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最終章 戦いの果てに
第十九話 覚醒
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「どう言う事だ? 今までケイハルトに当たらなかった攻撃が当たっている」
風帝の頭上から二人の戦いを傍観するビエントが、目を丸くする。
「迷いが消えたのですよ」
これは同じく氷帝の頭上から傍観するアインベルクだ。
「迷いが消えた?」
「先程ケイハルトと戦っていたフラムは、怒りや恨みを増幅させないように力を押さえて戦っていたのです。それが今は、力を抑える事なく戦えているのですよ」
「ほう、怒りと恨みを抑える術を身に着けたと?」
「それはどうでしょう。抑えると言うよりは考えを変えたと言うべきでしょうか」
「なるほど。理由はどうであれ、本来の力で戦えていると言う訳か。それに気付かないケイハルトは、動きが出遅れる訳だな」
「元々あの子もルディア様の血を継いでいるのです。素質も魔力の大きさもあって然り。それにあの戦い方、誰かに似ていると思いませんか?」
「確かに。血は争えないようだな。今の我々で勝てるか?」
「まだまだ負けませんよ。ただ、あの子はまだまだ強くなりそうですから、この先は分かりませんね」
「ほう、珍しく弱気な」
「誰がですか? 私はまだ負けないと言ったんですよ。それとも、あなたは負けますか?」
「前言撤回だ」
フラムが炎に包まれた刃でケイハルトに斬り掛かる。
ケイハルトがそれを受けた所で炎に冷気を送り込み、小さな水蒸気爆発を起こす。
一瞬ケイハルトが怯んだ隙を突き、もう片方の刃を切り上げる。
何とかそれも寸前で躱して見せるが、ケイハルトの頬には一筋の傷が走った。
「この私に傷を……」
「そんな傷、今まであんたのせいで死んでいった人々や、大切な人を失った人々に比べたら、大した事はないはずよ」
「小娘風情が私に説教か。それにしても、お前の戦い方を見ていると忌々しいあいつを思い出す」
「あいつ?」
「エルベルト、お前の父親だ」
「お父さんに? そもそもどうしてあんたはお父さんをそんなに憎んでいるわけよ?」
「才能だ」
「才能?」
「私は父上の子供でありながら特異質ではなく、エルベルトは特異質だった。その上、技量においても天賦の才があった。なのにあいつは、家族が出来た途端、一線を退いて片田舎で暮らす道を選んだ」
「良かったじゃないの。その御蔭であんたは五賢人になれたんじゃないのよ」
「それだ」
寒気を覚えるほどの鋭い目を向けられ、さすがにフラムも怯む。
「雷の魔獣召喚士に据えられ、五賢人と持て囃されはしたが、エルベルトが居る限りそれは全ておこぼれでしかないと、いつも卑屈に生きて来たのだ」
「だから幼い私を使って、卑怯な手で私の両親を殺したって言うの? 逆恨みもいいとこよ」
「ああ、そうだ。これは逆恨みだ。そして、父上が愛し、エルベルトが愛したこのダルメキアが消えれば、我が恨みが全て晴れると言うもの」
「呆れた。あんたと血縁だなんて、こっちが恥ずかしくなるわ。絶対にそんな事、私がさせるものですか。あいつとの約束だから」
「あいつ? ああ、迅速のフリードか。ならば、その約束も水泡と化してやる。お前との遊びももう飽きたからな。ライディシュラーク!」
雷帝が一筋の雷を吐き出し、右に左にと首を振り、辺り構わず破壊を始めた。
地上に残っている兵士達は逃げ惑う。
「そのままダルメキアを焼け野原にしてやれ」
「させないと言ってるでしょう」
炎帝が体当たりをして、ケイハルトとフラムを激しい振動が襲う。しかし、雷帝の口から吐かれる雷は止まらない。
「苦し紛れの体当たりか。しかし、お前もここに居ては、炎を吐くことも出来まい。巻き込まれるからな」
フラム自身もヴァイトで雷帝の頭を刺そうとするが、雷帝が動く度にバランスが取れず、立っているのがやっとだ。
ただ、その場を動けないのはケイハルトも同じだ。
「構わないわ。炎を吐いて!」
「お止めなさい!」
炎帝が口を開くより早くアインベルクの声が飛んで来た直後、雷帝の雷が止んだ。
雷帝の口の周りを氷が包んでいた。更に、雷帝の体を氷の鎖が幾重にも巻かれて動きを縛り、その両端を氷帝と風帝が掴んで引き絞っている。
「無駄な事を」
直ぐに口の周りを包む氷に亀裂が走り、砕け散ってしまった。
体は縛られたままだが、再び大きく開いた雷帝の口に、閃光が大きく光を灯す。しかし、それが吐き出されるより早く、地上から飛んで来た大きな岩が、丁度口の中に納まって塞いだ。
そこに再び口の周りを氷が覆う。
「ルシェールか」
ケイハルトの苦渋の顔が、地帝の頭上に居るルシェールに向けられる。
「動きが止まっていては、地帝でも狙いをつけるのは容易いからのお」
とは言え、地帝が大岩を放ったのは、氷帝が攻撃を仕掛ける前だ。
お互いに次はこう動くだろうと予測と長年の信頼があるからこそ出来た攻撃だろう。
轡の様に口が大岩で塞がっていては、覆っている氷を砕くことも出来ない。
「こちらは任せなさい!」
アインベルクに笑みで頷いて応えると、フラムはケイハルトに向き直る。
「残念ね。こちらには五賢人が三人もいるのよ」
「残念だと? 笑わせるな。雷帝が抑えられたことも考えて、最後の手は残してある」
「最後の手?」
「幾ら頭数が居ようと、どうしようもない手がな」
ケイハルトの体から無数の放電が見られ、その体が光り始めている。
「まさか!」
フラムは慌てて駆け出したが、叫び声を上げたケイハルトの体から一気に放出された雷の力に吹っ飛ばされた。
風帝の頭上から二人の戦いを傍観するビエントが、目を丸くする。
「迷いが消えたのですよ」
これは同じく氷帝の頭上から傍観するアインベルクだ。
「迷いが消えた?」
「先程ケイハルトと戦っていたフラムは、怒りや恨みを増幅させないように力を押さえて戦っていたのです。それが今は、力を抑える事なく戦えているのですよ」
「ほう、怒りと恨みを抑える術を身に着けたと?」
「それはどうでしょう。抑えると言うよりは考えを変えたと言うべきでしょうか」
「なるほど。理由はどうであれ、本来の力で戦えていると言う訳か。それに気付かないケイハルトは、動きが出遅れる訳だな」
「元々あの子もルディア様の血を継いでいるのです。素質も魔力の大きさもあって然り。それにあの戦い方、誰かに似ていると思いませんか?」
「確かに。血は争えないようだな。今の我々で勝てるか?」
「まだまだ負けませんよ。ただ、あの子はまだまだ強くなりそうですから、この先は分かりませんね」
「ほう、珍しく弱気な」
「誰がですか? 私はまだ負けないと言ったんですよ。それとも、あなたは負けますか?」
「前言撤回だ」
フラムが炎に包まれた刃でケイハルトに斬り掛かる。
ケイハルトがそれを受けた所で炎に冷気を送り込み、小さな水蒸気爆発を起こす。
一瞬ケイハルトが怯んだ隙を突き、もう片方の刃を切り上げる。
何とかそれも寸前で躱して見せるが、ケイハルトの頬には一筋の傷が走った。
「この私に傷を……」
「そんな傷、今まであんたのせいで死んでいった人々や、大切な人を失った人々に比べたら、大した事はないはずよ」
「小娘風情が私に説教か。それにしても、お前の戦い方を見ていると忌々しいあいつを思い出す」
「あいつ?」
「エルベルト、お前の父親だ」
「お父さんに? そもそもどうしてあんたはお父さんをそんなに憎んでいるわけよ?」
「才能だ」
「才能?」
「私は父上の子供でありながら特異質ではなく、エルベルトは特異質だった。その上、技量においても天賦の才があった。なのにあいつは、家族が出来た途端、一線を退いて片田舎で暮らす道を選んだ」
「良かったじゃないの。その御蔭であんたは五賢人になれたんじゃないのよ」
「それだ」
寒気を覚えるほどの鋭い目を向けられ、さすがにフラムも怯む。
「雷の魔獣召喚士に据えられ、五賢人と持て囃されはしたが、エルベルトが居る限りそれは全ておこぼれでしかないと、いつも卑屈に生きて来たのだ」
「だから幼い私を使って、卑怯な手で私の両親を殺したって言うの? 逆恨みもいいとこよ」
「ああ、そうだ。これは逆恨みだ。そして、父上が愛し、エルベルトが愛したこのダルメキアが消えれば、我が恨みが全て晴れると言うもの」
「呆れた。あんたと血縁だなんて、こっちが恥ずかしくなるわ。絶対にそんな事、私がさせるものですか。あいつとの約束だから」
「あいつ? ああ、迅速のフリードか。ならば、その約束も水泡と化してやる。お前との遊びももう飽きたからな。ライディシュラーク!」
雷帝が一筋の雷を吐き出し、右に左にと首を振り、辺り構わず破壊を始めた。
地上に残っている兵士達は逃げ惑う。
「そのままダルメキアを焼け野原にしてやれ」
「させないと言ってるでしょう」
炎帝が体当たりをして、ケイハルトとフラムを激しい振動が襲う。しかし、雷帝の口から吐かれる雷は止まらない。
「苦し紛れの体当たりか。しかし、お前もここに居ては、炎を吐くことも出来まい。巻き込まれるからな」
フラム自身もヴァイトで雷帝の頭を刺そうとするが、雷帝が動く度にバランスが取れず、立っているのがやっとだ。
ただ、その場を動けないのはケイハルトも同じだ。
「構わないわ。炎を吐いて!」
「お止めなさい!」
炎帝が口を開くより早くアインベルクの声が飛んで来た直後、雷帝の雷が止んだ。
雷帝の口の周りを氷が包んでいた。更に、雷帝の体を氷の鎖が幾重にも巻かれて動きを縛り、その両端を氷帝と風帝が掴んで引き絞っている。
「無駄な事を」
直ぐに口の周りを包む氷に亀裂が走り、砕け散ってしまった。
体は縛られたままだが、再び大きく開いた雷帝の口に、閃光が大きく光を灯す。しかし、それが吐き出されるより早く、地上から飛んで来た大きな岩が、丁度口の中に納まって塞いだ。
そこに再び口の周りを氷が覆う。
「ルシェールか」
ケイハルトの苦渋の顔が、地帝の頭上に居るルシェールに向けられる。
「動きが止まっていては、地帝でも狙いをつけるのは容易いからのお」
とは言え、地帝が大岩を放ったのは、氷帝が攻撃を仕掛ける前だ。
お互いに次はこう動くだろうと予測と長年の信頼があるからこそ出来た攻撃だろう。
轡の様に口が大岩で塞がっていては、覆っている氷を砕くことも出来ない。
「こちらは任せなさい!」
アインベルクに笑みで頷いて応えると、フラムはケイハルトに向き直る。
「残念ね。こちらには五賢人が三人もいるのよ」
「残念だと? 笑わせるな。雷帝が抑えられたことも考えて、最後の手は残してある」
「最後の手?」
「幾ら頭数が居ようと、どうしようもない手がな」
ケイハルトの体から無数の放電が見られ、その体が光り始めている。
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