196 / 385
旅路編
248.ユキノちゃんには特別に
しおりを挟む
「遠足……。出てくる単語は小学生なのに、思考が年寄り……」
再びムダイがぶつぶつ言い出したが、雪乃はタイムリミットだ。
地中に根を張り、視界を閉じた。
「料理の準備ができたわ」
ローズマリナの声が掛かり、男たちは一斉に視線を向ける。雪乃はすでに根を張ってしまった。
ノムルは雪乃を隠そうと、杖を握る。
そしてカイは、雪乃のダミーを作り出す。
「マンドラゴラ、ローズマリナ殿に、お前が雪乃に見えるようにするんだ」
「わー!」
了解とばかりにフードから飛び出したマンドラゴラは、歌うように声を響かせた。
一瞬だけとろんっと虚ろな目をしたローズマリナは、
「ふふ。ユキノちゃんには特別に、お子様ランチを作ってみたの。気に入ってもらえると嬉しいのだけど」
「わー」
と、すっかりマンドラゴラを雪乃と認識してしまった。
がっちりと雪乃を障壁で守ってから、男たちは家の中へと入っていく。
机に並んでいた料理は、見た目も味も、高級レストランに負けないほどの極上品だった。
「ナルツと結婚したら、伺ってもいいですか? こんな美味い料理、ナルツだけに食べさせるなんて、もったいないですよ」
「ムダイ様ってば、お上手ね。でもまだ結婚するかは分からないわよ?」
「まず問題ないでしょう? 相思相愛ですから」
「うふふ。ありがとうございます。そうなったら、いつでも遊びにいらして」
ムダイは完全に胃袋を掴まれたようだ。
雪乃のために用意されていた、にゃんこ型オムライスを中心としたお子様ランチは、予想通りというべきか、ノムルの胃袋に収まった。
そして翌朝、目覚めた雪乃は、ムダイの魔法はどうなったのかと、すでに起きていたカイに尋ねた。
「まだ火は出せていない。魔力に触れさせてみたら、何となくは感じ取れたようだが、自分の魔力は分からないようだ」
「魔力が少ないのでしょうか?」
雪乃が問うと、カイは首を左右に振った。
「ノムル殿が言うには、魔力の量は魔法使いの中でも上位に入るほどらしい」
「ほほう。さすがゆう」
言いかけて、雪乃は言葉を切った。
カイが怪訝な顔をして見つめているが、本人の許可なく言ってはいけないだろう。
勇者ムダイは、巧くいけば剣も魔法も使える魔法剣士になれそうだ。
「練習を始めてまだ一日だ。ネーデルに着くまでに火を出せるようになれば、上出来だろう」
「そうなのですか?」
ぽてりと雪乃が幹を傾げれば、カイは頷く。
「ああ。魔法の練習を始めてから初歩の魔法が使えるようになるまでは、才能のある者でも数日、長いともっと掛かる。ムダイ殿の場合は魔力のコントロールからだから、更に掛かるだろう」
雪乃は自分が治癒魔法を習得したときのことを思い出す。
ノムルに教えてもらい始めてから、雪乃が腕の傷を癒せるまでに掛かったのは、一時間と少しほどだった。
間にノムルの食事タイムがあったことを踏まえると、一時間も掛かっていないだろう。
「ノムルさんのことばかり言えないかもしれません」
「ん?」
とうとう雪乃は、自分もちょっと常識外れなのかもしれないと気付いたのだった。
ぼんやり考えている雪乃に、カイがローブを着せ始める。
現実に戻った雪乃は、袖に枝を通していく。その間に、カイがフードを被せてくれた。
「あら、起きてるのは二人だけ? 皆さんも中で寝てくれてよかったのに」
きっちり姿を隠したところで、エプロンを付けたローズマリナが現れた。フリルがたくさん付いた、白いエプロンだ。
「俺たちは外で眠るほうが落ち着く。ムダイ殿とノムル殿は、室内のほうが良いと思うのだが」
と、三人の視線はまだ大の字になって眠っている、魔法使いと赤い男に向かう。ついでにぴー助も白いお腹を仰向けて眠っていた。
ずいぶん無防備だと気になるところだが、最強の種族である竜種は、野生でもこんなふうに寝るのかもしれないと、疑問を放り投げる。
「あの二人を同じ部屋に入れるのは危険すぎると思う。そもそも、女性の家に男を入れるのは問題がある」
「あら、カイ君は紳士ね」
ふふっと笑ったローズマリナは、それ以上の無理強いはしなかった。
馬車の旅の間に、あの二人の危険性は嫌というほど思い知らされている。
「でも雪乃ちゃんは、中で眠ったほうが良かったんじゃないの? 女の子だし、まだ幼いもの」
しゃがみ込んで目線を合わせるローズマリナの表情は、優しげだが雪乃を心配する色が窺える。
雪乃はそうっとカイを見上げた。それからノムルたちの様子を探る。
ノムルやカイが、雪乃の正体が露見しないように協力してくれていることは分かっている。
けれどローズマリナとは、まだ一緒に旅を続ける。隠し続けるのは、お互いに居心地の良いものではないだろう。
逡巡している雪乃に、ローズマリナはにっこりと微笑む。
「さ、朝ごはんの用意ができたわ。お家に入って食べましょう」
立ち上がったローズマリナは、ノムルとムダイに視線を向ける。
「あの二人はどうしましょう?」
「ノムルさんは、寝起きが最悪です」
雪乃のプチ情報に、ローズマリナとカイの答えは決まった。眠る魔王を起こしてはいけない。
家へと戻っていくローズマリナの後を、雪乃とカイは手をつないで付いていく。
「雪乃の思うようにすればいい。無闇に正体を知らせるのは危険だが、彼女はきっと、雪乃の正体を知っても受け入れてくれるだろう」
雪乃にだけ聞こえるように、カイが小さな声で囁いた。
家に入ると、テーブルの上にはたくさんのサンドイッチが用意されていた。
「スープを入れてくるわね。眠っている二人の分は、バスケットに入れて持っていきましょう」
「私の事はお気遣いなく」
慌てて雪乃は止めた。
「あら、遠慮しなくて良いのよ? 美味しいスープができてるから。いっぱい食べて、大きくならないと」
ふふっと笑うローズマリナだが、雪乃は食べ物を口にすることができないのだ。
雪乃の胸が、つきりと痛む。
人間であったころも、雪乃は自分のために食事を作ってもらった記憶はあまりない。
幼かった頃にはあったのかもしれないが、弟が生まれてからは、雪乃の世話は放棄された。
食事は母が居間や台所にいないときを突いて、残り物のおかずやご飯を少しだけ分けてもらっていた。
それが無いときは、野草を採りにいって食べていた。
再びムダイがぶつぶつ言い出したが、雪乃はタイムリミットだ。
地中に根を張り、視界を閉じた。
「料理の準備ができたわ」
ローズマリナの声が掛かり、男たちは一斉に視線を向ける。雪乃はすでに根を張ってしまった。
ノムルは雪乃を隠そうと、杖を握る。
そしてカイは、雪乃のダミーを作り出す。
「マンドラゴラ、ローズマリナ殿に、お前が雪乃に見えるようにするんだ」
「わー!」
了解とばかりにフードから飛び出したマンドラゴラは、歌うように声を響かせた。
一瞬だけとろんっと虚ろな目をしたローズマリナは、
「ふふ。ユキノちゃんには特別に、お子様ランチを作ってみたの。気に入ってもらえると嬉しいのだけど」
「わー」
と、すっかりマンドラゴラを雪乃と認識してしまった。
がっちりと雪乃を障壁で守ってから、男たちは家の中へと入っていく。
机に並んでいた料理は、見た目も味も、高級レストランに負けないほどの極上品だった。
「ナルツと結婚したら、伺ってもいいですか? こんな美味い料理、ナルツだけに食べさせるなんて、もったいないですよ」
「ムダイ様ってば、お上手ね。でもまだ結婚するかは分からないわよ?」
「まず問題ないでしょう? 相思相愛ですから」
「うふふ。ありがとうございます。そうなったら、いつでも遊びにいらして」
ムダイは完全に胃袋を掴まれたようだ。
雪乃のために用意されていた、にゃんこ型オムライスを中心としたお子様ランチは、予想通りというべきか、ノムルの胃袋に収まった。
そして翌朝、目覚めた雪乃は、ムダイの魔法はどうなったのかと、すでに起きていたカイに尋ねた。
「まだ火は出せていない。魔力に触れさせてみたら、何となくは感じ取れたようだが、自分の魔力は分からないようだ」
「魔力が少ないのでしょうか?」
雪乃が問うと、カイは首を左右に振った。
「ノムル殿が言うには、魔力の量は魔法使いの中でも上位に入るほどらしい」
「ほほう。さすがゆう」
言いかけて、雪乃は言葉を切った。
カイが怪訝な顔をして見つめているが、本人の許可なく言ってはいけないだろう。
勇者ムダイは、巧くいけば剣も魔法も使える魔法剣士になれそうだ。
「練習を始めてまだ一日だ。ネーデルに着くまでに火を出せるようになれば、上出来だろう」
「そうなのですか?」
ぽてりと雪乃が幹を傾げれば、カイは頷く。
「ああ。魔法の練習を始めてから初歩の魔法が使えるようになるまでは、才能のある者でも数日、長いともっと掛かる。ムダイ殿の場合は魔力のコントロールからだから、更に掛かるだろう」
雪乃は自分が治癒魔法を習得したときのことを思い出す。
ノムルに教えてもらい始めてから、雪乃が腕の傷を癒せるまでに掛かったのは、一時間と少しほどだった。
間にノムルの食事タイムがあったことを踏まえると、一時間も掛かっていないだろう。
「ノムルさんのことばかり言えないかもしれません」
「ん?」
とうとう雪乃は、自分もちょっと常識外れなのかもしれないと気付いたのだった。
ぼんやり考えている雪乃に、カイがローブを着せ始める。
現実に戻った雪乃は、袖に枝を通していく。その間に、カイがフードを被せてくれた。
「あら、起きてるのは二人だけ? 皆さんも中で寝てくれてよかったのに」
きっちり姿を隠したところで、エプロンを付けたローズマリナが現れた。フリルがたくさん付いた、白いエプロンだ。
「俺たちは外で眠るほうが落ち着く。ムダイ殿とノムル殿は、室内のほうが良いと思うのだが」
と、三人の視線はまだ大の字になって眠っている、魔法使いと赤い男に向かう。ついでにぴー助も白いお腹を仰向けて眠っていた。
ずいぶん無防備だと気になるところだが、最強の種族である竜種は、野生でもこんなふうに寝るのかもしれないと、疑問を放り投げる。
「あの二人を同じ部屋に入れるのは危険すぎると思う。そもそも、女性の家に男を入れるのは問題がある」
「あら、カイ君は紳士ね」
ふふっと笑ったローズマリナは、それ以上の無理強いはしなかった。
馬車の旅の間に、あの二人の危険性は嫌というほど思い知らされている。
「でも雪乃ちゃんは、中で眠ったほうが良かったんじゃないの? 女の子だし、まだ幼いもの」
しゃがみ込んで目線を合わせるローズマリナの表情は、優しげだが雪乃を心配する色が窺える。
雪乃はそうっとカイを見上げた。それからノムルたちの様子を探る。
ノムルやカイが、雪乃の正体が露見しないように協力してくれていることは分かっている。
けれどローズマリナとは、まだ一緒に旅を続ける。隠し続けるのは、お互いに居心地の良いものではないだろう。
逡巡している雪乃に、ローズマリナはにっこりと微笑む。
「さ、朝ごはんの用意ができたわ。お家に入って食べましょう」
立ち上がったローズマリナは、ノムルとムダイに視線を向ける。
「あの二人はどうしましょう?」
「ノムルさんは、寝起きが最悪です」
雪乃のプチ情報に、ローズマリナとカイの答えは決まった。眠る魔王を起こしてはいけない。
家へと戻っていくローズマリナの後を、雪乃とカイは手をつないで付いていく。
「雪乃の思うようにすればいい。無闇に正体を知らせるのは危険だが、彼女はきっと、雪乃の正体を知っても受け入れてくれるだろう」
雪乃にだけ聞こえるように、カイが小さな声で囁いた。
家に入ると、テーブルの上にはたくさんのサンドイッチが用意されていた。
「スープを入れてくるわね。眠っている二人の分は、バスケットに入れて持っていきましょう」
「私の事はお気遣いなく」
慌てて雪乃は止めた。
「あら、遠慮しなくて良いのよ? 美味しいスープができてるから。いっぱい食べて、大きくならないと」
ふふっと笑うローズマリナだが、雪乃は食べ物を口にすることができないのだ。
雪乃の胸が、つきりと痛む。
人間であったころも、雪乃は自分のために食事を作ってもらった記憶はあまりない。
幼かった頃にはあったのかもしれないが、弟が生まれてからは、雪乃の世話は放棄された。
食事は母が居間や台所にいないときを突いて、残り物のおかずやご飯を少しだけ分けてもらっていた。
それが無いときは、野草を採りにいって食べていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる