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沖縄沖の鎮魂歌
潜水艦の報告
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鹿児島県沖の南東方面の海に展開していた
米潜水艦USSフルパック (SS-229)は
レーダーに突如として現れた光点群に、静かな緊張を走らせていた。
それは、九州の基地から次々と飛び立つ、日本の航空機編隊だった。
「艦長、レーダーに多数の反応!
北西方向から、沖縄方面へ向かっています!」
潜望鏡で空を見上げても、漆黒の闇に何も見えない。
しかし、彼らのレーダーは、日本の航空機編隊を正確に捉えていた。
「直ちにミッチャー提督に打電せよ!
『敵攻撃隊発見。沖縄方面に約50機向かう』と。至急だ!」
潜水艦長は、冷静に指示を出した。
しかし、夜間のレーダー探知と距離の関係から、
彼は実際の機数を正確に把握できていなかった。
日本の航空部隊は、実際には100機近い大編隊だったが、
フルパックの報告は「約50機」という誤認を含んでいた。
この情報の齟齬が、その後の戦況に大きな影響を与えることになる。
第58任務部隊を沖縄南方60kmまで避退させていた
ミッチャー提督のもとには、フルパックからの緊急打電が届いた。
「提督! 潜水艦フルパックより入電!
日本の攻撃隊が沖縄方面へ向かっているとのことです! 約50機とのこと」
報告を受けたミッチャーの顔に、わずかな焦燥が浮かんだ。
彼の第58任務部隊は、前日の日本の航空攻撃によって空母戦力が事実上半壊し
貴重な艦載機の多くが失われていた。加えて
残る艦載機も、自艦の防空と次の攻撃に備えるため、温存しなければならなかった。
しかし、彼の脳裏には、戦闘機の傘のない第54任務部隊の姿が浮かんだ。
デヨ少将率いる第54任務部隊は、旧式戦艦が主体であり
航空援護のない状態で、数が少なくとも特攻部隊と艦砲射撃が同時に襲い掛かれば
流石の合衆国戦艦部隊も相応の被害を受けると考えていた。
それは、彼の艦隊が既に甚大な損害を受けている今
絶対に避けなければならない事態だった。
「参謀たちを招集せよ!」
ミッチャーは、緊急の作戦会議を開いた。参謀たちは
疲労困憊の表情で集まったが、彼らの顔には
この状況を打開しようとする決意が固く刻まれていた。
「日本の攻撃隊は50機と報告されている。
しかし、デヨ提督の部隊は、我々のような航空援護がない。
艦隊決戦と航空攻撃が同時に行われれば、デヨ提督の部隊は持つまい」
ミッチャーは、ホワイトボードに示された戦況図を睨みつけながら、そう言った。
参謀の一人が進言した。
「しかし提督、残る艦載機も、自艦の防空にも必要な数です。
これ以上、航空戦力を投入すれば、我々の艦隊の防空能力が低下します」
「承知している」ミッチャーは頷いた。
「だが、デヨ提督の部隊を犠牲にするわけにはいかん。
もし彼らが壊滅すれば、沖縄戦の趨勢すら危うくなる」
彼らは、残る航空母艦から投入できる艦載機の数を慎重に検討した。
ベローウッド (CVL-24)、サンジャシント (CVL-30)といった軽空母
そして主力空母であるエセックス (CV-9)、バンカーヒル (CV-14)といった艦から
緊急発艦可能な機体を算出した。
「敵特攻部隊が50機なのなら、30機で対応可能と考える」
最終的に、ミッチャーは
F6F-5 ヘルキャット20機、F4U-4 コルセア10機を投入することを決定した。
これは、自艦の防空に必要な最低限の数を残しつつ
デヨ提督の艦隊への援護を最大限に考慮した結果だった。
決して十分な数とは言えないが、この30機が
来るべき艦隊決戦の行方を左右する、最後の航空戦力となるだろう。
「全機、直ちに発艦準備! 沖縄沖へ向かえ!」
ミッチャーの命令が、各空母に伝達された。
夜明け前にもかかわらず、残ったCVL-24ベローウッド
CVL-30サンジャシント、CV-9エセックス、CV-14バンカーヒルの飛行甲板は
活気に満ちていた。
機関員たちは、徹夜で整備を続けてきたヘルキャットやコルセアを
カタパルトへと押し出す。パイロットたちは、ヘルメットを被り
コックピットへと乗り込んでいく。彼らの顔には
疲労と緊張が色濃く浮かんでいたが、その瞳の奥には
友軍を救うという使命感と、敵機を撃墜するという闘志が燃え上がっていた。
「発艦用意!」
「カタパルト、射出!」
轟音と共に、ヘルキャットとコルセアが
次々と夜の闇の中へと飛び立っていく。
彼らは、日本の特攻部隊を迎え撃ち
デヨ提督の艦隊を守るという、極めて重要な任務を帯びていた。
こうして、夜明け前の沖縄沖の空では、両陣営から航空部隊が投入され、
来るべき艦隊決戦の場へと向かっていった。
日本の陸軍特攻部隊は、第二艦隊の援護と
自らの命を賭した一撃を与えるべく、米艦隊へと突き進む。
そして、ミッチャーの苦渋の決断によって送り出された米海軍機は
デヨ提督の艦隊を守るべく、日本の特攻部隊を迎え撃つ。
砲火が交錯する直前の静寂の中、空には
それぞれの国の運命を乗せた航空機が、猛然と
しかし静かに、そして確実に、艦隊決戦の場へと向かっていた。
それは、史上最後の艦隊決戦における、予期せぬ航空戦の再開でもあった。
米潜水艦USSフルパック (SS-229)は
レーダーに突如として現れた光点群に、静かな緊張を走らせていた。
それは、九州の基地から次々と飛び立つ、日本の航空機編隊だった。
「艦長、レーダーに多数の反応!
北西方向から、沖縄方面へ向かっています!」
潜望鏡で空を見上げても、漆黒の闇に何も見えない。
しかし、彼らのレーダーは、日本の航空機編隊を正確に捉えていた。
「直ちにミッチャー提督に打電せよ!
『敵攻撃隊発見。沖縄方面に約50機向かう』と。至急だ!」
潜水艦長は、冷静に指示を出した。
しかし、夜間のレーダー探知と距離の関係から、
彼は実際の機数を正確に把握できていなかった。
日本の航空部隊は、実際には100機近い大編隊だったが、
フルパックの報告は「約50機」という誤認を含んでいた。
この情報の齟齬が、その後の戦況に大きな影響を与えることになる。
第58任務部隊を沖縄南方60kmまで避退させていた
ミッチャー提督のもとには、フルパックからの緊急打電が届いた。
「提督! 潜水艦フルパックより入電!
日本の攻撃隊が沖縄方面へ向かっているとのことです! 約50機とのこと」
報告を受けたミッチャーの顔に、わずかな焦燥が浮かんだ。
彼の第58任務部隊は、前日の日本の航空攻撃によって空母戦力が事実上半壊し
貴重な艦載機の多くが失われていた。加えて
残る艦載機も、自艦の防空と次の攻撃に備えるため、温存しなければならなかった。
しかし、彼の脳裏には、戦闘機の傘のない第54任務部隊の姿が浮かんだ。
デヨ少将率いる第54任務部隊は、旧式戦艦が主体であり
航空援護のない状態で、数が少なくとも特攻部隊と艦砲射撃が同時に襲い掛かれば
流石の合衆国戦艦部隊も相応の被害を受けると考えていた。
それは、彼の艦隊が既に甚大な損害を受けている今
絶対に避けなければならない事態だった。
「参謀たちを招集せよ!」
ミッチャーは、緊急の作戦会議を開いた。参謀たちは
疲労困憊の表情で集まったが、彼らの顔には
この状況を打開しようとする決意が固く刻まれていた。
「日本の攻撃隊は50機と報告されている。
しかし、デヨ提督の部隊は、我々のような航空援護がない。
艦隊決戦と航空攻撃が同時に行われれば、デヨ提督の部隊は持つまい」
ミッチャーは、ホワイトボードに示された戦況図を睨みつけながら、そう言った。
参謀の一人が進言した。
「しかし提督、残る艦載機も、自艦の防空にも必要な数です。
これ以上、航空戦力を投入すれば、我々の艦隊の防空能力が低下します」
「承知している」ミッチャーは頷いた。
「だが、デヨ提督の部隊を犠牲にするわけにはいかん。
もし彼らが壊滅すれば、沖縄戦の趨勢すら危うくなる」
彼らは、残る航空母艦から投入できる艦載機の数を慎重に検討した。
ベローウッド (CVL-24)、サンジャシント (CVL-30)といった軽空母
そして主力空母であるエセックス (CV-9)、バンカーヒル (CV-14)といった艦から
緊急発艦可能な機体を算出した。
「敵特攻部隊が50機なのなら、30機で対応可能と考える」
最終的に、ミッチャーは
F6F-5 ヘルキャット20機、F4U-4 コルセア10機を投入することを決定した。
これは、自艦の防空に必要な最低限の数を残しつつ
デヨ提督の艦隊への援護を最大限に考慮した結果だった。
決して十分な数とは言えないが、この30機が
来るべき艦隊決戦の行方を左右する、最後の航空戦力となるだろう。
「全機、直ちに発艦準備! 沖縄沖へ向かえ!」
ミッチャーの命令が、各空母に伝達された。
夜明け前にもかかわらず、残ったCVL-24ベローウッド
CVL-30サンジャシント、CV-9エセックス、CV-14バンカーヒルの飛行甲板は
活気に満ちていた。
機関員たちは、徹夜で整備を続けてきたヘルキャットやコルセアを
カタパルトへと押し出す。パイロットたちは、ヘルメットを被り
コックピットへと乗り込んでいく。彼らの顔には
疲労と緊張が色濃く浮かんでいたが、その瞳の奥には
友軍を救うという使命感と、敵機を撃墜するという闘志が燃え上がっていた。
「発艦用意!」
「カタパルト、射出!」
轟音と共に、ヘルキャットとコルセアが
次々と夜の闇の中へと飛び立っていく。
彼らは、日本の特攻部隊を迎え撃ち
デヨ提督の艦隊を守るという、極めて重要な任務を帯びていた。
こうして、夜明け前の沖縄沖の空では、両陣営から航空部隊が投入され、
来るべき艦隊決戦の場へと向かっていった。
日本の陸軍特攻部隊は、第二艦隊の援護と
自らの命を賭した一撃を与えるべく、米艦隊へと突き進む。
そして、ミッチャーの苦渋の決断によって送り出された米海軍機は
デヨ提督の艦隊を守るべく、日本の特攻部隊を迎え撃つ。
砲火が交錯する直前の静寂の中、空には
それぞれの国の運命を乗せた航空機が、猛然と
しかし静かに、そして確実に、艦隊決戦の場へと向かっていた。
それは、史上最後の艦隊決戦における、予期せぬ航空戦の再開でもあった。
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