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魔王復活編
354.カイは疑念を抱く
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森から出ることのなかったエルフのラスエルが障壁の外にいて、必死に中に入ろうと攻撃を繰り返していたが、障壁が破られることはなかった。
なんとか彼女を宥めて話を聞くと、どうやらノムルが、森からラスエルを追い出したことが判明する。
ラスエルと獣人たちは、人間がまたしても樹人の御子を奪おうとしているのだと怒りに震えたが、カイは疑念を抱く。
雪乃を溺愛していたノムルが、彼女に危害を加えるはずはないと、何か理由があるのではないかと訴えたが、ラスエルも獣人たちも耳を貸さなかった。
果ては人間と通じているのではないかと疑われ、捕えられてしまったという。
獣人たちは障壁を破ろうと奮闘したが、結局、未だに障壁は破れていない。
「では、カイさんはなぜここに?」
ぽてりと、雪乃は幹を傾げた。今の話であれば、カイは獣人たちに捕まっているはずである。
雪乃の疑問を受けて、カイは困ったように頬を掻くと、
「実は雪乃から預かっていたマンドラゴラなのだが」
と、顔を横に向ける。肩の上には、ちょこんと座るマンドラゴラの姿があった。なんだかいつもと雰囲気が違う。根が艶やかで輝いているように見え、葉もふさふさだ。
雪乃はおもむろに、自分の周りにいるマンドラゴラたちを見た。
「わー?」
「わー?」
「わー」
改めて見てみると、それぞれに薄っすらと色が加わっている。赤みがかっていたり、薄くなっていたりするマンドラゴラはともかくとして、青みがプラスされて紫色のマンドラゴラまでいた。
カイのマンドラゴラのように、てかっているマンドラゴラはいないようだが、以前とは明らかに違っていた。
「なぜ私はすぐに気が付かなかったのでしょう?」
「わー?」
「わー?」
「わー!」
ぼんやり雪乃の呟きに、マンドラゴラたちは根を傾げた後、楽しそうに跳ねた。よくわかっていないように見えるが。
苦笑をこぼしながら、カイは話を戻す。
「実はヒイヅルに到着した辺りから、あまり外に出ようとしなかったんだ。雪乃のマンドラゴラたちも姿を見せなくなっていたから、獣人たちの目を気にして隠れているのだと思っていたのだが」
今日になって突然動き出し、牢からの脱出を提案し始めたらしい。
「雪乃に何かがあったのだと思い、牢番に掛け合って出てきた」
と、なぜかカイの目は半眼になり、どこか遠くを眺めだした。嫌な予感を覚えた雪乃は、そうっと幹を回して視線を逸らす。
カイの肩に乗っているマンドラゴラが、胸を張って根をきらきらと輝かせている様子を見るに、マンドラゴラが何かしたのだろう。
最強魔法使いさえも手玉に取るマンドラゴラだ。獣人たちを思いのままに操るなど、朝飯前に違いない。
「特に大きな被害は無い。気にしないでくれ」
「はい」
肩を落として項垂れながら、カイと雪乃はこの件に関しては、これ以上つっ込まないことにした。
「それはそうと、ノムル殿は一緒ではないのか?」
てっきり雪乃の傍にいると思っていたカイは、辺りの匂いを嗅いで、眉根を寄せた。
雪乃もまた、疑問に思う。
大樹に育って動けなくなった雪乃を、見限ってしまった可能性は否定できない。しかし、あのノムルである。
「もしや私が動かないと思ってどこかに出かけている間に、私がここに移動してしまったのでしょうか?」
自分のうかつな行動に気付き、雪乃はがく然とした。
「こうしてはいられません。ぴー助、戻りますよ。私が抜け出したとばれたら、ノムルさんが何を仕出かすか分かりません!」
何だかんだ言いつつも、自分がノムルのストッパーとなっていることは、理解している雪乃だった。スイッチかもしれないが。
「カイさん、私は戻ってノムルさんを抑えなければなりません。失礼します」
ぺこりとお辞儀をすると、ぴー助に騎乗するため根を動かす。だが巨大化したぴー助は、伏せていても数メートルの高さがある。小さな雪乃に上れるはずがなかった。
なんとかよじ登ろうとしているが、少しよじ登ってはずるずると滑り落ち、再びよじ登ってはずるずると落ちて根餅をついてしまった。
「なんと情けないのでしょう」
自分の無力さに拳を握り締め、葉を食いしばる。
憐れみの眼差しを向けていたカイだが、近付いて抱き上げると、ぴー助の背に乗るために地面を蹴ろうとしたのだが、
「わー」
と、マンドラゴラに止められた。
「どうした?」
カイが振り向くと、マンドラゴラはカイの肩を蹴って、雪乃の頭の上に着地する。それから自分の葉を雪乃の葉に合わせた。
誰かから言伝が届いたのだと、雪乃はマンドラゴラ電話に意識を向ける。
静かに聴いていた雪乃の気配が不穏なものとなり、しまいには、はらりと一枚の葉が舞い落ちた。
「雪乃?」
碌でもない内容なのだろうと思いながらも、情報を共有するためカイは確認を取る。だがその内容は、カイにも予想外というか、予想通りというか、落ち込ませるに充分な内容だった。
「えーっと、ナルツさんからです。ノムルさんが、魔王になったそうです」
雪乃の身体がぷるぷると震える。震源は雪乃ではなく、彼女を抱き上げているカイだった。
「それは、ナルツ殿のところで暴走しているということか?」
ナルツに対してではなく、近くにいる可能性の高いムダイを相手に魔王化している気もするが、細かいことは置いておく。
「いえ、千年に一度現れるという、本物の魔王になったようです」
宙に浮かんでいた雪乃の根っこが、地面に着く。カイが呆れや困惑で、しゃがみこんでしまったのだ。
「あの人はいったい、何なんだ? あれより更に魔王化するのか? 魔王とはいったい?」
頭を抱え込んでいるカイに、雪乃も答えられない。呆然と立ちすくみ、空を見上げていた。
「意味が分かりません。私の悩みはなんだったのでしょうか?」
何度も何度も何度も、ストーカーのように、スッポンのように、しつこく魔王になることを勧められてきたのだ。
それが知らぬ間に、雪乃ではなくノムルがその座に就いていたのだから。
「いえ、別にいいのですよ。私はその椅子に興味はありませんから。それに私などよりもノムルさんのほうが相応し……いえ、ええー?」
どこにどうツッコミを入れ、何に落ち込めば良いのか、雪乃には最早分からなかった。
「とりあえず、ネーデルに向かおう。ナルツ殿かムダイ殿に話を聞いたほうが良いだろう」
カイの判断に、雪乃も素直に同意する。今はとにかく情報が欲しい。
雪乃とカイはぴー助に乗り、西に向かって飛び立ったのだった。
なんとか彼女を宥めて話を聞くと、どうやらノムルが、森からラスエルを追い出したことが判明する。
ラスエルと獣人たちは、人間がまたしても樹人の御子を奪おうとしているのだと怒りに震えたが、カイは疑念を抱く。
雪乃を溺愛していたノムルが、彼女に危害を加えるはずはないと、何か理由があるのではないかと訴えたが、ラスエルも獣人たちも耳を貸さなかった。
果ては人間と通じているのではないかと疑われ、捕えられてしまったという。
獣人たちは障壁を破ろうと奮闘したが、結局、未だに障壁は破れていない。
「では、カイさんはなぜここに?」
ぽてりと、雪乃は幹を傾げた。今の話であれば、カイは獣人たちに捕まっているはずである。
雪乃の疑問を受けて、カイは困ったように頬を掻くと、
「実は雪乃から預かっていたマンドラゴラなのだが」
と、顔を横に向ける。肩の上には、ちょこんと座るマンドラゴラの姿があった。なんだかいつもと雰囲気が違う。根が艶やかで輝いているように見え、葉もふさふさだ。
雪乃はおもむろに、自分の周りにいるマンドラゴラたちを見た。
「わー?」
「わー?」
「わー」
改めて見てみると、それぞれに薄っすらと色が加わっている。赤みがかっていたり、薄くなっていたりするマンドラゴラはともかくとして、青みがプラスされて紫色のマンドラゴラまでいた。
カイのマンドラゴラのように、てかっているマンドラゴラはいないようだが、以前とは明らかに違っていた。
「なぜ私はすぐに気が付かなかったのでしょう?」
「わー?」
「わー?」
「わー!」
ぼんやり雪乃の呟きに、マンドラゴラたちは根を傾げた後、楽しそうに跳ねた。よくわかっていないように見えるが。
苦笑をこぼしながら、カイは話を戻す。
「実はヒイヅルに到着した辺りから、あまり外に出ようとしなかったんだ。雪乃のマンドラゴラたちも姿を見せなくなっていたから、獣人たちの目を気にして隠れているのだと思っていたのだが」
今日になって突然動き出し、牢からの脱出を提案し始めたらしい。
「雪乃に何かがあったのだと思い、牢番に掛け合って出てきた」
と、なぜかカイの目は半眼になり、どこか遠くを眺めだした。嫌な予感を覚えた雪乃は、そうっと幹を回して視線を逸らす。
カイの肩に乗っているマンドラゴラが、胸を張って根をきらきらと輝かせている様子を見るに、マンドラゴラが何かしたのだろう。
最強魔法使いさえも手玉に取るマンドラゴラだ。獣人たちを思いのままに操るなど、朝飯前に違いない。
「特に大きな被害は無い。気にしないでくれ」
「はい」
肩を落として項垂れながら、カイと雪乃はこの件に関しては、これ以上つっ込まないことにした。
「それはそうと、ノムル殿は一緒ではないのか?」
てっきり雪乃の傍にいると思っていたカイは、辺りの匂いを嗅いで、眉根を寄せた。
雪乃もまた、疑問に思う。
大樹に育って動けなくなった雪乃を、見限ってしまった可能性は否定できない。しかし、あのノムルである。
「もしや私が動かないと思ってどこかに出かけている間に、私がここに移動してしまったのでしょうか?」
自分のうかつな行動に気付き、雪乃はがく然とした。
「こうしてはいられません。ぴー助、戻りますよ。私が抜け出したとばれたら、ノムルさんが何を仕出かすか分かりません!」
何だかんだ言いつつも、自分がノムルのストッパーとなっていることは、理解している雪乃だった。スイッチかもしれないが。
「カイさん、私は戻ってノムルさんを抑えなければなりません。失礼します」
ぺこりとお辞儀をすると、ぴー助に騎乗するため根を動かす。だが巨大化したぴー助は、伏せていても数メートルの高さがある。小さな雪乃に上れるはずがなかった。
なんとかよじ登ろうとしているが、少しよじ登ってはずるずると滑り落ち、再びよじ登ってはずるずると落ちて根餅をついてしまった。
「なんと情けないのでしょう」
自分の無力さに拳を握り締め、葉を食いしばる。
憐れみの眼差しを向けていたカイだが、近付いて抱き上げると、ぴー助の背に乗るために地面を蹴ろうとしたのだが、
「わー」
と、マンドラゴラに止められた。
「どうした?」
カイが振り向くと、マンドラゴラはカイの肩を蹴って、雪乃の頭の上に着地する。それから自分の葉を雪乃の葉に合わせた。
誰かから言伝が届いたのだと、雪乃はマンドラゴラ電話に意識を向ける。
静かに聴いていた雪乃の気配が不穏なものとなり、しまいには、はらりと一枚の葉が舞い落ちた。
「雪乃?」
碌でもない内容なのだろうと思いながらも、情報を共有するためカイは確認を取る。だがその内容は、カイにも予想外というか、予想通りというか、落ち込ませるに充分な内容だった。
「えーっと、ナルツさんからです。ノムルさんが、魔王になったそうです」
雪乃の身体がぷるぷると震える。震源は雪乃ではなく、彼女を抱き上げているカイだった。
「それは、ナルツ殿のところで暴走しているということか?」
ナルツに対してではなく、近くにいる可能性の高いムダイを相手に魔王化している気もするが、細かいことは置いておく。
「いえ、千年に一度現れるという、本物の魔王になったようです」
宙に浮かんでいた雪乃の根っこが、地面に着く。カイが呆れや困惑で、しゃがみこんでしまったのだ。
「あの人はいったい、何なんだ? あれより更に魔王化するのか? 魔王とはいったい?」
頭を抱え込んでいるカイに、雪乃も答えられない。呆然と立ちすくみ、空を見上げていた。
「意味が分かりません。私の悩みはなんだったのでしょうか?」
何度も何度も何度も、ストーカーのように、スッポンのように、しつこく魔王になることを勧められてきたのだ。
それが知らぬ間に、雪乃ではなくノムルがその座に就いていたのだから。
「いえ、別にいいのですよ。私はその椅子に興味はありませんから。それに私などよりもノムルさんのほうが相応し……いえ、ええー?」
どこにどうツッコミを入れ、何に落ち込めば良いのか、雪乃には最早分からなかった。
「とりあえず、ネーデルに向かおう。ナルツ殿かムダイ殿に話を聞いたほうが良いだろう」
カイの判断に、雪乃も素直に同意する。今はとにかく情報が欲しい。
雪乃とカイはぴー助に乗り、西に向かって飛び立ったのだった。
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