異聞対ソ世界大戦

みにみ

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対ソ連戦争開戦

精鋭の駆る純白

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1941年6月23日、午前6時15分。満州国境上空。

海軍航空隊屈指の実戦経験を持つ第一航空隊の戦闘機隊が分離
再編成された満州方面特設海軍航空隊、通称「特設一空戦闘機隊」は
加藤少佐率いる陸軍飛行第64戦隊の窮地を救うべく、ソ連軍大編隊の真っただ中に突入した。

彼らの指揮官、室戸少佐は、かつて九六式艦上戦闘機を駆り
中国大陸で圧倒的な戦果を挙げた「一空」のエースであった。
その戦闘機隊は、零戦86機という
当時の日本海軍で最も充実した戦力を極東に展開させていた。

「全機、急降下雷撃の要領で突っ込め!獲物はIL-2だ!
 奴らの装甲を20ミリで引き裂け!」
室戸少佐の鋭い命令が、無線機を通じて全機に響き渡った。

零戦隊は太陽を背に、高高度から猛烈な速度で降下した。
その圧倒的な速度差と、20mm機関砲という強力な火力が
低空で緩慢な動きを強いられるソ連のIL-2攻撃機にとって、絶対的な恐怖となった。


最初にIL-2を叩いたのは、室戸少佐機自身だった。彼はIL-2の胴体を一瞬で捉え、機関砲を浴びせた。

ダダダダダッ!

20mm機関砲弾が命中した瞬間、IL-2の主翼付け根の防弾鋼板は
まるで紙のように引き裂かれた。黒煙とともに対地攻撃機が火を噴き
爆弾を投下する間もなく制御不能に陥る。

「第一目標、撃破!」

特設一空の零戦は、その強力な火力でIL-2の防御を無力化し
次々と「空飛ぶ戦車」を仕留めていった。ソ連のパイロットたちは
信じられない光景を目の当たりにした。
これまで陸軍機の非力な機銃しか知らなかった彼らにとって
この海軍機が持つ「致命的な爪」は、想定外の脅威だった。


ソ連軍護衛戦闘機隊の指揮官は、この海軍機の出現が
「ラズルーシェニエ・モルニイ作戦」の最大の危機だと判断した。
Yak-1とLaGG-3の護衛戦闘機は、IL-2を捨て、零戦へと襲いかかった。

空戦は、互いのエースの技量が試される高度な技術戦へと発展した。

零戦の最も恐るべき武器の一つは、「極小旋回」であった。
零戦隊のパイロットは、敵機に追い詰められると、戦闘フラップを瞬時に展開させた。

キュルルル…!

急激に増大した揚力によって、零戦は信じられないほどの
小さな旋回半径でターンし、追尾していたソ連のYak-1の機首を瞬時に通り過ぎ、背後へと回り込んだ。

「馬鹿な!こんな旋回は不可能だ!」

Yak-1のパイロットが驚愕する間もなく、零戦は射撃態勢に入り、機銃弾を浴びせた。
ソ連機は、高速性能こそ勝るものの
この驚異的な低速での旋回性能の前には、完全に無力だった。


ソ連のLaGG-3が、零戦の射線上に捉え、発砲する瞬間。
零戦のパイロットは、ラダー(方向舵)を思い切り踏み込み
横滑りという高等技術を使った。

機体は一時的に射線を外れ、ソ連機の弾道を回避する。
同時に速度が急減し、ソ連機は零戦を追い越してしまう。
そしてオーバーシュートして失速したソ連機の背後を奪い返すことに成功した。


室戸少佐自身は、ソ連のエースと一対一の対決に挑んでいた。
ソ連機が上方から攻撃を仕掛けてきた際
室戸少佐は、零戦の長所である優れた上昇力を活かし、「捻り込み」の機動を実行した。

機首を激しく引き起こしつつ、ソ連機の懐に入り込み、機体を捻るようにして急上昇。
ソ連機が射線から外れると同時に、零戦は一気に高度優位を確保し
再び急降下による一撃離脱戦法へと移行した。

これらの熟練者しかまともに扱えない高度なテクニックによって
零戦隊は数では劣るものの、ソ連の護衛戦闘機を次々と撃破していった。


空戦の激化と同時に、地上の「イカヅチ」防衛線も機能していた。

試製SG対空電波探知機に守られたアメリカ製対空機関砲と高射砲が
低空に逃げようとするIL-2への猛烈な弾幕を張り続けた。
IL-2の強固な装甲も、多連装の対空砲火の集中には耐えられず
エンジンの冷却系や燃料タンクに被弾し、次々と炎上した。

陸軍飛行第64戦隊の隼隊は、海軍の零戦隊がIL-2を叩いている間に
高空でソ連護衛機の残党を巧みに引きつけ、ドッグファイトを継続。
隼の優れた運動性が、零戦隊に攻撃の自由を与えた。

「ゼロの奴ら、本当に化け物だ!あの機動は我々の隼にもできん!」
加藤少佐は零戦の戦いぶりを見て戦慄しつつ、自身の戦隊に最後の予備機を投入するよう命じた。


零戦と対空砲火の猛攻により、IL-2攻撃機の大編隊は致命的な損害を被った。

32機いたIL-2のうち、半数以上が目標に到達することなく撃墜された。

生き残った数機が辛うじて「イカヅチ」周辺に爆弾を投下したが
40cm榴弾砲には至近弾では全く効果がなかった。

午前7時00分。ソ連の「ラズルーシェニエ・モルニイ作戦」の指揮官は
60機もの大戦力のうち、すでに40機以上が撃墜または大破炎上したことを悟った。
IL-2の主力が失われ、護衛機も激減した今、作戦の続行は無意味な消耗を増やすだけであった。

ヴォロシロフ元帥は、極東戦線総司令部で
再びモスクワから粛清の影が迫るのを感じながらも、撤退の苦渋の決断を下した。


ソ連軍の残存機は、尾を巻いて国境の向こうへと逃げ去った。

満州の空には、零戦と隼だけが悠然と旋回していた。
この航空決戦は、日本軍の完全なる勝利に終わった。

零戦隊の室戸少佐は、加藤少佐の隼機へと近づき、翼を振って敬礼した。

「陸軍殿、無事、任務完了だ。貴官らの働きで、我々は自由に動けた。イカヅチは守られたぞ」

「感謝する、海軍少佐殿。あなたの部隊は、まさに天からの援軍だった…!」
加藤少佐は、零戦の持つ真の破壊力を目の当たりにし、その脅威を改めて痛感していた。

「イカヅチ」は守られた。このことは、極東での地上攻勢が
ソ連軍の圧倒的な物量ではなく、日米英の技術と日本の高度な技量
そして火力の優位性によって決定されることを意味していた。

ソ連軍は、地上で「鉄の悪魔」に、空で「鋼鉄の翼」に阻まれ
満州国境への突破口を開くことはできなかった。
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