炎の魔獣召喚士

平岡春太

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最終章 戦いの果てに

 第九話 暴走

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 炎帝が放った炎の塊がフラムに向かう。

「シュネーラヴィーデン!」

 アインベルクの声に反応した氷帝が口から吐いた氷の塊が勢い良く炎帝が放った炎の塊に直撃する。
 激しい水蒸気の爆発が起こり、直ぐ近くに居るフラムは堪えようとするも、吹っ飛ばされる。
 その先にフリードが素早く廻り込んで受け止め、アインベルクとシャルロアは錫杖を地面に突き立てて目の前に氷の壁を作り、爆風を堪える。

「一体何がどうなってんの?」
「困った事になりましたね。どうやら炎帝はあなたを認めていないようです」
「それってどうなるんです?」
「認められないまま召喚すると、炎帝には自我がありませんから━━」

 炎帝は四方八方に見境なく炎の塊を次々と吐き出し始めた。

「おいおい、暴れ出したぜ。これじゃあケイハルトどころじゃないぞ」
「お母様?」

 アインベルクは駆け出し、氷帝の体を駆け上がって頭上に戻るなり炎帝の元へと急ぐ。
 それに気付いた炎帝は、近付いて来る氷帝に向かって火炎放射の様に炎を噴き出して迎え撃つ。
 それに合わせて氷帝も上昇しつつ冷気を吐き、激しい激突が再び水蒸気爆発を起こす。
 周りが濃い霧に包まれる中、炎帝と氷帝が縺れつつ飛び出して来る。

「やはり無理だったか」

 激しい炎帝と氷帝の戦いにビエントが気を取られ、風の力が弱まった隙を突いて雷帝が風の渦から逃れる。
 雷帝の頭上に居るケイハルトは高笑いを上げる。

「これは滑稽こっけいだな。あんな娘が炎帝を召喚したのは誉めてやるが、認められてはいないようだな。このまま暴走すれば、雷帝が手を出すまでもなく炎帝がこのダルメキアの破壊者となろう」
「させるものか」

 ビエントが風帝を巡らせるが、その行く手に雷帝が廻り込んで立ちはだかる。

「何処に行くつもりだ? お前は私を止めに来たのだろう。いや、どうやら立場が逆になったようだな」

 愉快そうに笑うケイハルトとは逆に、ビエントの顔は苦渋に満ちて行く。
 地帝の頭上で胡坐をかくルシェールも、渋い面持ちだった。

「全く、余計な事をしおって」
「何かあったのですか? 先程の咆哮かなりの魔獣が新たに現れたようですが」
「今のは炎帝の叫び声じゃ」
「炎帝? ヴァルカン様は亡くなっているはずですが」
「呼び出したのはフラムじゃよ」
「フラムが?」
「ほう、先程の話と言い、フラムを知っておるようじゃな」
「ええ、まあ……」
「気にするな。どう言う関係かは訊きもすまい。儂は興味もないからのお。それよりもフラムに炎帝を召喚させるとは、エライ事をしてくれたな、あの二人は」
「二人? ビエント様とアインベルク様の事ですか? でも、炎帝が召喚されたのはいい事では?」
「炎帝を召喚させたのは褒めてやっても良い。ただ召喚するだけならじゃ。じゃが、炎帝に認められてはおらんようじゃな」
「認められなければどうなるんです?」
「本来、五帝は他の魔獣とは違い、術士とは対等の立場にあると言ってよい」
「対等……」
「それは、普通の魔獣が操縛の印で力で主従させるのに対し、五帝はその相手が自分の主たるかどうかを認めさせる事にあるからじゃ。そして、その為には二つの方法がある」
「二つ?」
「一つは主が居ない時、もしくは現主を殺し、五帝に直接力を示すこと。もう一つは現主が譲渡する場合、その相手が召喚した時、その者が力量があるかじゃ。勿論フラムは後者じゃろう」
「では、フラムには力量がないと?」
「今はな」
「それで、炎帝はどうなると?」
「力量を持たぬ主の下では五帝は自我を失い暴走するのじゃ」
「暴走!?」

 ラファールは思わず見上げるが、当然目の周りは包帯が巻かれていて見えるはずがない。

「このままじゃとケイハルトが何もしなくとも炎帝がこのダルメキアを焦土と化すであろうな」
「何か手は?」
「炎帝の自我を呼び醒ませれば何とかなるやもしれんが、そう簡単な話ではないぞ」
「この地帝でもですか?」

 ラファールには見えていないが、ルシェールは首を横に振る。

「地帝は大柄な体もあって、攻撃の大きさは五帝の中では随一じゃ。じゃがその反面遅さもまた随一じゃ。他の五帝の動きに合わせて直接攻撃を当てるのはほぼ不可能と言って良い。その上、風帝は雷帝に手を取られておるのじゃ。簡単ではなかろう」
「では……」
「あとは氷帝とフラム達に任せるしかないのお」

 ラファールの視線が地上に向けられる。
 見えてはいないはずのその視線の先には、フラム達の姿があった。
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