『種族:樹人』を選んでみたら 異世界に放り出されたけれど何とかやってます

しろ卯

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ドューワ国編

109.ぐれーむ・どゅーわ(下)

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※本編とはあまり関係ないので、読み飛ばしてくださっても構いません。※

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 さらに月日が経ち、ユキノ姫の誕生日が来ました。
 仲良くしていたネズミたちが、ユキノ姫をお祝いしてくれます。けれどいつも十三匹いるネズミのうち、一匹の姿が見えません。
 ユキノ姫も十二匹のネズミ達も心配しますが、塔の中を探しても見当たりませんでした。
 実はそのネズミは、王妃に捕まっていたのです。
 何とか逃げ出しましたが、ユキノ姫に贈ろうと思っていた鏡を取り上げられてしまいました。

「気にしないでください。ネズミさんが無事で良かったです」

 にっこりと微笑むユキノ姫に、ネズミ達も笑顔を見せ、一緒にお祝いを再開します。

 ネズミの持っていた鏡は、『真実の鏡』と呼ばれる、問いかければ真実の答えをくれる魔法の鏡でした。
 王妃は魔法の鏡に尋ねます。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは、だあれ?」

 すると鏡は答えました。

「世界で一番美しいのは、ユキノ姫です」

 これを聞いた王妃は怒り出し、ユキノ姫を森に追放するように命じます。
 塔から連れ出されたユキノ姫は、森の奥深くに置き去りにされてしまいました。

「お腹が空きました」

 ユキノ姫が森の中を彷徨っていると、前方にお菓子の家を見つけます。

「なんと! お菓子があんなにいっぱい! 鳥さんやアリさんに襲われないのでしょうか?」

 心配しながら近付いてみますが、どうやらアリの行列はありません。中を覗いても誰もいないようです。
 お腹が空いていたユキノ姫は、食べても問題なさそうな箇所を探して、少しだけ食べてみます。

「美味しいです!」

 もっふもっふと頬張ったユキノ姫は、眠くなってきました。ずっと歩いていたので、足も痛みます。
 家の中に入ってみると、七つの小さな寝台が並んでいました。くっ付ければ、ちょうど雪乃姫が眠れそうです。
 ユキノ姫は休ませてもらうことにしました。


「わー」
「わー」
「わー」

 声が聞こえて目が覚めると、七匹のマンドラゴラが寝台を囲んでいます。

「あ、ごめんなさい。あなたたちの寝台を使ってしまったのね」

 ユキノ姫は慌てて寝台から下りて、謝りました。

「わー」
「わー」
「わー」
「えーっと……?」

 マンドラゴラたちはユキノ姫に上ったりぶら下がって、遊んでいます。
 こうしてユキノ姫は、七匹のマンドラゴラたちと暮らすようになったのです。

 一方、ユキノ姫を排除できたと思った王妃と姉達の下に、ドューワ国の使者が訪れました。
 なんと王子様が、舞踏会で出会った令嬢を探しているというのです。
 姉達の前に、ガラスの靴が置かれます。この靴の持ち主こそが、王子様の想い人であり、王子妃に迎えられるというのです。
 我こそはと、二人の姉はさっそくガラスの靴を履いてみました。けれど小さすぎて入りません。
 姉達はきのこを生やして落ち込みました。

「ここにもいなかったか」

 使者たちは溜め息を吐いて帰っていきました。
 部屋に戻った王妃は、魔法の鏡に尋ねます。

「鏡よ鏡、あのガラスの靴の持ち主はだあれ?」
「あのガラスの靴の持ち主は、ユキノ姫です」

 王妃の顔が真っ赤に染まり、叫びました。

「ユキノ姫は塔に閉じ込め、ドューワ国には行っていないわ! 間違いよ!」
「いいえ。ユキノ姫は魔法使いの魔法で、綺麗なドレスを着てドューワ国に行きました」

 魔法の鏡の答えを聞いて、王妃はがく然と立ちすくみます。それからひしひしと怒りが込み上げてきました。
 いつも頭巾を被らせ、塔に幽閉までしていたというのに、思い通りにいかないなんて!
 王妃は従順な従者を呼び、密命を下しました。

 森でマンドラゴラたちと暮らしていたユキノ姫は、一人でお留守番をしていました。
 そこへ旅の商人が現れます。

「お嬢さん、美味しいランゴの実はいかがですか?」
「美味しそうですね。でもこの通り、森の奥で暮らしているので、お金は無いのです」
「では味見用に、一つ差し上げましょう」
「そんな、申し訳ないです」

 ユキノ姫は味見用のランゴの実を貰っても、買うことはできないため、お断りしました。
 けれど商人は、しつこく勧め続けます。
 申し訳なさでふるふる震えるユキノ姫に、妥協案を示しました。

「……。えーっと、では、この痛みかけたランゴの実を貰ってはいただけませんか? こちら側はまだ食べれますから。このままだと他の実も腐ってしまうので、困っていたのです」
「そういうことでしたら、ありがたく頂きますね。親切にありがとうございます」

 何とかユキノ姫にランゴの実を渡せた商人は、ほっと胸をなで下ろして去っていきました。

「美味しそうなランゴの実ですね。マンドラゴラさんたちは食べれませんし、先に頂いてしまいましょう」

 ユキノ姫はランゴの実を齧ったのです。すると急に眠くなり、ユキノ姫は床に倒れてしまいました。
 家に帰ってきたマンドラゴラたちは、驚きます。お菓子の家が、茨に覆われていたのですから。
 さらに隙間から家の中へと入れば、ユキノ姫が倒れているではありませんか。
 心配しましたが、どうやら眠っているだけのようです。
 マンドラゴラたちは協力して、ユキノ姫を寝台に運びました。
 けれど朝が来ても、次の朝が来ても、ユキノ姫が目を覚ますことはありません。
 マンドラゴラたちは遊んでもらえなくて、悲しみました。

 一方、ユキノ姫が暮らしていた塔に住むネズミ達は、ユキノ姫を心配して探しに行くことにしました。
 魔法使いにお願いして、大きくしてもらいます。
 それから、ユキノ姫が行きそうなところを駆け回ったのです。

「待て! パピパラではないか?」

 街道を走っていたパピパラを、呼び止める声がありました。パピパラは首を傾げます。豪華な馬車から下りてきたのは、知らない人間です。
 その人間は苦笑をこぼし、パピパラに言いました。

「湖で出会ったカエルだよ。悪い魔法使いに、カエルになる魔法を掛けられていたんだ。姫のお蔭で人間に戻れたから、お礼を言いたくて探していたんだ」

 良い仲間を見つけたと、パピパラは喜び、尻尾をピュンピュンと振ります。
 パピパラはカエル人間を塔へと連れて帰りました。

「ここに姫がいるのかい?」

 カエル人間が問うと、パピパラは悲しそうに俯きます。カエル人間は首を捻りながらも、塔を覗きました。けれど誰もいないようです。
 仕方ないので、近くの城に向かいました。
 やってきたカエル人間を見て、王妃も二人の姉も、大慌てです。
 そのカエル人間こそが、ドューワ国の王子様だったのですから。

「姫はどこにいますか?」
「二人の姫ならば、ここにいます」
「もう一人、いるはずです」

 問い詰めても、王妃達は答えません。
 すると、ネズミ達が現れ、王子様を王妃の部屋へと案内したのです。
 ネズミ達は魔法の鏡を王子様に示しました。

「ふむ。この鏡は魔法が掛けられているな。一体どんな魔法が掛けられているのだ?」

 鏡の前で王子様が疑問を口にすると、とつぜん鏡が喋り出したではありませんか。

「私は真実を述べる魔法の鏡」
「ほう。では、私の探している姫がどこにいるのか、教えてほしい」
「貴方の探している姫は、森の奥、マンドラゴラたちが暮らす、お菓子の家で眠っている」

 魔法の鏡からユキノ姫の居場所を聞いた王子様は、森へと急ぎます。
 森の奥へ入ると、茨に包まれたお菓子の家が見えてきました。王子様は茨を切り裂き、何とかお菓子の家に入ったのです。
 そこには、寝台に横たわるユキノ姫と、眠るユキノ姫の上で跳ねて遊ぶ、マンドラゴラたちがいました。

「……」
「わー」
「わー」
「わー?」

 頭痛を覚えながらも、王子様はマンドラゴラたちを退かして、ユキノ姫の枕辺に膝を折ります。

「ユキノ姫、どうか目覚めて私の妃になってください」

 王子様がユキノ姫に口付けをすると、ユキノ姫が微かに動きました。
 そして、

「ふにゃああああああぁぁぁぁーーーっっ??!」

 森の中に、ユキノ姫の悲鳴が轟いたのでした。
 こうしてユキノ姫は、王子様の妃に迎えられ、パピパラさんはドューワ国で愛され、大切にされるようになったのです。


 ――という逸話があってね」
「……。主人公の名前、違いますよね?」
「お姫様の名前なんて興味ないもん。ユキノちゃんが主役のほうが楽しいでしょう?」
「……。私はご飯は食べれませんよ?」
「物語の中くらい、食べたいでしょう?」
「……。マンドラゴラも出てくるんですか?」
「まさかあ。元ネタは小人じゃなかったかな? でもユキノちゃんが主役なら、マンドラゴラのほうがしっくりくるでしょう?」
「……」

 へらりと笑うノムルは放っておいて、雪乃は話を思い出してみる。
 どうやらグリム童話の色々が混ざっているようだ。

「グレーム森林、ニューデレラ、スノホワ……。何となく予想はしてましたけど、予想通りみたいですね」
「うん? 何がー?」
「いえ、お気になさらず」
「ええー? ひっどーい!」

 やはりこの世界はあの世界と繋がっているようだと、雪乃は思った。
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