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ドューワ国編
112.まだ続けるのか?!
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こほんと一つ、わざとらしい咳をしたノムルは、ミレイへの問いかけを再開する。先ほどまでの険は消え、諭すような声音だったが。
「どうして樹人から作った杖を愛用する魔法使いが多いのか、知っているかい?」
「まだ続けるのか?!」と、雪乃とマリー、ラームの心の声が重なった。
雪乃の暴走で冷静になっていたミレイは、落ち着いて答える。
「もちろんよ。樹人は魔物だから、魔力を所持しているわ。樹人で杖を作れば魔力を流しやすく、更に樹人が元々持っていた魔力が上乗せされる。だからより強力な魔法が使えるようになるのよ」
少々毒を含んだ口調で展開されたミレイの説明を、異世界から来た雪乃も、魔法使いではないマリーとラームも、「ほう」と興味深く耳を傾けた。
しかし、
「高価な素材で見栄を張った杖を作るより、魔法に適切な素材を用意することをお勧めするわ」
ふんすと鼻息荒く発した一言は、余計だった。これでは喧嘩を売っているようなものだ。
「ちょっとミレイ、一応、年上」
「冒険者に年齢は関係ないでしょう? 重視されるのは実力よ? それは魔法使いも同じ」
「まあ、そうだけど……」
ミレイの言葉は間違ってはいない。
冒険者仲間で尊重されるのは実力でありランクだ。彼女たちはノムルのランクは知らないが、ここまで何もしていない上に外見もだらしない男が、まさかAランクだとは夢にも思っていない。
おそらく万年Dランクか、せいぜいCランクの底辺だろうと当たりを付けていた。
そろりとマリーとラームがノムルの顔色を窺う。その表情に、憤りの色は見当たらない。
二人がほっと胸をなで下ろした直後に、彼の声が届いた。
「うん。樹人が魔力を持っていて、加工後もそれが残るというのは、間違っていないねえ。ユキノちゃんはどう思う? 樹人の杖を使いたい?」
話を振られた雪乃はわずかに眉をひそめたが、問われるまま考え始める。
手を抜けるところはとことん手を抜くが、何だかんだ言って、ノムルは面倒見が良い。意味も無く振ってくるとは思えなかった。
だから樹人を魔法の杖に仕立てるとどうなるか、真面目に想像してみた。その結果、
「そうですねえ。私だったら、できれば使いたくないですね」
と、結論付けたのだった。
「え?」
意外な回答に、ミレイは雪乃を凝視する。しばらく見つめていた後、ノムルを睨んだ。彼が余計なことを吹き込んだと思ったのだろう。
しかしノムルは完全スルーを決め込む。なにせ彼のスルースキルは、常時発動の高レベルなのだ。
むしろ意識しなければ、周囲の様子に気付けないほどに。
「へえ? 理由は?」
「ノムルさんが考えている理由も、もちろんあるのですが」
説明を求めたノムルに対し、雪乃は言葉を濁す。
雪乃の同属を素材にして杖を作るとか、悪趣味にも過ぎることは、さすがのノムルも理解している。というより、断固阻止したいというのが本音だろう。
「それを置いておいても、やっぱり嫌ですね。抵抗が強そうです。うっかり暴走とかしませんか?」
「え?」
雪乃は始めて治癒魔法を使ったときのことを思い出していた。
ノムルの傷を治すために自分の魔力を傷口に送り込んだが、ノムルの持つ魔力が抵抗を示し、かなり神経を使った。
魔力を常に送り続けなければ押し戻されそうで、けれどそれに集中していると操作を誤って傷を広げてしまいそうで、酷く怖かった。
治療を終えたときは、魔力の消費と精神的疲労で、雪乃はすぐに根を張ったほどだ。
雪乃の答えに、ミレイは目を丸くしている。対してノムルは、満足そうに頷いた。
「正解。樹人を素材にして作った杖は、抵抗が強くて暴走しやすい。まあ使いこなせるようになれば、たしかに樹人が持っていた魔力を上乗せすることもできるんだけどね。けど樹人の魔力に頼らないとまともに魔法も使えないようなやつ、魔法使いなんて辞めちゃえばー? って感じだよねえ」
辛らつな言葉を発するノムルに、雪乃は遠い空を見上げた。
青く澄んだ空に、黒い鳥が飛んでいる。その姿に、ぶるりと震えて、とっさに自分の身を確認したのは、トラウマゆえだろう。
今日はカカについて語ったことも、記憶を呼び覚ます引き金になったのかもしれない。
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
怪訝な顔で聞かれたが、事情は説明できない。
樹人の力に目覚めてすぐの頃に、試しにカカの実を結んだら多量の鳥に襲われたなんて、絶対に笑われる。
ノムルは執拗に聞きたがったが、雪乃は断固として口を割らなかった。
幼い弟子をからかう師匠という、どこかのどかな空気が流れているのだが、それは二人の間だけだ。
少女たちのほうは、まったく違う空気に包まれていた。
拳を握り、唇を噛みしめるミレイを、マリーとラームは痛ましそうに見つめる。
魔法の威力を上げるためにと、少し無理をしてグレーム森林の奥までやってきたのだ。そのせいでマリーは怪我を負い、揃って命の危険に見舞われてしまった。
それに雪乃とノムルの発言は、樹人を素材にした杖を使う魔法使いや、使いたいと思っている魔法使い全てへの、暴言とも取れた。
「だったら、どうして多くの魔法使いたちが、樹人の杖を使っているのかしら? 愛用している魔法使いの中には、一流と呼ばれる方々だって大勢いるわ。本当にそんな欠点があるのなら、魔法使いの半身とも言える杖の素材には、これほど選ばれていないはずよ?!」
震える声を振り絞り、ミレーはノムルを睨むように見据える。その言葉には、マリーとラームも同意を示した。
本当に魔法使いの杖として相応しくない素材であれば、自然に淘汰されていたはずだ。けれど今もなお、多くの魔法使い達が愛用しているという事実がある以上、ノムルと雪乃の説は矛盾が生じる。
もしくはそれ以上のメリットがあるはずだろうと、そう考えた。
けれど、その問いに対する答えは、彼女たちの考えを大きく裏切るものだった。
「一流ねえ。どのレベルを言っているのか知らないけど、少なくとも俺の周りには、樹人の杖なんて使っているやつはいないねえ。……ああ、どっかの国で見た気がするなあ。『俺は樹人の杖を使いこなせる、一流の魔法使いなんだぞ』とかなんとか、しつこく見せに来たなあ。鬱陶しかったから、落雷で追い払ったけど」
「過激すぎます。下手したら死んでしまいますよ? どうしてノムルさんはそう加減ができないんですか」
つっ込むべき箇所は、たぶんそこではないと、少女達はつっ込みたかった。
「どうして樹人から作った杖を愛用する魔法使いが多いのか、知っているかい?」
「まだ続けるのか?!」と、雪乃とマリー、ラームの心の声が重なった。
雪乃の暴走で冷静になっていたミレイは、落ち着いて答える。
「もちろんよ。樹人は魔物だから、魔力を所持しているわ。樹人で杖を作れば魔力を流しやすく、更に樹人が元々持っていた魔力が上乗せされる。だからより強力な魔法が使えるようになるのよ」
少々毒を含んだ口調で展開されたミレイの説明を、異世界から来た雪乃も、魔法使いではないマリーとラームも、「ほう」と興味深く耳を傾けた。
しかし、
「高価な素材で見栄を張った杖を作るより、魔法に適切な素材を用意することをお勧めするわ」
ふんすと鼻息荒く発した一言は、余計だった。これでは喧嘩を売っているようなものだ。
「ちょっとミレイ、一応、年上」
「冒険者に年齢は関係ないでしょう? 重視されるのは実力よ? それは魔法使いも同じ」
「まあ、そうだけど……」
ミレイの言葉は間違ってはいない。
冒険者仲間で尊重されるのは実力でありランクだ。彼女たちはノムルのランクは知らないが、ここまで何もしていない上に外見もだらしない男が、まさかAランクだとは夢にも思っていない。
おそらく万年Dランクか、せいぜいCランクの底辺だろうと当たりを付けていた。
そろりとマリーとラームがノムルの顔色を窺う。その表情に、憤りの色は見当たらない。
二人がほっと胸をなで下ろした直後に、彼の声が届いた。
「うん。樹人が魔力を持っていて、加工後もそれが残るというのは、間違っていないねえ。ユキノちゃんはどう思う? 樹人の杖を使いたい?」
話を振られた雪乃はわずかに眉をひそめたが、問われるまま考え始める。
手を抜けるところはとことん手を抜くが、何だかんだ言って、ノムルは面倒見が良い。意味も無く振ってくるとは思えなかった。
だから樹人を魔法の杖に仕立てるとどうなるか、真面目に想像してみた。その結果、
「そうですねえ。私だったら、できれば使いたくないですね」
と、結論付けたのだった。
「え?」
意外な回答に、ミレイは雪乃を凝視する。しばらく見つめていた後、ノムルを睨んだ。彼が余計なことを吹き込んだと思ったのだろう。
しかしノムルは完全スルーを決め込む。なにせ彼のスルースキルは、常時発動の高レベルなのだ。
むしろ意識しなければ、周囲の様子に気付けないほどに。
「へえ? 理由は?」
「ノムルさんが考えている理由も、もちろんあるのですが」
説明を求めたノムルに対し、雪乃は言葉を濁す。
雪乃の同属を素材にして杖を作るとか、悪趣味にも過ぎることは、さすがのノムルも理解している。というより、断固阻止したいというのが本音だろう。
「それを置いておいても、やっぱり嫌ですね。抵抗が強そうです。うっかり暴走とかしませんか?」
「え?」
雪乃は始めて治癒魔法を使ったときのことを思い出していた。
ノムルの傷を治すために自分の魔力を傷口に送り込んだが、ノムルの持つ魔力が抵抗を示し、かなり神経を使った。
魔力を常に送り続けなければ押し戻されそうで、けれどそれに集中していると操作を誤って傷を広げてしまいそうで、酷く怖かった。
治療を終えたときは、魔力の消費と精神的疲労で、雪乃はすぐに根を張ったほどだ。
雪乃の答えに、ミレイは目を丸くしている。対してノムルは、満足そうに頷いた。
「正解。樹人を素材にして作った杖は、抵抗が強くて暴走しやすい。まあ使いこなせるようになれば、たしかに樹人が持っていた魔力を上乗せすることもできるんだけどね。けど樹人の魔力に頼らないとまともに魔法も使えないようなやつ、魔法使いなんて辞めちゃえばー? って感じだよねえ」
辛らつな言葉を発するノムルに、雪乃は遠い空を見上げた。
青く澄んだ空に、黒い鳥が飛んでいる。その姿に、ぶるりと震えて、とっさに自分の身を確認したのは、トラウマゆえだろう。
今日はカカについて語ったことも、記憶を呼び覚ます引き金になったのかもしれない。
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
怪訝な顔で聞かれたが、事情は説明できない。
樹人の力に目覚めてすぐの頃に、試しにカカの実を結んだら多量の鳥に襲われたなんて、絶対に笑われる。
ノムルは執拗に聞きたがったが、雪乃は断固として口を割らなかった。
幼い弟子をからかう師匠という、どこかのどかな空気が流れているのだが、それは二人の間だけだ。
少女たちのほうは、まったく違う空気に包まれていた。
拳を握り、唇を噛みしめるミレイを、マリーとラームは痛ましそうに見つめる。
魔法の威力を上げるためにと、少し無理をしてグレーム森林の奥までやってきたのだ。そのせいでマリーは怪我を負い、揃って命の危険に見舞われてしまった。
それに雪乃とノムルの発言は、樹人を素材にした杖を使う魔法使いや、使いたいと思っている魔法使い全てへの、暴言とも取れた。
「だったら、どうして多くの魔法使いたちが、樹人の杖を使っているのかしら? 愛用している魔法使いの中には、一流と呼ばれる方々だって大勢いるわ。本当にそんな欠点があるのなら、魔法使いの半身とも言える杖の素材には、これほど選ばれていないはずよ?!」
震える声を振り絞り、ミレーはノムルを睨むように見据える。その言葉には、マリーとラームも同意を示した。
本当に魔法使いの杖として相応しくない素材であれば、自然に淘汰されていたはずだ。けれど今もなお、多くの魔法使い達が愛用しているという事実がある以上、ノムルと雪乃の説は矛盾が生じる。
もしくはそれ以上のメリットがあるはずだろうと、そう考えた。
けれど、その問いに対する答えは、彼女たちの考えを大きく裏切るものだった。
「一流ねえ。どのレベルを言っているのか知らないけど、少なくとも俺の周りには、樹人の杖なんて使っているやつはいないねえ。……ああ、どっかの国で見た気がするなあ。『俺は樹人の杖を使いこなせる、一流の魔法使いなんだぞ』とかなんとか、しつこく見せに来たなあ。鬱陶しかったから、落雷で追い払ったけど」
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