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ドューワ国編
124.鈴のような声とは
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「ではこちらへ」
「はーい」
雪乃を抱き上げてご機嫌なノムルは、ドットに従って進んで行く。心身ともに疲れた雪乃は、無駄な抵抗は諦めてされるがままだ。
重厚な扉の一つの前で、ドットは足を止める。扉の左右には騎士が控えていた。
「ノムル・クラウ様と御令嬢、ユキノ様をお連れしました」
「……」
雪乃は近くにあったノムルの顔を、冷めた目で見る。どんどん外堀から埋められていっている気がする。
へらりと笑むノムルに、額に位置する枝がピキリと音を立てた。だが動揺を見せたら負けだ。この変態は、余計に喜ぶに決まっている。
無視を決め込んだ雪乃は、扉の向こうへと意識を向けた。
騎士によって扉が開けられ、ドットはノムルと雪乃に、中へ入るよう促がす。
ぐいっとノムルを押した雪乃は、わずかに緩んだ腕から脱出し、絨毯の上に着地する。そのまま逃げるように部屋の中へと入った。
「あら、小さなお姫様なのね」
鈴のような声とは、こういう声なのだろうという、濁りのない綺麗な声が雪乃の耳に届く。
「お初にお目にかかります。至高にして孤高の魔法使いと名高き、ノムル・クラウ様。そしてユキノ・クラウ様。アイス国が王女、リリアンヌ・アイスにございます」
少女は水色のドレスの裾をつまみ、綺麗な淑女の礼を見せた。
銀色の長いストレートロングの髪は、一本一本がきらめいて、繊細な氷の糸のようだ。瞳は色素の薄い白藍色だが、冷たさは感じさせず、魅入られそうなほどに美しい。
絵画か彫刻を思わせる、芸術的な美少女だ。
雪乃はほうっと嘆息を漏らし、しばらく見つめていた。見惚れていたせいで、一つ訂正を忘れてしまったのだが。
「……ちゃん、……ユキノちゃん?」
「あ、はい。なんでしょう?」
ノムルに突付かれて顔を上げると、なんだか心配そうに見ている。
「どこか調子でも悪いの?」
「いいえ?」
「本当に?」
雪乃はぽてんと幹を傾げて考える。
どうやらぼうっとしていたせいで、体調が悪くなってしまったのかと誤解させてしまったようだ。
「大丈夫です。お姫様のあまりの美しさに、ぼーっとしてしまっただけですから」
「まあ!」
リリアンヌ王女は口元に手を当て、嬉しそうに驚いたような声を出す。側に控えていた侍女達も、目を大きくして雪乃を見た。それから、くすくすと笑い出す。
「ありがとうございます、ユキノ様」
にこりとほほ笑むリリアンヌ王女から、目もくらむほどのキラキラオーラが放出される。
これは落ちない男はいないだろうと、雪乃は確信した。
「さっそくだけどさー、君が乗る馬車を護ればよいんだよねー?」
「……」
いた。身近に一人いた。
この美しさを理解できぬ、野暮なおっさんが。
雪乃は氷よりも冷え切った目を、ノムルに注いだ。
「え? なんでそんな目で見るの?」
困惑している様子を見るに、まったくの無自覚であったようだ。
呆れたように息を吐き出しながら首を横に振った雪乃は、リリアンヌ王女に意識を戻す。
「ちょっ、ユキノちゃん?! なんか冷たい! なんで?」
「気にしないでください。美的感覚の齟齬です」
「えー?」
ノムルは納得できないとばかりに、唇を尖らせてぶーぶー言っている。比喩ではなく、「ぶーぶー」と言っていた。
アイス国の一向は、ユキノとノムルのやり取りに、きょとんっと目を丸くしている。
「この人のことは御気になさらないでください。ご挨拶が遅れましたが、今回の依頼を受けましたノムル・クラウと、弟子の雪乃です。道中よろしくお願いいたします」
ぺこりと幹を曲げて挨拶をする小さな子供に、リリアンヌ王女は目尻を下げる。
「こちらへどうぞ、ノムル様、ユキノ様」
「ありがとうございます」
リリアンヌ王女は雪乃とノムルを、ソファへと誘った。
御礼を述べて歩きだした雪乃は、リリアンヌ王女とノムルが座るのを待ってから、ソファに座る。
間に置かれた小さなテーブルには、色取り取りの丸いお菓子を盛った、ガラスの器が置かれていた。器には、雪の結晶を模した見事な細工が施されている。
飴玉のような半透明のお菓子を、雪乃は興味深く見つめる。
お姫様の前だろうと、やはり雪乃は食べ物が第一なようだ。
くすりと笑ったリリアンヌ王女に顔を上げれば、彼女は優しくほほ笑む。
「遠慮なくどうぞ。わが国伝統のお菓子、シャーベールよ」
「……」
雪乃は固まった。
きっと語源は『喋る』でも『シャベル』でもないはずだ。おそらく、『シャーベット』と『ボール』の組み合わせだと思われる。そう思いたい。
「へえ、アイス国のお菓子かー」
ノムルも興味深そうに眺めた後、赤いシャーベールを指で摘まんで口に放り込んだ。その様子を、雪乃はじっと観察する。
真剣な眼差しを向けられているノムルはといえば、シャクシャクと噛み砕いて飲み込んだ後、二つ目を口に放り込む。今度は薄緑色だ。
一つ目と違い、ノムルは噛み砕くことなく、味わっている。
雪乃はじいっと、じいーっと、じいいーーーーっと、ノムルを見つめる。それはしっかり、穴が空くほど。
けれど我が道をどんどん進むノムルは、気にしない。というより、たぶん気付いていない。
見ているリリアンヌ王女たちのほうが耐えかねて、雪乃にシャーベールを勧めた。
「ユキノ様もどうぞ」
「いえ、私のことは御気になさらないでください」
体の向きをリリアンヌ王女の正面に据えた雪乃は、両枝先を膝の上で重ね、背筋を伸ばしたまま奇麗に幹を曲げる。
リリアンヌ王女も、部屋にいる従者達も、困惑したように雪乃を見つめる。
しばらくして、
「果物だねえ。砕いて凍らせてる。甘いねー、シャリシャリしてるけど、放っておいても解けるよ」
と、ノムルがシャーベールの感想を述べた。
「了解しました。ありがとうございます」
「どーいたしましてー」
二人にとってはいつものやり取りだが、見ているほうは意味が分からない。表情を出さないように教育されているはずの従者たちの眉間が、わずかに震えた。
王族であるリリアンヌ王女だけは、納得したように表情を緩める。
リリアンヌ王女の食事もまた、彼女が口を付ける前に毒見係が一通り口にしてから、食べることを許されるのだ。
しかし、器に盛られたシャーベールは、次々とノムル・クラウの口の中へと消えていく。
ユキノという小さな子供は、一つも食べようとしない。
微笑を浮かべていたリリアンヌ王女も、無表情を装っていた従者達も、徐々に表情が強張っていった。混乱する思考に引きずられそうになる表情筋を、必死に抑える。
呆けた顔をしたら負けだ。眉をひそめたら、それこそ色々と問題になりかねない。
彼女たちは無言で、この戦いに挑み続けていた。
「はーい」
雪乃を抱き上げてご機嫌なノムルは、ドットに従って進んで行く。心身ともに疲れた雪乃は、無駄な抵抗は諦めてされるがままだ。
重厚な扉の一つの前で、ドットは足を止める。扉の左右には騎士が控えていた。
「ノムル・クラウ様と御令嬢、ユキノ様をお連れしました」
「……」
雪乃は近くにあったノムルの顔を、冷めた目で見る。どんどん外堀から埋められていっている気がする。
へらりと笑むノムルに、額に位置する枝がピキリと音を立てた。だが動揺を見せたら負けだ。この変態は、余計に喜ぶに決まっている。
無視を決め込んだ雪乃は、扉の向こうへと意識を向けた。
騎士によって扉が開けられ、ドットはノムルと雪乃に、中へ入るよう促がす。
ぐいっとノムルを押した雪乃は、わずかに緩んだ腕から脱出し、絨毯の上に着地する。そのまま逃げるように部屋の中へと入った。
「あら、小さなお姫様なのね」
鈴のような声とは、こういう声なのだろうという、濁りのない綺麗な声が雪乃の耳に届く。
「お初にお目にかかります。至高にして孤高の魔法使いと名高き、ノムル・クラウ様。そしてユキノ・クラウ様。アイス国が王女、リリアンヌ・アイスにございます」
少女は水色のドレスの裾をつまみ、綺麗な淑女の礼を見せた。
銀色の長いストレートロングの髪は、一本一本がきらめいて、繊細な氷の糸のようだ。瞳は色素の薄い白藍色だが、冷たさは感じさせず、魅入られそうなほどに美しい。
絵画か彫刻を思わせる、芸術的な美少女だ。
雪乃はほうっと嘆息を漏らし、しばらく見つめていた。見惚れていたせいで、一つ訂正を忘れてしまったのだが。
「……ちゃん、……ユキノちゃん?」
「あ、はい。なんでしょう?」
ノムルに突付かれて顔を上げると、なんだか心配そうに見ている。
「どこか調子でも悪いの?」
「いいえ?」
「本当に?」
雪乃はぽてんと幹を傾げて考える。
どうやらぼうっとしていたせいで、体調が悪くなってしまったのかと誤解させてしまったようだ。
「大丈夫です。お姫様のあまりの美しさに、ぼーっとしてしまっただけですから」
「まあ!」
リリアンヌ王女は口元に手を当て、嬉しそうに驚いたような声を出す。側に控えていた侍女達も、目を大きくして雪乃を見た。それから、くすくすと笑い出す。
「ありがとうございます、ユキノ様」
にこりとほほ笑むリリアンヌ王女から、目もくらむほどのキラキラオーラが放出される。
これは落ちない男はいないだろうと、雪乃は確信した。
「さっそくだけどさー、君が乗る馬車を護ればよいんだよねー?」
「……」
いた。身近に一人いた。
この美しさを理解できぬ、野暮なおっさんが。
雪乃は氷よりも冷え切った目を、ノムルに注いだ。
「え? なんでそんな目で見るの?」
困惑している様子を見るに、まったくの無自覚であったようだ。
呆れたように息を吐き出しながら首を横に振った雪乃は、リリアンヌ王女に意識を戻す。
「ちょっ、ユキノちゃん?! なんか冷たい! なんで?」
「気にしないでください。美的感覚の齟齬です」
「えー?」
ノムルは納得できないとばかりに、唇を尖らせてぶーぶー言っている。比喩ではなく、「ぶーぶー」と言っていた。
アイス国の一向は、ユキノとノムルのやり取りに、きょとんっと目を丸くしている。
「この人のことは御気になさらないでください。ご挨拶が遅れましたが、今回の依頼を受けましたノムル・クラウと、弟子の雪乃です。道中よろしくお願いいたします」
ぺこりと幹を曲げて挨拶をする小さな子供に、リリアンヌ王女は目尻を下げる。
「こちらへどうぞ、ノムル様、ユキノ様」
「ありがとうございます」
リリアンヌ王女は雪乃とノムルを、ソファへと誘った。
御礼を述べて歩きだした雪乃は、リリアンヌ王女とノムルが座るのを待ってから、ソファに座る。
間に置かれた小さなテーブルには、色取り取りの丸いお菓子を盛った、ガラスの器が置かれていた。器には、雪の結晶を模した見事な細工が施されている。
飴玉のような半透明のお菓子を、雪乃は興味深く見つめる。
お姫様の前だろうと、やはり雪乃は食べ物が第一なようだ。
くすりと笑ったリリアンヌ王女に顔を上げれば、彼女は優しくほほ笑む。
「遠慮なくどうぞ。わが国伝統のお菓子、シャーベールよ」
「……」
雪乃は固まった。
きっと語源は『喋る』でも『シャベル』でもないはずだ。おそらく、『シャーベット』と『ボール』の組み合わせだと思われる。そう思いたい。
「へえ、アイス国のお菓子かー」
ノムルも興味深そうに眺めた後、赤いシャーベールを指で摘まんで口に放り込んだ。その様子を、雪乃はじっと観察する。
真剣な眼差しを向けられているノムルはといえば、シャクシャクと噛み砕いて飲み込んだ後、二つ目を口に放り込む。今度は薄緑色だ。
一つ目と違い、ノムルは噛み砕くことなく、味わっている。
雪乃はじいっと、じいーっと、じいいーーーーっと、ノムルを見つめる。それはしっかり、穴が空くほど。
けれど我が道をどんどん進むノムルは、気にしない。というより、たぶん気付いていない。
見ているリリアンヌ王女たちのほうが耐えかねて、雪乃にシャーベールを勧めた。
「ユキノ様もどうぞ」
「いえ、私のことは御気になさらないでください」
体の向きをリリアンヌ王女の正面に据えた雪乃は、両枝先を膝の上で重ね、背筋を伸ばしたまま奇麗に幹を曲げる。
リリアンヌ王女も、部屋にいる従者達も、困惑したように雪乃を見つめる。
しばらくして、
「果物だねえ。砕いて凍らせてる。甘いねー、シャリシャリしてるけど、放っておいても解けるよ」
と、ノムルがシャーベールの感想を述べた。
「了解しました。ありがとうございます」
「どーいたしましてー」
二人にとってはいつものやり取りだが、見ているほうは意味が分からない。表情を出さないように教育されているはずの従者たちの眉間が、わずかに震えた。
王族であるリリアンヌ王女だけは、納得したように表情を緩める。
リリアンヌ王女の食事もまた、彼女が口を付ける前に毒見係が一通り口にしてから、食べることを許されるのだ。
しかし、器に盛られたシャーベールは、次々とノムル・クラウの口の中へと消えていく。
ユキノという小さな子供は、一つも食べようとしない。
微笑を浮かべていたリリアンヌ王女も、無表情を装っていた従者達も、徐々に表情が強張っていった。混乱する思考に引きずられそうになる表情筋を、必死に抑える。
呆けた顔をしたら負けだ。眉をひそめたら、それこそ色々と問題になりかねない。
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