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ゴリン国編2
235.緊急会議を始めさせていただきます
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「というわけで、緊急会議を始めさせていただきます」
何が「というわけ」なのか分からないが、雪乃議長は大きくした地図を広げると、開会宣言をした。
参加者はカイ、ムダイ、ドイン、ヒツジー、突撃参加のナイオネルだ。
ムダイは復活した雪乃に治療を施されて、包帯男から赤い冒険者に戻っている。
ナイオネルがどこで情報を得てきたのかは分からない。雪乃が開会宣言をした途端、扉が勢い良く開き、突入してきた。
「ゆ、ユキノちゃん、おとーさんは決して、ユキノちゃんを見間違えたわけじゃないんだよ? マンドラゴラに騙されて。おとーさんのこと、大好きだよね?」
スライムおじさんは、ぷるぷると震えながら、地面に接している部分を延ばす。
「そういえばカイ君って、遺跡で雪乃ちゃんが偽者だって、すぐに見抜いたよね? ノムルさんはまったく気付かなかったのに」
「ごふっ!」
瀕死のスライムおじさんに、勇者ムダイが容赦の無い一撃を加えた。
「外見や匂いは雪乃だったが、あれは別人だとすぐに分かるだろう?」
「外見が同じでも中身が変わったら気付くなんて、凄いね。カイ君の方が、雪乃ちゃんの保護者にぴったりなんじゃない?」
「ごふうっ! む、ムダイ、俺に何の恨みが……」
スライムおじさんは、もはや虫の息だ。それでも生命維持にはまったく支障がなさそうなので、雪乃は会議を進める。
「えー、ワタクシ雪乃は、世界中の薬草を集めることを目標に旅をしております。しかし本日、重大な問題に直面しました」
きらーんっと、雪乃は目元を光らせた。
男たちからも緊張が伝わってくる。
「実は、その地にしか自生しない薬草のある地点を回り、それから他の薬草を採取する予定でした。ですが、それでは要領が悪いことに気付いてしまったのです!」
深刻な声で伝える、小さな少女。
真剣に聞いていた男たちは、目が点になった。
「雪乃ちゃんってさ、大人なのかと思ったら、妙なところで抜けてるよね」
ムダイの発言に、雪乃は驚愕に視界を丸く広げて、じいっと見つめた後、
「ムダイさん、会議中の発言は挙手をしてからと、教わりませんでしたか?」
と、注意した。
「それ会議じゃなくて学級会でしょ?」
「なんと?! 大人の世界では違うとでも? ……しかし国会議員も手を挙げていたはず?」
しきりに幹を傾げる雪乃だが、男たちは微笑ましく思いながらも、困ったように笑っている。
ムダイの言う『ガッキューカイ』や、雪乃が口にした『コッカイギイン』が何かは引っかかったが、特に重要なことではないのだろうと、誰も口を挟まなかった。
「それよりドクター・ユキノ。この地図に書き込まれている点が、薬草の自生地であることは察せられるのだが、どの点が何の薬草か分からなければ、我々も協力しにくいのだが?」
言われて雪乃は地図を見つめる。
点が集中していて、塗りつぶした状態になっていた。
雪乃が意識すれば、どの点がどの薬草か表示されるのだが、常に表示していると、文字が重なって読めなくなる。しかも表示される文字は、この世界の住人には読めない日本語だ。
「ユキノさん、薬草名と、それぞれの自生地を教えていただけませんでしょうか? 一覧にすれば、最適なルートを導き出すことも可能だと思うのですが」
執事ヒツジーの申し出に、雪乃は希望を見い出したとばかりに目元の葉を輝かせる。
「よろしくお願いいたします」
「かしこまりました。ところでこの情報に関しまして、秘匿の必要はございますでしょうか?」
雪乃は幹を傾げて考える。
貴重な薬草の中には、人間が知らない場所もあるかもしれない。乱獲されることで、絶滅や激減の危機に陥る可能性も、無いとは言えないだろう。
実際に、地球では珍しい植物として発見されたために、採取されたり、見物客が多く訪れて環境が変わり、育たなくなってしまった植物もある。
ちらりと、雪乃はカイとムダイを見た。しかし答えたのはドインだった。
「とりあえずは、内部の口の堅いやつに聞き取らせたほうが良いだろう。さっきのマンドラゴラといい、得体の知れない魔植物といい、色々と、まあ」
眉間に指を押し当て、ドインはうつむいてしまった。ヒツジーもそうっと視線を斜め下へと、雪乃から遠ざけた。
どうやら魔ムッセリーの記憶が蘇ってしまったらしい。
「なんてえ存在を……。とりあえず、この子に関する情報は、基本的に秘匿する方向にしておいたほうが良いだろう」
「承知いたしました」
主従の心は繋がっているようだ。他の面々も、なぜか頷いているが。
「しかし薬草を採取してどうするのだね? 栽培するのかね? 苗が欲しいのなら、幾種か分けてあげても良いが?」
ナイオネルが提案してきた。医者である彼は、薬草の栽培もしているようだ。
ここで未採取の薬草を手に入れられれば、かなりの収穫になるだろう。
雪乃は心引かれた。その一方で、栽培種が吸収できるのだろうかという疑問が浮かぶ。
ランゴも食用として栽培されていた実は吸収できず、原種に限定されていたのだ。
「試すだけ試してみたらどうだ?」
ここで吸収できれば、ヒイヅル国に行った際に薬草を吸収できるか、はっきりするだろう。
「そうですね。ですが」
カイの言葉に承諾しかけた雪乃の胸に、一抹の不安が浮かぶ。
吸収している姿や、空から降ってくるカードを見られたら、怪しまれないだろうか?
悩む雪乃の様子をどう感じ取ったのか、ナイオネルは続けて提案してきた。
「心配ならば、ドクター・ユキノに関わる内容は許可なく他者に話さないよう、誓約書を交わそう。そうすれば医者としての話も、遠慮なくできるようになるだろう。薬草の分布の表作りも、私が協力してもいい」
ナイオネルの目が爛々と輝いている。薬草の自生地だけでなく、その他の話も聞きたいと、目が口以上に訴えていた。
とりあえず雪乃は、
「薬師です」
と、訂正しておいた。
「では契約を交わそう。これでドクター・ユキノは、私に何でも話せるようになる。私は話の内容を、誰にも言えないのだからね」
「紙に書いて伝えるなどの、抜け道はないのでしょうか?」
会話として成り立っていないことなど何のその。のりのりで魔術式の書かれた契約書を取り出したナイオネルに、雪乃は冷静に問う。
なぜか部屋の中に沈黙が走った。
「うっ、うっ、ユキノちゃん……」
静かになったせいで、スライムおじさんの鳴き声が聞こえてくる。
何が「というわけ」なのか分からないが、雪乃議長は大きくした地図を広げると、開会宣言をした。
参加者はカイ、ムダイ、ドイン、ヒツジー、突撃参加のナイオネルだ。
ムダイは復活した雪乃に治療を施されて、包帯男から赤い冒険者に戻っている。
ナイオネルがどこで情報を得てきたのかは分からない。雪乃が開会宣言をした途端、扉が勢い良く開き、突入してきた。
「ゆ、ユキノちゃん、おとーさんは決して、ユキノちゃんを見間違えたわけじゃないんだよ? マンドラゴラに騙されて。おとーさんのこと、大好きだよね?」
スライムおじさんは、ぷるぷると震えながら、地面に接している部分を延ばす。
「そういえばカイ君って、遺跡で雪乃ちゃんが偽者だって、すぐに見抜いたよね? ノムルさんはまったく気付かなかったのに」
「ごふっ!」
瀕死のスライムおじさんに、勇者ムダイが容赦の無い一撃を加えた。
「外見や匂いは雪乃だったが、あれは別人だとすぐに分かるだろう?」
「外見が同じでも中身が変わったら気付くなんて、凄いね。カイ君の方が、雪乃ちゃんの保護者にぴったりなんじゃない?」
「ごふうっ! む、ムダイ、俺に何の恨みが……」
スライムおじさんは、もはや虫の息だ。それでも生命維持にはまったく支障がなさそうなので、雪乃は会議を進める。
「えー、ワタクシ雪乃は、世界中の薬草を集めることを目標に旅をしております。しかし本日、重大な問題に直面しました」
きらーんっと、雪乃は目元を光らせた。
男たちからも緊張が伝わってくる。
「実は、その地にしか自生しない薬草のある地点を回り、それから他の薬草を採取する予定でした。ですが、それでは要領が悪いことに気付いてしまったのです!」
深刻な声で伝える、小さな少女。
真剣に聞いていた男たちは、目が点になった。
「雪乃ちゃんってさ、大人なのかと思ったら、妙なところで抜けてるよね」
ムダイの発言に、雪乃は驚愕に視界を丸く広げて、じいっと見つめた後、
「ムダイさん、会議中の発言は挙手をしてからと、教わりませんでしたか?」
と、注意した。
「それ会議じゃなくて学級会でしょ?」
「なんと?! 大人の世界では違うとでも? ……しかし国会議員も手を挙げていたはず?」
しきりに幹を傾げる雪乃だが、男たちは微笑ましく思いながらも、困ったように笑っている。
ムダイの言う『ガッキューカイ』や、雪乃が口にした『コッカイギイン』が何かは引っかかったが、特に重要なことではないのだろうと、誰も口を挟まなかった。
「それよりドクター・ユキノ。この地図に書き込まれている点が、薬草の自生地であることは察せられるのだが、どの点が何の薬草か分からなければ、我々も協力しにくいのだが?」
言われて雪乃は地図を見つめる。
点が集中していて、塗りつぶした状態になっていた。
雪乃が意識すれば、どの点がどの薬草か表示されるのだが、常に表示していると、文字が重なって読めなくなる。しかも表示される文字は、この世界の住人には読めない日本語だ。
「ユキノさん、薬草名と、それぞれの自生地を教えていただけませんでしょうか? 一覧にすれば、最適なルートを導き出すことも可能だと思うのですが」
執事ヒツジーの申し出に、雪乃は希望を見い出したとばかりに目元の葉を輝かせる。
「よろしくお願いいたします」
「かしこまりました。ところでこの情報に関しまして、秘匿の必要はございますでしょうか?」
雪乃は幹を傾げて考える。
貴重な薬草の中には、人間が知らない場所もあるかもしれない。乱獲されることで、絶滅や激減の危機に陥る可能性も、無いとは言えないだろう。
実際に、地球では珍しい植物として発見されたために、採取されたり、見物客が多く訪れて環境が変わり、育たなくなってしまった植物もある。
ちらりと、雪乃はカイとムダイを見た。しかし答えたのはドインだった。
「とりあえずは、内部の口の堅いやつに聞き取らせたほうが良いだろう。さっきのマンドラゴラといい、得体の知れない魔植物といい、色々と、まあ」
眉間に指を押し当て、ドインはうつむいてしまった。ヒツジーもそうっと視線を斜め下へと、雪乃から遠ざけた。
どうやら魔ムッセリーの記憶が蘇ってしまったらしい。
「なんてえ存在を……。とりあえず、この子に関する情報は、基本的に秘匿する方向にしておいたほうが良いだろう」
「承知いたしました」
主従の心は繋がっているようだ。他の面々も、なぜか頷いているが。
「しかし薬草を採取してどうするのだね? 栽培するのかね? 苗が欲しいのなら、幾種か分けてあげても良いが?」
ナイオネルが提案してきた。医者である彼は、薬草の栽培もしているようだ。
ここで未採取の薬草を手に入れられれば、かなりの収穫になるだろう。
雪乃は心引かれた。その一方で、栽培種が吸収できるのだろうかという疑問が浮かぶ。
ランゴも食用として栽培されていた実は吸収できず、原種に限定されていたのだ。
「試すだけ試してみたらどうだ?」
ここで吸収できれば、ヒイヅル国に行った際に薬草を吸収できるか、はっきりするだろう。
「そうですね。ですが」
カイの言葉に承諾しかけた雪乃の胸に、一抹の不安が浮かぶ。
吸収している姿や、空から降ってくるカードを見られたら、怪しまれないだろうか?
悩む雪乃の様子をどう感じ取ったのか、ナイオネルは続けて提案してきた。
「心配ならば、ドクター・ユキノに関わる内容は許可なく他者に話さないよう、誓約書を交わそう。そうすれば医者としての話も、遠慮なくできるようになるだろう。薬草の分布の表作りも、私が協力してもいい」
ナイオネルの目が爛々と輝いている。薬草の自生地だけでなく、その他の話も聞きたいと、目が口以上に訴えていた。
とりあえず雪乃は、
「薬師です」
と、訂正しておいた。
「では契約を交わそう。これでドクター・ユキノは、私に何でも話せるようになる。私は話の内容を、誰にも言えないのだからね」
「紙に書いて伝えるなどの、抜け道はないのでしょうか?」
会話として成り立っていないことなど何のその。のりのりで魔術式の書かれた契約書を取り出したナイオネルに、雪乃は冷静に問う。
なぜか部屋の中に沈黙が走った。
「うっ、うっ、ユキノちゃん……」
静かになったせいで、スライムおじさんの鳴き声が聞こえてくる。
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