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ヒイヅル編
297.強盗か?!
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ゆっくりと視線を上げる雪乃。そんな雪乃の頭を、カイは慰めるように二度軽く叩いた。
「諦めろ」
カイもまた、ここまでの付き合いでノムルの性格を掴んでしまったようだ。喜ぶべきことなのか、悲しむべきなのかは、複雑なところだが。
渋々付いていく雪乃たちの気持ちになど気付くはずもなく、ノムルはずんずん進んで行く。店の扉を開けると、ガラスで作ったドアベルが、高く硬質な音を立てた。
「ユキノちゃんのおとーさんが来ましたよー。ユキノちゃんに似合う、可愛くて上等なアクセサリーを寄越せ」
「強盗か?!」とつっ込みかけた声を必死に抑え、雪乃は肩を震わせる。カイは右手で顔を覆って俯いていた。
扉の前には、倒れて動かなくなっている男が二人。
言うまでもなく、店に近付いたノムルを制止しようとして、返り討ちにされた警備の兵だ。
念のため、雪乃は二人に近付いて呼吸の有無を確かめる。どうやら意識を失っただけで、きちんと生きているようだ。
はふうっと安堵の息を吐き出しながら、雪乃は枝で額の汗を拭う。汗は出ていないが、気持ちの問題だ。
止めても無駄だろうと悟った雪乃は、ぴー助に店の外で待っておいてもらい、ノムルに続いて店へと足を踏み込む。
草色の古びたローブを着た魔法使いの姿を目に止めて、燕尾服の男がノムルに近付いてきた。先ほどの男女を迎えた時の接待スマイルは消え、口元に弧を描きながらも鋭い眼差しでノムルを睨みつけている。
「申し訳ありませんが、当店の商品はお客様のお望みには適わないと思われます。どうぞ他の店をご覧になってくださいませ」
丁寧な言葉ではあるが、口調は蔑むように慇懃だ。
「つまり、その辺の店以下のガラクタしか置いてないわけか。見た目詐欺のこけおどしかよ。それならそれらしい店構えにしとけよ」
顔をしかめて溜め息を吐くノムルに、店員のこめかみがひくひくと揺れている。作られた笑顔が消えて、店内の客からは見えない角度に隠した顔から、怒気が放たれる。
サービス業の店員より、裏家業のほうが似合いそうな面構えだ。
そんな顔芸よりも、雪乃の視線は別のところに釘付けになっている。カイもまた、それに気付いていた。
ノムルの指が、杖を軽く撫でたのだ。
雪乃とカイは入りかけていた店から、慌てて外に出る。
自分の威圧に恐れをなして逃げ出したと思ったのか、二人を見て店員は満足そうに口角を上げた。
だが雪乃とカイには、そんなことはどうでも良い。
町の人々は雪乃たちが今しがた出てきた店を指差して、口々に何か言いながら眺めている。
雪乃とカイも、店を見渡せる場所まで出ると振り返った。
「やっぱりでしたか」
溜め息を吐く雪乃の頭を、カイは無言で撫でる。
白く輝いていたはずの建物は、数十年放置されたかのように劣化が激しく、ひびが入り、くすんだ灰色と薄茶色が気味悪く混ざった色に染めかえられていた。
見た目だけでなく、ぱらぱらと壁が土となって落ちてくる。内部まで侵食しているのか、表面のみの劣化かは判断し辛い。
「壁が残っているだけ良しとしますか」
気持ちを切り替えて、雪乃はぽてぽてと店の中へと戻っていく。
あの命知らずの店員とノムルを二人きりにしていては、次はどんな惨事を引き起こすか知れたものではない。
離れていく小さな樹人を、カイは呆然として見送る。
「雪乃? 本当にこれで良いのか?」
どう見ても、良いとは言えない状況だろう。
カイは困惑しながらも、雪乃を追った。
店の中に戻ると、なぜか先ほどの店員が揉み手でノムルを接待していた。
ストレートだったはずの髪はちりちりパーマにセットしなおされ、顔はこんがり黒くなっている。服も糸が飛び出たり穴が開いていたりと、斬新なデザインと化していた。
「ユキノちゃん、どこに行ってたのさ?」
ノムルは困ったように眉間に皺を寄せているが、困っているのは間違いなく彼以外の人々だろう。
雪乃は額に小枝を添えながらも、言っても無駄だろうとノムルの隣に立つ。
「いやあ、まさか魔法ギルドの総帥、あのノムル・クラウ様とは気付かず、失礼いたしました」
店員は米搗きバッタのようにぺこぺこと頭を下げながら、階段を上っていく。
カイが雪乃を抱き上げようとしたが、その前にノムルの手が伸びて抱きかかえた。雪乃は抵抗することなく抱き上げられて階段を上っていく。
「御手数をお掛けします」
「どーいたしましてー」
へらりと嬉しそうに笑み崩れるノムルは、熱い吐息を吐き出した。
「ここのところ、ユキノちゃん成分が足りなくてさー」
きゅっと抱きしめられ頬を摺り寄せてきたので、雪乃はすぐさま枝を突っ張る。
「なんで?! 狼にはしなかったのに?!」
「カイさんは、ほっぺを摺り寄せたりしません!」
カイは抱き上げはしても、ほっぺすりすりはしない。雪乃は抱き上げられることも膝の上に乗せられることも、特に抵抗はないのだ。ほっぺすりすりさえされなければ。
「トラウマ? あの爺のせいか?!」
「お爺ちゃんよりノムルさんの方が先に出会っています」
「くそっ、あの変態爺め!」
「話聞いていますか?」
会話にならない会話をしながら、雪乃たちは二階の個室に入った。
螺鈿のように貝殻を埋め込んだ円形のローテーブルが置かれ、白いソファーが囲んでいる。
ノムルは雪乃を抱えたまま遠慮なく座ったが、カイはソファには座らず、ノムルの斜め後ろに控えた。
「背後から襲っても無駄だぞ?」
「なぜそうなる?」
眉を寄せて、カイは呆れたように疑問を口にしたが、答えは返ってこない。初めから期待していなかったのか、それ以上は問い掛けもしなかった。
「お嬢様のアクセサリーということですが、具体的なご希望はありますでしょうか?」
もみ手をしながら、胡散臭い笑顔の店員が尋ねる。
「俺の娘に相応しい、とっておきのアクセサリーだ。ユキノちゃんが喜んで、『おとーさん、だーい好き』って言ってくれるような」
でれでれとにやける魔法ギルド総帥には、威厳もへったくれもない。ただの親ばか親父がそこにいた。
「指輪や腕輪、ネックレス、ブローチや髪飾りなどありますが、ご希望はございますでしょうか?」
「そーだなー」
ノムルは雪乃を横抱きに抱きかえると、雪乃の顔をのぞきこむ。
「諦めろ」
カイもまた、ここまでの付き合いでノムルの性格を掴んでしまったようだ。喜ぶべきことなのか、悲しむべきなのかは、複雑なところだが。
渋々付いていく雪乃たちの気持ちになど気付くはずもなく、ノムルはずんずん進んで行く。店の扉を開けると、ガラスで作ったドアベルが、高く硬質な音を立てた。
「ユキノちゃんのおとーさんが来ましたよー。ユキノちゃんに似合う、可愛くて上等なアクセサリーを寄越せ」
「強盗か?!」とつっ込みかけた声を必死に抑え、雪乃は肩を震わせる。カイは右手で顔を覆って俯いていた。
扉の前には、倒れて動かなくなっている男が二人。
言うまでもなく、店に近付いたノムルを制止しようとして、返り討ちにされた警備の兵だ。
念のため、雪乃は二人に近付いて呼吸の有無を確かめる。どうやら意識を失っただけで、きちんと生きているようだ。
はふうっと安堵の息を吐き出しながら、雪乃は枝で額の汗を拭う。汗は出ていないが、気持ちの問題だ。
止めても無駄だろうと悟った雪乃は、ぴー助に店の外で待っておいてもらい、ノムルに続いて店へと足を踏み込む。
草色の古びたローブを着た魔法使いの姿を目に止めて、燕尾服の男がノムルに近付いてきた。先ほどの男女を迎えた時の接待スマイルは消え、口元に弧を描きながらも鋭い眼差しでノムルを睨みつけている。
「申し訳ありませんが、当店の商品はお客様のお望みには適わないと思われます。どうぞ他の店をご覧になってくださいませ」
丁寧な言葉ではあるが、口調は蔑むように慇懃だ。
「つまり、その辺の店以下のガラクタしか置いてないわけか。見た目詐欺のこけおどしかよ。それならそれらしい店構えにしとけよ」
顔をしかめて溜め息を吐くノムルに、店員のこめかみがひくひくと揺れている。作られた笑顔が消えて、店内の客からは見えない角度に隠した顔から、怒気が放たれる。
サービス業の店員より、裏家業のほうが似合いそうな面構えだ。
そんな顔芸よりも、雪乃の視線は別のところに釘付けになっている。カイもまた、それに気付いていた。
ノムルの指が、杖を軽く撫でたのだ。
雪乃とカイは入りかけていた店から、慌てて外に出る。
自分の威圧に恐れをなして逃げ出したと思ったのか、二人を見て店員は満足そうに口角を上げた。
だが雪乃とカイには、そんなことはどうでも良い。
町の人々は雪乃たちが今しがた出てきた店を指差して、口々に何か言いながら眺めている。
雪乃とカイも、店を見渡せる場所まで出ると振り返った。
「やっぱりでしたか」
溜め息を吐く雪乃の頭を、カイは無言で撫でる。
白く輝いていたはずの建物は、数十年放置されたかのように劣化が激しく、ひびが入り、くすんだ灰色と薄茶色が気味悪く混ざった色に染めかえられていた。
見た目だけでなく、ぱらぱらと壁が土となって落ちてくる。内部まで侵食しているのか、表面のみの劣化かは判断し辛い。
「壁が残っているだけ良しとしますか」
気持ちを切り替えて、雪乃はぽてぽてと店の中へと戻っていく。
あの命知らずの店員とノムルを二人きりにしていては、次はどんな惨事を引き起こすか知れたものではない。
離れていく小さな樹人を、カイは呆然として見送る。
「雪乃? 本当にこれで良いのか?」
どう見ても、良いとは言えない状況だろう。
カイは困惑しながらも、雪乃を追った。
店の中に戻ると、なぜか先ほどの店員が揉み手でノムルを接待していた。
ストレートだったはずの髪はちりちりパーマにセットしなおされ、顔はこんがり黒くなっている。服も糸が飛び出たり穴が開いていたりと、斬新なデザインと化していた。
「ユキノちゃん、どこに行ってたのさ?」
ノムルは困ったように眉間に皺を寄せているが、困っているのは間違いなく彼以外の人々だろう。
雪乃は額に小枝を添えながらも、言っても無駄だろうとノムルの隣に立つ。
「いやあ、まさか魔法ギルドの総帥、あのノムル・クラウ様とは気付かず、失礼いたしました」
店員は米搗きバッタのようにぺこぺこと頭を下げながら、階段を上っていく。
カイが雪乃を抱き上げようとしたが、その前にノムルの手が伸びて抱きかかえた。雪乃は抵抗することなく抱き上げられて階段を上っていく。
「御手数をお掛けします」
「どーいたしましてー」
へらりと嬉しそうに笑み崩れるノムルは、熱い吐息を吐き出した。
「ここのところ、ユキノちゃん成分が足りなくてさー」
きゅっと抱きしめられ頬を摺り寄せてきたので、雪乃はすぐさま枝を突っ張る。
「なんで?! 狼にはしなかったのに?!」
「カイさんは、ほっぺを摺り寄せたりしません!」
カイは抱き上げはしても、ほっぺすりすりはしない。雪乃は抱き上げられることも膝の上に乗せられることも、特に抵抗はないのだ。ほっぺすりすりさえされなければ。
「トラウマ? あの爺のせいか?!」
「お爺ちゃんよりノムルさんの方が先に出会っています」
「くそっ、あの変態爺め!」
「話聞いていますか?」
会話にならない会話をしながら、雪乃たちは二階の個室に入った。
螺鈿のように貝殻を埋め込んだ円形のローテーブルが置かれ、白いソファーが囲んでいる。
ノムルは雪乃を抱えたまま遠慮なく座ったが、カイはソファには座らず、ノムルの斜め後ろに控えた。
「背後から襲っても無駄だぞ?」
「なぜそうなる?」
眉を寄せて、カイは呆れたように疑問を口にしたが、答えは返ってこない。初めから期待していなかったのか、それ以上は問い掛けもしなかった。
「お嬢様のアクセサリーということですが、具体的なご希望はありますでしょうか?」
もみ手をしながら、胡散臭い笑顔の店員が尋ねる。
「俺の娘に相応しい、とっておきのアクセサリーだ。ユキノちゃんが喜んで、『おとーさん、だーい好き』って言ってくれるような」
でれでれとにやける魔法ギルド総帥には、威厳もへったくれもない。ただの親ばか親父がそこにいた。
「指輪や腕輪、ネックレス、ブローチや髪飾りなどありますが、ご希望はございますでしょうか?」
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