『種族:樹人』を選んでみたら 異世界に放り出されたけれど何とかやってます

しろ卯

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ゴリン国編2

245.薬草園に行くぞ

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「ドクター・ユキノ、もしかして、マンドラゴラの繁殖にも成功しているのかね?」
「薬師です」

 雪乃は訂正を入れることで誤魔化した。これ以上、自分の希少価値を上げるつもりはない。
 ノムルも察したのだろう。話題を切り上げさせる。

「まあいいや。ナイオネルが来たなら、おっさんの許可は要らないな。薬草園に行くぞ」
「おい。お前はもう少し俺を敬え」

 呆れ眼を向けているドインを残して、雪乃たちは薬草園へと向かった。

「さあ、マンドラゴラたち、お願いしますね」

 昨日と同様に、雪乃はローブの袖からマンドラゴラたちを出していく。
 その様子を、ナイオネルは穴が開きそうなほどに凝視していた。

「どこに隠していたのだね?」

 今さらながら失態に気付いた雪乃は、視線を逸らして言い訳を考える。

「ええっと、ローブの下に色々と」
「なるほど」

 自分の体から発生させているとは、言えない雪乃だった。
 マンドラゴラたちは薬草園を駆けていく。森より狭い範囲に生える薬草を回収するのに、そう時間は掛からない。
 日が暮れる前に、この薬草園で勝手に繁殖していると思われる薬草は、粗方回収できた。

 そして翌日、一行はローズマリナの店を訪れた。店の扉には、閉店セールと突然の閉店を詫びる内容の紙が貼ってある。

「ごたごたしていて、ごめんなさい。まだ準備の途中なの」

 ネーデルまで護衛予定のムダイに、ローズマリナは申し訳なさそうに謝った。
 店の中を埋め尽くしていた商品は減り、棚は空きだらけだ。今も女性冒険者達が次々となだれ込んでは、商品を買いあさっている。

「この店はどうするんだ?」

 意外なことに、最も興味を持たなさそうなノムルが尋ねた。

「委託しようと思っていたのだけれど、ルモンで作った商品をゴリンまで送るのは大変でしょう? 結局、店仕舞いすることにしたわ」

 寂しげに、ローズマリナは店内を見回す。
 公爵家の令嬢という身分を捨て、身一つで立ち上げた店だ。愛着も思い出もあるだろう。
 目には涙が浮かんでいた。

「じゃあ、全部持っていけば良いんだな?」
「そうしたいけれど、あまり荷物が多くては運べないわ。馬車一台に収まるようにしなきゃ」

 切なげにローズマリナが微笑むと、ノムルは店内にいる人間に向かって声を張り上げる。

「んじゃあ全員、店から出てー。十秒以内に出ないと、命の保証はしないからねー」

 ぎょっとして全員がノムルへと振り向く。

「じゅー」

 誰の意見も聞くことなく、カウントダウンは始まった。

「きゅー」
「皆さん、早く脱出を! この人は本気でやりかねないですから!」

 我に返ったムダイが、すぐに避難誘導を始める。

「押さないでくださーい。大丈夫ですよー」

 雪乃もなぜか、避難誘導を手伝う。
 さすがは災害大国出身の二人組というべきか、何の打ち合わせもせずとも、自然に誘導していく。

「さん」

 ほとんどの客が外へと避難できた。残されたのは、雪乃たちとローズマリナだけだ。

「にい」

 雪乃たちも外へと避難する。
 外には騒動に気付いて集まってきた冒険者達が、野次馬と化していた。

「いち。んじゃあ、回収」

 ノムルが杖で地面をとんっと軽く突く。次の瞬間、店の前に集まっていた客や野次馬たちは、目を剥いて、揃って驚愕の声を発した。

「「「はあっ?!」」」

 ローズマリナの店があった場所には、土の剥き出た空き地が広がっていた。

「これで荷物は回収したよー。さ、出発しよーねー」

 怪奇現象を引き起こした魔法使いは、何でもないことのように歩きだす。
 彼の奇行に慣れきってしまった雪乃たちは、呆れながらも付いて行く。
 状況が理解できないローズマリナも、訳の分からないまま操り人形のように、彼らに付いて行くしかなかった。
 そして取り残された野次馬たちはというと、

「え? 何が起こった?」
「魔法? 爆破? ここ最近、この町おかしくないか?」
「ああ、超巨大なデンゴラコンが発生したり、魔物というより化けも……うっ」

 連日のように繰り広げられる騒動に、困惑していた。
 うっかり魔ムッセリーでも思い出したのか、顔を真っ青にして口を抑えている冒険者もいるが。
 一方、店の商品を持ったまま逃げ出した女性冒険者たちは、

「これ、貰って良いのかしら?」
「ラッキー」
「でも、ララクール様が知ったら」 

 一度は喜んだ彼女たちだが、誰かが漏らした呟きに、その喜びが消え去った。
 のもわずかな間。

「でもお店はないわ。店長は変な魔法使いに連れていかれたし」
「つまり、御代をお支払できる相手は、ララクール様だけ」
「ララクール様にお会いする理由ができたのね!」

 頬を朱に染め、目をハートにして、一斉にどこかへ駆け出した。おそらく騎士団の詰め所なり鍛錬場なりだろう。

「ずるいわ! 私にもララクール様とお会いできるアイテムを!」

 一部で女の戦いが繰り広げられているが。
 そんな女性冒険者たちから、事の次第を聞いたララクールが慌てて駆けつけたときには、彼女たちの説明どおり、ローズマリナの店があった場所は空き地と化していて、店は跡形もなくなっていた。

「そ、そんな……」

 ララクールは走る。
 冒険者ギルド本部へと、駆け込んだ。

「ローズマリナ様、いえ、ムダイ殿はおられますか?」

 受付カウンターへ詰め寄ったララクールに、受付をしていた女性は顔を真っ赤に染めつつも、端末を調べる。

「ええっと、ムダイさんが借りていた部屋は、今朝付けで返却されていますね。依頼を受けたという報告はありません」

 ララクールは目を見開き、天井を仰いだ。
 しかし現実逃避していても事態は改善しないと、気合を入れ直して受付嬢に詰め寄る。

「で、では、ノムル殿、ユキノ殿、カイ殿は?」
「ノムルさん、ユキノさんと仰られる方は、この一年間で部屋を借りた履歴は残っていませんね。カイさんという方は、半月ほど前には部屋を退去されています」
「そ、そんな……。私は置いていかれたのか?」

 受付嬢の無情な言葉に、ララクールは崩れ落ちて膝を突いたのだった。



 その頃、雪乃たちは馬車に揺られていた。
 一刻も早くヒイヅルまで行って、雪乃とカイを引き離したいノムルが、馬車を購入していたのだ。
 御者はカイが務めている。

「カイ君が手綱を操れたから良いものの、後先考えなさ過ぎでしょう?」

 向かい合わせの四人掛けの馬車に座るムダイは、額を押さえて俯いていた。
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