでは泳げることが立証済みさ。今後は水槽の深さを徐々に深くしてどこまで水圧に耐えれるのか等を研究し、これが成功したら人類は水難事故の死亡率は格段に減るしそれだけじゃない、海底遺跡や深海などの人間が入り込め無かったところの発掘や調査にも役にたつだろう。』

レイザがそう説明するとファーストは詰まらなそうに『そんなのヤダー』っと言うのだった。

『発掘とか調査とかめんどくさーい、アタシは綺麗な物を身につけてただお出かけがしたいわー。博士今日は外の洋服雑誌買ってきてくれなかったの?』

ファーストはチャプンと座っていた岩肌から水槽に飛び込み顔を出したまま皆の元に泳いで近づいてきた。

『この前新しいのを買ってきたばかりだろう?』

レイザは困ったようにそういうとファーストはまるで女子高生のような口調で返してきた。

『アタシは常に流行の最先端をいきたいのよ、流行ってあっという間に変わるんだもの。もう研究とうんざり、アタシも好きなお洋服きて、好きなお化粧して外を歩きたいわ』

『もう少し、待っていておくれファースト、1ヶ月後に来る監査に見てもらったら少しずつ外になれて行こうね』

『毎日毎日もう暇なのよ、博士とファッションセンスのお話しても全然合わないしときめきもないし……でも、そこのデカいのがアタシの研究に携わるっていうなら今後も協力してやってもいいわよ博士~』

水槽の縁に頬杖をついてファーストはワガママを言った。デカイの、と指すのは昌之のこと、ファーストは一目見て昌之を気に入ったようだった。


『ファーストは私が敬愛するもうひとつの母国、日本の麗しく艶やかで気品のある芸者をイメージして作ったのだけど……些か違うタイプで生まれてきてしまってね、すまないね昌之君。ファーストのワガママで機嫌を悪くしてしまったら。』

レイザがそう昌之にいえば昌之は黙ってファーストを見いる。そしてしばらくすると口を開いた。

『グローリー博士、いいですよ。この人魚は、俺が担当します。』

『アタシが人魚ね。あながち間違って無いけどおかしなことを言うもんだ。まあいいわ、これから宜しくね、マ、サ、ユ、キ🖤』

そういえばザパンと飛沫をあげてファーストは水槽のなかに潜って消えていった。



『次は2号、セカンドを紹介しよう。彼はクモやヘビ、トンボの細胞と私の遺伝子で共生進化させた。力が強く、それは1トンのトラックを片手で持ち上げられるほど、クモの糸のようなものを体の至るところから自在に分泌し生成することができる。それだけではなく360度見渡せることができて、セカンドのような人類の研究が進めば、災害での救助等などで活躍するだろう。』


レイザは話ながら奥の別の部屋に進みドアを開けると15歳ほどの目から下を黒のマスクで覆っていて髪はオレンジ色、襟足は刈り上げで前髪だけアシンメトリーになり左側が長く、左目だけ前髪で覆っていて耳の先端が尖りその当時は今つけている赤いピアスはまだつけていなかった。
そしてそんな彼の目はその当時から白目は存在せず、全眼の真っ黒の目をしていて右手の甲には2と算数字とアザがあり病衣のようなあさぎ色の上下のスーツを着ている。

セカンドはそんな姿でレイザに与えられた宿題なのだろうか、机に座り積み重なったドリルをカツカツとペンを進めて答えている。するとこちらに気づいたのだろうか、真っ黒のくりくりとした全眼がゆっくり龍児達を向いてペンを置いた。


『セカンド、今日からお世話をしてくれる右から昌之君、秀一君、龍児君そして龍児君の助手の七緒君だよ』

レイザが紹介していくとくりくりとした目が1人1人見て尖った耳をピクピク動かした。

『驚いてるのかい?セカンド』

セカンドはそのレイザの言葉に首を傾げる。

『驚ク……?驚クトハ?』

まるでセカンドの口調はロボットのような感情が欠落した言い方だった。

『思いがけない出来事や状態に心が騒ぐことだよ、ビックリするとも言うね』

レイザがそう説明するとセカンドはまた首を傾げ耳をピクピクさせる。

『心ハ、心臓ノコトカ……?心臓ハ脊椎動物ノモツ筋肉質ノ臓器デアリ、律動的ナ収縮ニヨッテ血液ノ循環ヲ行ウ、ポンプノ役目ヲ果タス器官……』

レイザは『うーん……』と悩んでしまった。

『セカンドはいい子で言ったことは何でも言うことをきいてやってくれるs、著しく感情が欠落しているんだ、今後そこをどう改善していくか問題なんだよね……次はスリーとフォーを紹介…………』

『イッテーーーーー!』

レイザの話の途中に龍児が突然声をあげた。皆一斉に龍児を見ると小さな二人のそれこそ3、4歳ぐらいの金髪で狐のようなフワフワしたシッポとピンとたった耳をした病衣をきた眉を潜めて困り顔の少年が、カプッと龍児のスネを噛んでいた。すると続け様に『きゃああ!』と七緒の悲鳴、一体何かと思えば、七緒の体が植物のツタのようなものでフワフワ宙吊りにされていた。

そんなツタの先を見ると龍児に噛みついた狐のシッポと耳を持つ少年と全くうりふたつの少年がそこにいて背中から生えた植物のツタのようなもので七緒を宙吊りにしてキャッキャッと遊んでいる

『こら、スリー、フォー!イタズラはやめないさい!』

レイザはそのそっくりな双子をしかると双子はパッと七緒と龍児から離れて2人寄り添い手を繋ぎレイザに2人で『あっかんべー』と舌を出してからかうと走り去っていった。


『あ!こら!…………全く……龍児君、七緒君、大丈夫かい?すまないね、あの双子が今から紹介しようとしていたスリーとフォーなのだけど……2人ともイタズラっ子でね。私も手をやいているんだ。』

レイザはやれやれと困ったように言った。



『スリーとフォーは共生進化で生まれる過程で1つの細胞が2つに分かれた、双子も生まれるという証明を裏付けた2人なんだ、それと同時に私の細胞と混ぜた遺伝子は犬、キツネ、植物、フォーには現れなかったけどスリーは体から自在に植物の根やツルを精製して物を人ぐらいだったら簡単に持ち上げることができる。それに俊敏な走りと卓越した嗅覚、さっきはイタズラ程度の甘噛みくらいだったのだろうけど、本気になればその顎の力は強くて食らいついたら離さない。この研究が進めば警察犬の仕事を人間ができるようになるかもしれないんだ。ちなみに、あの2人の見分けかたはキメラ細胞で人為的に浮き上がらせてるアザに3、4と各々出してる他に、眉をひそめて困り顔っぽい方がフォーで凛としてるにがスリー。フォーの方は少し野生的な獣の習性が色濃く残っていてね、だいたい10年ぐらい経ったらかな……彼にだけ動物並みの発情期が来るんじゃないか不安なんだよね、ましてや男の子だし、いろんなメスに手を出すんじゃないかって』


結果的に10年後レイザが心配していた発情期はメスには向けられなく、兄であるスリーにたいしてのみなのと、しかも自身に突っ込まれる方をフォーは要求していたためレイザの心配はとりあえずそこだけは問題なく育ったのであった。


『いや、ビックリしましたよ。噛まれて最初は痛かったけど、まあ何もないから別にいいんですけど、でも本気で噛まれたらスッゴい痛いんだろうな~』


龍児は笑いながらいっていたときだ。


『痛いんでしゅか?お怪我しちゃったでしゅか?』

パタパタと羽ばたく音が聞こえてその方向を向くと3~4歳ぐらいの男児が病衣を着てユニコーンのような角は幼少当時はチョコンと額に短く生えていて蝶の羽も小さく仕切りに細かくパタパタと仰いで飛んでいる。
紫の髪は当時は短くショートカット、それはファイブだった。


『お兄しゃん、どこか痛むでしゅか?僕、治しゅよ』

パタパタと飛んできたファイブはニコっと笑って龍児の目の前まで翔んできた。


『あ、噛まれたけど怪我とかはとくに……強いていえば、長旅で肩こりと睡眠不足がひどいかなーくらいかな?あははは!』

龍児は冗談のつもりで言ったつもりだった。

『はい、了解ちました、痛いの痛いのとんでけ~!』

ファイブはニコっと承知するとパタパタと皆のまわりを無邪気に旋回して翔びまわるとラベンダーのようないい香りが漂いしかも疲れがみるみる取れていく。

『どうでしゅか?痛いの治りまちたか?』

レイザが腕を広げるとファイブがその胸にパタパタと翔んで停まり、レイザに抱き抱えてもらうとアゲハ蝶の羽根がスッと消える。
どうやら羽根は自在に出し入れができるようだ。


『彼はファイブ、さっき見てもらった通り、アゲハ蝶の細胞が入ってる。他にはヤギ、様々な植物の細胞も混ざっていて、このファイブの持ってる羽根から自在にその植物の効能を持った独自の燐粉を分泌することが出来るんだ。心身を癒す燐粉や、はたまた猛毒の燐粉まで作れることが既に立証済みだ。ちなみにかすり傷、切り傷、火傷、小さい怪我だったら治癒力をあげる燐粉も作れることができるしこの研究が進めば空からいろんな燐粉を撒いて産業などに役立つことができる、例えば広大な除草、老人ホーム等でのリラクゼーション様々だ。とくにこのファイブは、とても無邪気で優しい子なんでね、性格なのかわからないけど癒し系の燐粉を最も得意としているんだ。どうだい?この子の燐粉を浴びた感想は、調子いいだろう?』

レイザがそう皆にきくと皆、一斉に頷いた。


『僕、眼精疲労ひどかったんですけど、なんか、すごく軽くなりました!』

秀一がそういうと抱き抱えられているファイブが不思議そうにレイザを見て聞いた

『ハカシェ、ハカシェ、がんしぇーひろー?ってなあに?』

『目が疲れちゃうことだよ』

『ハカシェもよく言ってることだ~今度ハカシェのお目目も治してあげゆね!』

ニコニコと無邪気な笑顔をファイブがレイザに向けてそういうとペチっとファイブめがけて植物のツタが軽く頭を叩いた。
軽く叩かれたといえどまだ子供、ファイブがウルッとしたとおもえば一気にウワーンと泣き出してしまう。


『こら!スリー!』


こっそり影から覗いてスリーとフォーはこっちを見ていてもちろんそのツタはスリーの背中から伸びたものだった。


『粉撒き散らす貧弱ファイブなんて嫌い!』


スリーがそう言うと隣にいたフォーも頷く。

『なんでシュリー兄しゃまとフォー兄しゃまはいつも僕をいじめりゅの?』

しゃくりあげながらとファイブはそういってレイザは泣くファイブの背中をさすりあやす。


『いっつもバカみたいにヘラヘラしてるお前が嫌いなんだよ!』
『そーだそーだ!この前の身体テストで最下位だし翔んでるだけで弱っちいボンクラなんて嫌いだ!』

スリーがいえばフォーが続く、ファイブはエンエンと声をあげて泣いた。レイザは困ったような顔をする。

『やめなさいと言っているでしょ、2人とも。兄弟仲良く……』

レイザがファイブの背中をさすりながらそうスリーとフォーに言って途中出来事だった。


『ファイブのこといじめちゃダメ!』

ピシャッと高い子供の声がしたと思いそちらを見れば一同ごくっと息を飲んだ。

そのドアを開けて立っていたその男児はパタパタと龍児達の足の下をくぐってレイザとファイブの元にいく。


『セブン、お昼寝から起きたのかい?』

『ファイブの泣いてる声がお部屋から聞こえたの、ファイブ、ファイブダイジョーブ?』


なぜ一同息を飲んだかというと、その男児は今まで生まれてきて見たことの無いような完璧な美少年だった。

まだ歳が3、4歳程度なのだが充分に艶っぽくこの
一見、少女に間違えてしまいそうなビスクドールのような陶器のような白い肌に桜色の唇。光の当たり具合で白銀に見えるグレーの前下がりのボブヘアーに海のような澄んだ蒼い瞳。

生唾を飲み込むほどのあまりの美少年で、この当時からそこら辺の子供のモデルやタレントなんかはるかに越えた完璧過ぎる美少年だったセブン、もとい桜木優那がそこにいた。

セブンもとい、優那は外見に他の生物の遺伝子の影響を受けてしまった兄達とは違い、普通の子供のようで数字のアザもない。

そして何より、一番レイザにそっくりだったのだ。

それはまるでレイザの子供のようで、しかし、やはり研究で生まれた子供なのだろう、一見人間のようでもやはり違うのであった。

『来たな!ヒーロー気取りセブン!』

スリーのツタがセブンめがけてとんできたときだ、セブンはピョンジャンプしてそれを軽く避けた。
その跳躍力は人間のましてやまだ3、4歳の子供どころか成人男性でも跳べぬほどの跳躍だ。タン、と地面に着地してタンと踏み出し一気にスリーに間合いをつめたセブンはペチっとスリーの頭を叩く。

『スリーお兄ちゃんファイブのこといじめちゃダメ!』

ペチっと頭を軽く叩かれたスリーはブワッと涙が溢れる。


『スリー!セブン、よくもスリー泣かせたな!』

フォーがそういうとセブンはペチっとフォーの頭も軽く叩いた。

『フォーもファイブのこといじめちゃダメ!』

するとフォーもブワッと涙を溢れさせる。


『弱いファイブも成功作だからって贔屓されるセブンも嫌い!ここにいないシックスも嫌い!』

スリーとフォーはワーンと泣き出して2人手を繋いでドアの外に走っていってしまった。


『セカンド、すまないけどスリーとフォーの様子を見てきてくれないか』

『承知シタ』

ずっと端で無表情で見ていたセカンドはレイザにそう言われるとスクっと立ち上がり、走っていったスリーとフォーめがけてセカンドもまたヒュンと俊足で追いかけていったのであった。

レイザがファイブを地面におろす。


『シェブン~』

ファイブはビエーンと泣きながらファイブに抱きついた。

『ダイジョーブ?ファイブ?』

セブンは抱きついてきたファイブにヨシヨシと頭を撫でてあげる。

『ありがとう、シェブン、シェブンは何か酷い事しゃれてない?』
『僕はヘーキだよ、もうダイジョーブだから泣かないで、ファイブ』

そんなやり取りをしている二人は見ながらレイザは一同に説明した。

『最後に来たあの子がセブン、この共生進化プロジェクトでの大成功作品と言ったらいいかな。もちろんセブンにも陸、海、空それぞれの生命機能を持った動植物の細胞が混ざっている。内外いずれも人間であることを留めたままその機能を引き出せる、成功作であり私の研究の完成品さ。皆に見てもらった子供達いずれも数字のアザがあっただろう?あれはキメラ細胞の原理を用いて私が故意的に自然に浮かび上がるようにしたつアザなんだ。キメラ細胞が減っていけばあのアザは自然に消える、セブンも同様にお腹にに7という数字のアザがあったが今は彼のお腹にはアザの痕跡すらない。でももちろんある一定のキメラ細胞を使用したときに浮かび上がる。あえて分かるようにあのアザが浮かび上がるようにしたんだ。万が一、キメラ細胞の獣の部分が強く表に出て本能的になってしまった場合まだ危険かもしれないからね』

今まで見てきた子供達はどこかしらに必ず人外の部分が外見に現れていた。
しかしセブンにはそれは一切無く、本当にただの人間の子供のようだ。

『ハカセ、お花のお部屋に行ってもいい?ファイブにあそこにいるちょうちょさん達が何を話ているか教えてもらうの』

セブンはファイブ手を繋いでレイザを見上げたレイザは『ああ、行っておいで』というとファイブとセブンはニッコリ、わーいと言って2人手を繋いだまま温室の方に向かっていくのだった。




『ファーストにセカンドにスリー、フォー、ファイブ、セブン……あと6番目もいるってことですか?』


秀一がレイザにそう問いかけるとレイザは『そのとおり』とニッコリ笑ってくれた。

『ただ、シックスはとても臆病で人見知りなんだ。とても優しくてとってもいい子なのだけど…それに彼もセブンと同様に外見も臓器的な中身も正常な人間ので生まれてきた。でも彼は自力でセブンのように他の混ざった動植物の特性を引き出すことも使いこなすこともできない、力は確かに眠ってるはずなんだけど…ごく一般的な普通人間の子供として生まれてきたんだよね』

シックスのいる部屋に案内するよ言われて奥に進んでいくとカプセルのような子供のベットが置いてあった。


『彼がシックス、ごく一般的な子供に生まれたといっても内にはキメラ細胞が眠っているのは確かだ。顔立ちが少し野犬みをおびてるかもしれないけど、彼がどんな能力を持ってるかまだ研究段階だよ。今はお昼寝の時間だね』

皆カプセルのなかをのぞくと布団に丸まって眠っている病衣を着た3、4歳ほどの黒髪の男児が眠っている。半開きになってる口からはギザギザとした歯がのぞき耳も心なしか尖っているようにも見えなくもないがごく普通の男児だ。
そのシックスと呼ばれる男児こそ、のちに龍児に引き取られることになるであろう桜木学の幼少時代である。

しかしなぜ学はシックスと呼ばれていたこと、そしてなぜこの過去を忘れてしまっていたのか、ちがう過去を植え付けられているのか

物語はようやくここから幕を開けたのだ。



するとシックスがゆっくりと目を開けた。

『おはようシックス、ごめんね起こしてしまって。』

シックスはのぞいてる大人達を見てビクッとして怖がるがカプセルを開けてレイザが頭を撫でるとホッとしたようにレイザにすりよりレイザはそんなシックスを抱き上げる。

シックスは初めて見る龍児達を見てレイザの肩に顔を埋めて隠れてしまう。


『最初は国からの依頼の研究ではあったけどこうして生まれたすべての命に神秘を感じるし、それにこの子達や他の研究室にいたみんなの成長に喜びを感じる。研究を通してこの子達に私の方が教えられるんだよ。1ヶ月後の鑑査のためにも彼らの研究を進めなければいけないけど、いつか研究から離れてこの子達と一緒に穏和に過ごしたいと思うよ。そのためにはまず、鑑査に認められないとね。』

レイザはシックスを抱きながら龍児たちに笑いかける。その姿は本当に父親のようだった。



『す、すごいです!もう、これを発表したらノーベル賞ものですよ!すごい……本当にすごい!こんなプロジェクトに僕も加われるなんて…!』

秀一は尊敬の眼差しでレイザを見上げ感動したように声をあげた。


『色々キメラの子供達の性格もあるから悩まされることはたくさんあるけど、これから頼むよ秀一君、昌之君、七緒君、そして龍児君』



名誉のある人類科学の進歩の研究。若き日本からやって来た研究者達は胸を高鳴らせ心を弾ませていた。

まだ、この頃まではー……
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