『種族:樹人』を選んでみたら 異世界に放り出されたけれど何とかやってます

しろ卯

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魔王復活編

382.お店のほうも好調だとか

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「久しぶり、ユキノちゃん、カイ君」

 今度はフレックが声を掛けた。

「お久しぶりです。お店のほうも好調だとか」

 挨拶をするフレックに、雪乃も返す。カイは小さく頷き返していた。

「ああ、初めは俺に商売なんてできるのかって不安もあったけど、やってみると思っていた以上に合っていたみたい。いやあ、吃驚」

 と笑うフレックに、マグレーンは苦笑をこぼす。

「よく言うよ。店に来る女の子を口説いては商品を売りさばくんだからね。恐ろしいよ」
「押し売りみたいに言うなよ? ちゃんと予算内で似合うものを選んでいる」

 フレックは反論するが、ムダイとマグレーンから疑わしそうな眼差しを向けられて、気まずそうに頬を掻いている。

「でもララの存在も大きいよ。俺だけだとやっぱり商売のことはよく分からなかっただろうけど、ララが手伝ってくれるから」

 話を振られたララクールは、頬を少し赤らめて微笑む。

「大したことではありません。ゴリン国では非番の日にローズマリナ様のお手伝いをしていましたから、その時のことを思い出しながらお手伝いしただけです」

 どうやらララクールも、フレックと共にローズマリナの店を手伝っているようだ。

「凄いよ? 商品自体の人気もだけど、二人を見たくて足を運ぶ女の子も多いみたい。最近では二人の姿絵まで出回っている」

 雪乃の脇にしゃがみ込んだムダイが、ぼそりとささやいた。
 イケメンフレックと男装の麗人ララクールという組み合わせは、ネーデルに住む女性たちを虜にしているようだ。

「ムダイさんの人気に迫る勢いなんだよ?」

 マグレーンも含み笑いを浮かべながら混じってきた。

「それは無いって」

 聞きとめたフレックがすぐに否定するが、ムダイとマグレーンは、にやにやと笑いながら美形二人を眺めている。

「あー、もうっ」

 と顔をしかめるフレックの隣で、ララクールは真っ赤になって俯いた。

「ほほう。なるほど」

 二人の関係に気付いた雪乃は、一人頷いたあと、嬉しそうに葉をきらめかせた。

「さて、そろそろあっちも落ち着いただろう?」

 と、フレックとララクールをからかうことを切り上げたムダイは、立ち上がってナルツたちへと視線を向ける。
 視線に気付いたナルツが、照れながらローズマリナから顔を上げた。

「母上、この人間が父上なのですか?」

 ぴしりと、空気が固まった。
 先ほどまで静かにローズマリナにくっ付いているだけだったダルクが、突然に声を上げたのだ。しかも聞きようによっては大問題な発言だ。
 ナルツの視線がダルクへと向かう。

「ええっと、君は? どうしてローズの腕にしがみ付いているの?」

 今になってようやくダルクの存在に気付いたようで、戸惑いながらも不思議そうに尋ねた。

「聞くところはそこ?」

 ムダイは少し驚いたように眉を跳ね、

「というか、今まで気付いてなかったんだ?」

 マグレーンが呆れ気味にナルツを見れば、

「ナルツらしいって言えば、ナルツらしいけどな」

 フレックは少し困ったように笑い、

「ローズマリナさんしか見えていなかったのですね。恋は盲目とは、こういうことでしたか」

 雪乃は何かを納得していた。

「違うと思うけど、そうだね」

 雪乃の言葉を訂正しようとしたムダイだったが、目の前の光景を見て受け入れてしまった。確かにナルツは恋の病によりローズマリナ以外見えなくなっている。

「母上だからだ」

 周囲の声など気にせずダルクが答えると、ナルツはもちろん、彼と共に来た三人も驚いて目を瞠る。
 
「えっと、母上ってどういうこと?」

 ナルツはダルクに問いを重ねる。フレックたちも訝しげにダルクを下から上へと探るように見た。

「母上は母上だ」

 迷いなく答えるダルクだが、事情を知らない人間たちには意味が分からない。

「えーっと、ダルクさんは先代の魔お――ではなく、聖女様がお母さんだったみたいです。ダルクさんはお母さんを探していたのですが、ローズマリナさんがお母さんの生まれ変わりなのだそうです」

 ダルクに任していたのでは話が進まないと判断した雪乃は、簡単に説明した。途中でダルクに睨まれて、言い直したが。
 後から来たナルツたち四人は、口をぽかーんっと開けて、頭の中が真っ白になったように動かない。ムダイがフレックの前で手を振っているが、眼球が反応するまでに数秒を要するという有様だ。

「つまり、ローズマリナ様は本物の聖女様、ということでしょうか?」

 思考の宇宙から戻ってきたララクールが、ためらいがちに言葉を選ぶ。

「その通りだ」

 ダルクに肯定され、とりあえず受け入れた面々は、次いでナルツを見る。

「えっと、つまり、聖女様の夫になる予定だから、ナルツが君の父親ってこと?」

 今度はフレックが問うた。まだ思考は錯乱しているのだろう。表情が硬い。

「知らん。母上は父上に会いたがっておられた。母上はこの人間を見て嬉しそうだったから、父上なのかとお尋ねしただけだ」

 全員がきょとんとして瞬く。

「そのお話のお母様は、先代の聖女様のことね?」
「そうです」

 ローズマリナが問いかけると、先ほどまで憮然としていたダルクが、子供のように無邪気に笑み崩れる。

「先代の聖女様には、夫がいたの?」

 特に驚くべき質問ではないはずなのだが、全員がぎこちなく眉をひそめる。何かが引っかかるのだが、それが何か分からないといった、微妙な表情をしている。

「俺は会ったことはありません。でも母上は、父上に会いたがっていました」
「つまり聖女様は、夫と共にいなかったということかな? どうして?」

 首を捻りながら、ナルツはダルクとローズマリナを交互に見る。ローズマリナは少し不安げに、ナルツを見つめていた。

「父上は俺が母上と会うより先に、亡くなったと聞いた。母上はご自分のせいで父上がお亡くなりになったのだと、嘆いておられた」

 そこまで聞いて、全員が言葉を失う。誰にともなく視線を向け、向けられたほうも答えられずにわずかに首を振る。 
 新たな事実に、次は何を問えば良いのかと、思考を回らせた。だが問いかける前に、ダルクが声を上げる。

「ああ、そうか。それで母上を見つけられなかったのか」

 ようやく分かったとばかりに、すっきりとした顔をしているが、すっきりしたのはダルクだけだ。他の面々は呆気に取られてダルクを見つめるしかない。
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