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魔王復活編
397.報いを受けなさい
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「ノムル様に目を掛けていただいておきながら裏切るなど、許せません。さあ、報いを受けなさい」
ベクターが扉の中に戻ると、壁を覆う蔓性魔植物の一部が盛り上がった。何かがごんごんと叩く音がしているが、特にそれ以上の動きはない。
何が起こるのだろうと雪乃たちが見守っていると、再びベクターが出てきて、盛り上がっている蔓性魔植物たちを水魔法で切り刻み、すぐに帰っていった。よく見ると、耳が赤くなっている。
扉の向こうに消えるベクターを、雪乃たちは静かに見送ってから、彼が攻撃した場所へと視線を戻す。
壁を覆っていた蔓性植物が消え、大きな扉が開いた。そこから出てきたのは、色取り取りの花々だった。
草丈はムダイやナルツたちよりも少し高いくらいだろうか。肉厚の花びらは、赤や黄など毒々しいまでに鮮やかだ。ぷっくりとしたタラコ唇からはみ出た大きな舌、奥に見える鋭い牙。
錆びた鉄が軋むような不快な音を立てながら次々と扉から出てきたのは、カマーフラワー御一行である。
「圧巻ですね」
雪乃は思わず呟いた。
一匹ずつだと少し引く外見だが、群になると、
「悪夢にうなされそうなんだけど?」
と顔をしかめるムダイに、全員一致で頷いた。
などと言っている間に、あふれ出たカマーフラワーの波が迫ってくる。剣を抜いたムダイとナルツが飛び出し、瞬く間に切り伏せていったが。
「ギ、ギギー」
茎を寸断され花びらを散らせたカマーフラワーが、恨めしそうに鳴く。
「多いですね。ここで無駄に体力を使うこともないでしょう。下がって」
マグレーンの声で、ムダイとナルツはすぐに後退する。入れ違うように水の塊がカマーフラワーたちを襲い、そのまま彼らが出てきた部屋へと押し流していった。
蔓性魔植物たちも巻き込んだようで、玄関ホールは以前の白く清潔な空間に戻った。
雪乃たちは奥へと進んで行く。
ちらりとカマーフラワーが押し戻された部屋を見ると、カマーフラワーたちが高密度でぎっしりと詰まっていた。とてもあの狭い空間に待機させられていたとは思えない量である。
どうやら転移装置が設置されていた部屋を利用して、送り込んできていたようだ。
「転移先に設置されている魔法陣の中央部に生体反応があると起動しないから、これ以上は送り込まれてこないよ。……アレが生体反応として認識されていることに少し驚いているけど」
マグレーンの説明に頷きながら、雪乃たちは進んでいく。しかしどこに向かえばよいのか分からないので、受付カウンターに戻ることにした。
無人のカウンターだが、奥の扉の向こうにビクターがいることは分かっている。
ムダイが軽くノックする。反応は無い。もう一度ノックるする。やはり反応は無い。押しても引いても動かない。
ということで、仕方なく扉を斬った。仕方なくだ。
「なっ?! 関係者以外、立ち入り禁止ですよ?!」
ラーメンを食べていたビクターが、驚きながら振り返った。
魔王の根城に勇者一行が攻めてきているにも関わらず平然と食事をしているビクターを前に、呑気なことだとナルツとマグレーンは呆れるが、雪乃とムダイの気持ちは違った。
「ラーメン、だと?!」
額に一筋の汗を滴らせ、驚愕に打ち震えるムダイ。
ビクターに対して眉をひそめていたナルツとマグレーンは、ぽかんとした顔をムダイへ向ける。この状況で食べているものに興味を示すムダイは余裕なのか、それともずれているのかと少々判断に困った。
おそらく両方だろう。
同じように反応を示しそうな雪乃は、ムダイほど驚いていない。なぜなら雪乃はルグ国で、すでにキートバソという、ラーメンに近い麺類を見つけていた。とはいえ興味が無いわけではない。
「くっ! 長年探したラーメンが、ラジンにあったなんて! しかもインスタント!」
「何味でしょう? 醤油も味噌も大陸では見ませんでしたから、やはり塩でしょうか?」
悔しがって床を殴るムダイの脇で、雪乃はきらきらと葉をきらめかせてラーメンを見つめていた。
「あ、あげませんよ? それとこれは、ナンバーワンサッポーです」
どんぶりを隠すように引き寄せて、ビクターは言い放つ。ずるずると麺をすすることも忘れない。
ムダイと雪乃は固まった。ナンバーワン、そしてサッポー……。
「味噌味?」
思わず顔を見合わせる雪乃とムダイ。
「ムダイさん!」
「雪乃ちゃん!」
熱く見つめあい、手を取り合う元日本人二人。混沌としてきたところで、ひょいっと雪乃は宙に浮かんでいく。幹を捻って後ろを見ると、カイが抱き上げていた。
「よく分からんが、後にしろ」
「はい」
雪乃とムダイは揃ってしょんぼり反省した。
大人しくなった雪乃とムダイを部屋の外へ放り出し、ナルツの尋問が始まる。騎士として務めていたナルツは慣れた様子で、開始三分も経たずに尋問を終えた。
「彼が案内してくれるそうだよ」
爽やかな笑顔で現れたナルツの後ろには、顔を引きつらせたカイとマグレーンの姿が見える。
ナルツの説得を受けたビクターは、素直に雪乃たちを奥へと案内する。尋問により怯えながらかと思いきや、ナルツにうっとりとした熱い眼差しを送っていた。
何があったのかは、雪乃は敢えて聞かなかった。
ビクターが向かったのは、ノムルの部屋ではなく雪乃が行ったことのない場所だった。というより改装されたのか、以前と建物の構造が変わっているようだ。
案内された扉の先には、部屋というには広い空間が広がり、中央に円形の舞台が設置されていた。ぐるりと囲むように客席まであり、闘技場のようだ。客席はすでに多くのギャラリーで埋め尽くされている。
突然辺りが真っ暗になり、雪乃たちは警戒を強めた。
「おや? 早かったね」
声に顔を向けると、スポットライトが舞台上に立つ一組の男女を浮き立たせている。
赤いバラを咥えてウィンクする、金髪碧眼の濃厚なソース顔の男。筋肉は並より多めといったところか。この世界では珍しくない筋肉量で、自慢することはできないレベルだ。白いタキシードの襟元からは、フリルまみれのシャツが覗く。
ソース顔の男にエスコートされている女は、目尻が釣りあがってきつい印象を与える美女だ。
ラメの入った紫のアイシャドーに真っ赤な口紅と、勝気な面立ちを更に強く印象付けさせる。駄目押しとばかりに、黒と赤の混じるドレスと羽扇で武装している。情熱的なダンスが似合いそうだ。
ベクターが扉の中に戻ると、壁を覆う蔓性魔植物の一部が盛り上がった。何かがごんごんと叩く音がしているが、特にそれ以上の動きはない。
何が起こるのだろうと雪乃たちが見守っていると、再びベクターが出てきて、盛り上がっている蔓性魔植物たちを水魔法で切り刻み、すぐに帰っていった。よく見ると、耳が赤くなっている。
扉の向こうに消えるベクターを、雪乃たちは静かに見送ってから、彼が攻撃した場所へと視線を戻す。
壁を覆っていた蔓性植物が消え、大きな扉が開いた。そこから出てきたのは、色取り取りの花々だった。
草丈はムダイやナルツたちよりも少し高いくらいだろうか。肉厚の花びらは、赤や黄など毒々しいまでに鮮やかだ。ぷっくりとしたタラコ唇からはみ出た大きな舌、奥に見える鋭い牙。
錆びた鉄が軋むような不快な音を立てながら次々と扉から出てきたのは、カマーフラワー御一行である。
「圧巻ですね」
雪乃は思わず呟いた。
一匹ずつだと少し引く外見だが、群になると、
「悪夢にうなされそうなんだけど?」
と顔をしかめるムダイに、全員一致で頷いた。
などと言っている間に、あふれ出たカマーフラワーの波が迫ってくる。剣を抜いたムダイとナルツが飛び出し、瞬く間に切り伏せていったが。
「ギ、ギギー」
茎を寸断され花びらを散らせたカマーフラワーが、恨めしそうに鳴く。
「多いですね。ここで無駄に体力を使うこともないでしょう。下がって」
マグレーンの声で、ムダイとナルツはすぐに後退する。入れ違うように水の塊がカマーフラワーたちを襲い、そのまま彼らが出てきた部屋へと押し流していった。
蔓性魔植物たちも巻き込んだようで、玄関ホールは以前の白く清潔な空間に戻った。
雪乃たちは奥へと進んで行く。
ちらりとカマーフラワーが押し戻された部屋を見ると、カマーフラワーたちが高密度でぎっしりと詰まっていた。とてもあの狭い空間に待機させられていたとは思えない量である。
どうやら転移装置が設置されていた部屋を利用して、送り込んできていたようだ。
「転移先に設置されている魔法陣の中央部に生体反応があると起動しないから、これ以上は送り込まれてこないよ。……アレが生体反応として認識されていることに少し驚いているけど」
マグレーンの説明に頷きながら、雪乃たちは進んでいく。しかしどこに向かえばよいのか分からないので、受付カウンターに戻ることにした。
無人のカウンターだが、奥の扉の向こうにビクターがいることは分かっている。
ムダイが軽くノックする。反応は無い。もう一度ノックるする。やはり反応は無い。押しても引いても動かない。
ということで、仕方なく扉を斬った。仕方なくだ。
「なっ?! 関係者以外、立ち入り禁止ですよ?!」
ラーメンを食べていたビクターが、驚きながら振り返った。
魔王の根城に勇者一行が攻めてきているにも関わらず平然と食事をしているビクターを前に、呑気なことだとナルツとマグレーンは呆れるが、雪乃とムダイの気持ちは違った。
「ラーメン、だと?!」
額に一筋の汗を滴らせ、驚愕に打ち震えるムダイ。
ビクターに対して眉をひそめていたナルツとマグレーンは、ぽかんとした顔をムダイへ向ける。この状況で食べているものに興味を示すムダイは余裕なのか、それともずれているのかと少々判断に困った。
おそらく両方だろう。
同じように反応を示しそうな雪乃は、ムダイほど驚いていない。なぜなら雪乃はルグ国で、すでにキートバソという、ラーメンに近い麺類を見つけていた。とはいえ興味が無いわけではない。
「くっ! 長年探したラーメンが、ラジンにあったなんて! しかもインスタント!」
「何味でしょう? 醤油も味噌も大陸では見ませんでしたから、やはり塩でしょうか?」
悔しがって床を殴るムダイの脇で、雪乃はきらきらと葉をきらめかせてラーメンを見つめていた。
「あ、あげませんよ? それとこれは、ナンバーワンサッポーです」
どんぶりを隠すように引き寄せて、ビクターは言い放つ。ずるずると麺をすすることも忘れない。
ムダイと雪乃は固まった。ナンバーワン、そしてサッポー……。
「味噌味?」
思わず顔を見合わせる雪乃とムダイ。
「ムダイさん!」
「雪乃ちゃん!」
熱く見つめあい、手を取り合う元日本人二人。混沌としてきたところで、ひょいっと雪乃は宙に浮かんでいく。幹を捻って後ろを見ると、カイが抱き上げていた。
「よく分からんが、後にしろ」
「はい」
雪乃とムダイは揃ってしょんぼり反省した。
大人しくなった雪乃とムダイを部屋の外へ放り出し、ナルツの尋問が始まる。騎士として務めていたナルツは慣れた様子で、開始三分も経たずに尋問を終えた。
「彼が案内してくれるそうだよ」
爽やかな笑顔で現れたナルツの後ろには、顔を引きつらせたカイとマグレーンの姿が見える。
ナルツの説得を受けたビクターは、素直に雪乃たちを奥へと案内する。尋問により怯えながらかと思いきや、ナルツにうっとりとした熱い眼差しを送っていた。
何があったのかは、雪乃は敢えて聞かなかった。
ビクターが向かったのは、ノムルの部屋ではなく雪乃が行ったことのない場所だった。というより改装されたのか、以前と建物の構造が変わっているようだ。
案内された扉の先には、部屋というには広い空間が広がり、中央に円形の舞台が設置されていた。ぐるりと囲むように客席まであり、闘技場のようだ。客席はすでに多くのギャラリーで埋め尽くされている。
突然辺りが真っ暗になり、雪乃たちは警戒を強めた。
「おや? 早かったね」
声に顔を向けると、スポットライトが舞台上に立つ一組の男女を浮き立たせている。
赤いバラを咥えてウィンクする、金髪碧眼の濃厚なソース顔の男。筋肉は並より多めといったところか。この世界では珍しくない筋肉量で、自慢することはできないレベルだ。白いタキシードの襟元からは、フリルまみれのシャツが覗く。
ソース顔の男にエスコートされている女は、目尻が釣りあがってきつい印象を与える美女だ。
ラメの入った紫のアイシャドーに真っ赤な口紅と、勝気な面立ちを更に強く印象付けさせる。駄目押しとばかりに、黒と赤の混じるドレスと羽扇で武装している。情熱的なダンスが似合いそうだ。
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