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ラジン国編
164.一緒にいてよ?
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「ちょっと、ユキノちゃん?!」
「ああ、いえ。少し冷静になってみただけです」
「冷静になったらそんな答えになるの? おとーさんと離れたいの? 親離れ? え? まだ嫁にはやらん!」
「何の話ですか?!」
とつぜん飛躍したノムルを振り仰ぐと、へらりと笑っていた。
ぽんぽんと、頭に手を置かれる。
「勘違いしているみたいだけど、薬ができたら、俺はここに留まるつもりはないよ? 色々あって、ここが俺の本拠地になってるし、便利だから使ってるけど、出来れば関わりたくないからねー」
どこか悲しそうな瞳を揺らし、雪乃を抱きしめた。
「だからさ、一緒にいてよ?」
いつも余裕をかましている声が、泣いているように聞こえた。
雪乃は短い枝を伸ばして、ノムルを抱きしめる。枝先は脇腹をようやく回った程度だが。
「分かりました。でも、」
と、雪乃は顔を上げる。
「セクハラは禁止です」
きらりんっと、葉が光る。
瞬いたノムルは、へらりと笑う。
「えー?」
「えー? じゃありません!」
頬葉を膨らました雪乃を指で突っつき、ノムルは楽しそうに笑う。雪乃もくすくすと笑い出した。
ここでお別れだと思っていたノムルとの旅は、まだまだ続くようだ。
「また大変な旅になりそうです」
「えー?」
「ぴー?」
ひとしきり笑いあうと、ノムルは杖を手に取った。いつものように、指で杖を叩くと、壁が開いてクローゼットが現れた。
「おおー。隠し扉」
ぴょこんっと膝から飛び降りた雪乃を追うように、ノムルもクローゼットへ進む。
中には白いローブが何枚も掛けられていた。縁には金糸や銀糸、虹色に輝く糸を使った、帯が付いている。
王宮魔道師とか、聖女様とか、そういう人が来ていそうな、豪華なローブだ。
しゃがみ込んだノムルは、雪乃からローブを脱がす。そしてクローゼットから取り出した一着を重ねると、杖の先で軽く叩いた。
白いローブが、みるみる縮小していく。
「はい、ユキノちゃん。ここではこれを着ておきなよ」
「私には、分不相応な気がするのですが?」
「だいじょーぶ。『俺のものだから手え出すなよ』って、印だから」
物騒な理由だった。
雪乃は視線を逸らすが、ノムルも白いローブを身につける。
「ほらほら、早く着てごらん? おとーさんとお揃いだよー?」
渡されたローブは、絹に似た艶と滑らかさを持つ、厚手だが柔らかい生地で仕立てられていた。いつもの麻に似た生地とは違う、高級感が漂っている。
見つめたまま躊躇っている雪乃だが、深緑のローブは奪われてしまった。これを着るしかないだろう。
仕方なく、雪乃は白いローブに袖を通す。
「葉が目立ちませんか?」
「うーん、ちょっと見えるかな? いつもより強めに、視覚操作の魔法を掛けとくね」
「お願いします」
深緑色のローブは、少しくらい葉が覗いていても、飾りか何かのように認識してもらえるが、白いローブでは誤魔化しにくい。
ノムルの魔法で、顔が見えないようにしてもらう。
着替えを終えると、部屋の出入りに必要な魔力認定も登録してもらい、再びソファに座ってくつろぐ。
お茶を入れてお菓子を……というところで、扉が叩かれた。
「何?」
ノムルが杖を指で突付くと、空中にモニターが現れ、人の顔が映る。
栗色の短い髪の先がくりっと回っている、片眼鏡を着けた男だ。二十代後半辺りだろうか。
『さっそくで申し訳無いのですが、ノムル様に裁定をお願いいたしたいことがありまして』
「えー? ヴォーリオにやらせなよ? どうせ俺がいなければ、あいつがするんでしょう?」
『しかし、やはりノムル様に……』
「めんどー」
『ですが……』
「嫌」
『お願いでございます……』
やり取りを見ていた雪乃は、呆れ眼をノムルに注ぐ。なんだかモニターの向こうの人が、気の毒になってきた。
「ノムルさん、少しはお仕事もしないとだめですよ?」
「えー? やだよー。めんどーだし、何よりユキノちゃんと離れるなんて」
「いや、いつもほぼ一日中一緒なんですから、少しくらい離れても良いと思いますよ? というか、たまには別行動も必要かもしれません」
「ちょっ、ユキノちゃん?! おとーさんは寂しいよ?」
考えてみれば、ヤナの町を発ってからここまで、たまにノムルが宿に泊まった夜を除いて、常に共に行動している。
いや、途中からは宿も取らずに、雪乃の根元で眠っていた。
友人だろうと家族だろうと、これは異常ではないだろうか?
「ノムルさん、お仕事、頑張ってきてください」
「ユキノちゃん?」
「働くお父さんって、格好良いですよね。部下に慕われるお父さんって、憧れます」
「……。よしディラン、ちゃっちゃと仕事を終わらせるぞ」
『え? あ、はい』
モニターがぷつりと消えて、ノムルは立ち上がった。
きらりと目元に星を輝かせると、
「ユキノちゃん、格好良いおとーさんは、お仕事をしてくるね。良い子で待ってるんだよ?」
「行ってらっしゃい。頑張ってくださいね」
「はーい」
ご機嫌で部屋を出て行った。
戸口から見えたディランという青年は、口を半開きにして、あ然とした表情でノムルを目で追っている。
「ノムル様が素直に仕事を……」
何度も首を傾げて化け物でも見ている様子は、滑稽に見える。しかしそれだけ彼が苦労しているのだと考えると、雪乃は心の内でディランに同情の涙を捧げた。
呆然としていたディランは、慌ててノムルを追いかけていった。
苦笑をこぼした雪乃は、ノムルを見送ってから、ソファに戻る。ソファで丸まっているぴー助をなでながら、薬草図鑑を開いた。
融筋病の調合レシピを、今一度確認する。
薬草から作った薬だけで、大抵の病気を治せるこの世界は、やはりファンタジーな世界だと雪乃は感じる。
それでも苦しみから救えるのであれば、良いことであろうと、面倒な思考は切り捨てた。
ノムルが部屋を出ていってから、三十分も経たない頃、再び扉が叩かれた。
出て良いものか悩みながら、雪乃は扉の手前まで進む。
「すみません、ノムルさんは留守です」
扉の向こうに声を掛けると、ノックが止んだ。
「知っているわ。ユキノとかいう子供に用があるのよ」
返ってきた声は、女の子の声だった。雪乃は少し考えた後、扉を開けた。
「ちょっと! 何であなたがそのローブを着ているのよ?!」
開けた途端に、詰め寄られた。
「ああ、いえ。少し冷静になってみただけです」
「冷静になったらそんな答えになるの? おとーさんと離れたいの? 親離れ? え? まだ嫁にはやらん!」
「何の話ですか?!」
とつぜん飛躍したノムルを振り仰ぐと、へらりと笑っていた。
ぽんぽんと、頭に手を置かれる。
「勘違いしているみたいだけど、薬ができたら、俺はここに留まるつもりはないよ? 色々あって、ここが俺の本拠地になってるし、便利だから使ってるけど、出来れば関わりたくないからねー」
どこか悲しそうな瞳を揺らし、雪乃を抱きしめた。
「だからさ、一緒にいてよ?」
いつも余裕をかましている声が、泣いているように聞こえた。
雪乃は短い枝を伸ばして、ノムルを抱きしめる。枝先は脇腹をようやく回った程度だが。
「分かりました。でも、」
と、雪乃は顔を上げる。
「セクハラは禁止です」
きらりんっと、葉が光る。
瞬いたノムルは、へらりと笑う。
「えー?」
「えー? じゃありません!」
頬葉を膨らました雪乃を指で突っつき、ノムルは楽しそうに笑う。雪乃もくすくすと笑い出した。
ここでお別れだと思っていたノムルとの旅は、まだまだ続くようだ。
「また大変な旅になりそうです」
「えー?」
「ぴー?」
ひとしきり笑いあうと、ノムルは杖を手に取った。いつものように、指で杖を叩くと、壁が開いてクローゼットが現れた。
「おおー。隠し扉」
ぴょこんっと膝から飛び降りた雪乃を追うように、ノムルもクローゼットへ進む。
中には白いローブが何枚も掛けられていた。縁には金糸や銀糸、虹色に輝く糸を使った、帯が付いている。
王宮魔道師とか、聖女様とか、そういう人が来ていそうな、豪華なローブだ。
しゃがみ込んだノムルは、雪乃からローブを脱がす。そしてクローゼットから取り出した一着を重ねると、杖の先で軽く叩いた。
白いローブが、みるみる縮小していく。
「はい、ユキノちゃん。ここではこれを着ておきなよ」
「私には、分不相応な気がするのですが?」
「だいじょーぶ。『俺のものだから手え出すなよ』って、印だから」
物騒な理由だった。
雪乃は視線を逸らすが、ノムルも白いローブを身につける。
「ほらほら、早く着てごらん? おとーさんとお揃いだよー?」
渡されたローブは、絹に似た艶と滑らかさを持つ、厚手だが柔らかい生地で仕立てられていた。いつもの麻に似た生地とは違う、高級感が漂っている。
見つめたまま躊躇っている雪乃だが、深緑のローブは奪われてしまった。これを着るしかないだろう。
仕方なく、雪乃は白いローブに袖を通す。
「葉が目立ちませんか?」
「うーん、ちょっと見えるかな? いつもより強めに、視覚操作の魔法を掛けとくね」
「お願いします」
深緑色のローブは、少しくらい葉が覗いていても、飾りか何かのように認識してもらえるが、白いローブでは誤魔化しにくい。
ノムルの魔法で、顔が見えないようにしてもらう。
着替えを終えると、部屋の出入りに必要な魔力認定も登録してもらい、再びソファに座ってくつろぐ。
お茶を入れてお菓子を……というところで、扉が叩かれた。
「何?」
ノムルが杖を指で突付くと、空中にモニターが現れ、人の顔が映る。
栗色の短い髪の先がくりっと回っている、片眼鏡を着けた男だ。二十代後半辺りだろうか。
『さっそくで申し訳無いのですが、ノムル様に裁定をお願いいたしたいことがありまして』
「えー? ヴォーリオにやらせなよ? どうせ俺がいなければ、あいつがするんでしょう?」
『しかし、やはりノムル様に……』
「めんどー」
『ですが……』
「嫌」
『お願いでございます……』
やり取りを見ていた雪乃は、呆れ眼をノムルに注ぐ。なんだかモニターの向こうの人が、気の毒になってきた。
「ノムルさん、少しはお仕事もしないとだめですよ?」
「えー? やだよー。めんどーだし、何よりユキノちゃんと離れるなんて」
「いや、いつもほぼ一日中一緒なんですから、少しくらい離れても良いと思いますよ? というか、たまには別行動も必要かもしれません」
「ちょっ、ユキノちゃん?! おとーさんは寂しいよ?」
考えてみれば、ヤナの町を発ってからここまで、たまにノムルが宿に泊まった夜を除いて、常に共に行動している。
いや、途中からは宿も取らずに、雪乃の根元で眠っていた。
友人だろうと家族だろうと、これは異常ではないだろうか?
「ノムルさん、お仕事、頑張ってきてください」
「ユキノちゃん?」
「働くお父さんって、格好良いですよね。部下に慕われるお父さんって、憧れます」
「……。よしディラン、ちゃっちゃと仕事を終わらせるぞ」
『え? あ、はい』
モニターがぷつりと消えて、ノムルは立ち上がった。
きらりと目元に星を輝かせると、
「ユキノちゃん、格好良いおとーさんは、お仕事をしてくるね。良い子で待ってるんだよ?」
「行ってらっしゃい。頑張ってくださいね」
「はーい」
ご機嫌で部屋を出て行った。
戸口から見えたディランという青年は、口を半開きにして、あ然とした表情でノムルを目で追っている。
「ノムル様が素直に仕事を……」
何度も首を傾げて化け物でも見ている様子は、滑稽に見える。しかしそれだけ彼が苦労しているのだと考えると、雪乃は心の内でディランに同情の涙を捧げた。
呆然としていたディランは、慌ててノムルを追いかけていった。
苦笑をこぼした雪乃は、ノムルを見送ってから、ソファに戻る。ソファで丸まっているぴー助をなでながら、薬草図鑑を開いた。
融筋病の調合レシピを、今一度確認する。
薬草から作った薬だけで、大抵の病気を治せるこの世界は、やはりファンタジーな世界だと雪乃は感じる。
それでも苦しみから救えるのであれば、良いことであろうと、面倒な思考は切り捨てた。
ノムルが部屋を出ていってから、三十分も経たない頃、再び扉が叩かれた。
出て良いものか悩みながら、雪乃は扉の手前まで進む。
「すみません、ノムルさんは留守です」
扉の向こうに声を掛けると、ノックが止んだ。
「知っているわ。ユキノとかいう子供に用があるのよ」
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