炎の魔獣召喚士

平岡春太

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第六章 邂逅(かいこう)

 第十六話 凶獣襲来

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 ケーレと思われる村には、フラム達が霧の中で追っかけられた魔獣は勿論、あちらこちらに多くの魔獣が見られた。
 それも、フラムが知っている魔獣も居るのだが、その半数ほどは知らない魔獣で、差し詰め珍獣奇獣の博覧会と言った所か。

「どうするでヤンス?」
「一人どころか三人でも足りないくらいね」
「先生も酷だよな。これをエドアール一人でどうにかしろってか」

 霧で隠れていた事で状況が分からなかった事もあって幾分か怖さがなかったものの、それが晴れた今、エドアールは込み上げて来た恐怖に、顔が蒼白になっている。

「さあて、どうしたもんかな」
「おい、これを見てまだやる気なのか?」
「当ったり前じゃないのよ。こんなもので諦めてたら、ケイハルトなんかに勝てないでしょう」
「違うでヤンス。お金でヤンスよ」
「だな」
「あんた達ね」

 フラムの鋭い視線が、パルとフリードに忙しく向けられる。
 と、その時、フラム達の周りが突然陰ったかと思うと、突風が襲う。

「何!?」

 直ぐに陰りが抜けると共に突風も収まった。

「一体何が?」
「おい、あれ!」

 フリードが指差す方向に、一匹の大柄な魔獣が飛んでいた。
 大きさは風魔獣のグリードより少し大きいその魔獣は、羽が生えた竜そのままの姿をしている。

「あれは竜魔獣のアリオンテ!」
「アリオンテ? 知ってる魔獣か?」
「もちろんよ。竜魔獣だから当然見るのは初めてだけどね。あんたも見たジェモグリエよりもかなり小さいけど、動きの速さからすると、アリオンテの方が戦い憎いかも」
「マジかよ。あのデカブツも相当てこずったんだぞ」
「確かに大変だったでヤンス」
「終わった……」

 エドアールは膝から崩れ落ちる。
 アリオンテは村に飛来するなり、口から炎を吐き、地上に居る魔獣達を襲い始めた。
 ケーレに居る魔獣達が一斉に騒ぎ出す。

「おい、あの竜魔獣は仲間じゃないのか?」
「そうみたいね。だとしたらディオドスで出て来たんじゃなくて誰かが召喚したってこと? となると操縛の印が掛からなくて野生化したんでしょうけど、誰が召喚したのかしら? 竜魔獣を召喚するには、相当な魔力が必要なのに……」

 炎に包まれた魔獣を、アリオンテは捕食し始めた。
 フラム達を追っかけていた巨大な魔獣が捕食しているアリオンテに反撃しようとするも、炎を吹き付けられて火達磨となって行く。

「これは一方的だな。もしかして、さっきの霧って」
「ええ、恐らくアリオンテから姿を隠す為だったのかも」
「だったら……」

 フリードとエドアール、そしてパルの冷ややかな目がフラムに向けられる。

「ちょっとちょっと、私のせいだって言うの? 元々はエドアールが頼んだから霧を消さなきゃならなかったんでしょう。どうしてそれが私のせいになんのよ」

 二人と一匹の冷ややかな目は向けられたままだ。
 フラムは深く溜息を洩らす。そして、

「分かったわよ。何とかすればいいんでしょう」

 その場にしゃがみ、地に右手を下ろす。

「アルシオンボルトーア!」

 魔獣召喚陣が現れ、光り輝く。
 立ち上がったフラムが召喚陣を前にして印を組む。

「魔界に住みし炎の魔獣よ。開かれし門を潜り出でて我が命に従え」

 フラムの手の印が形を変える。

「出でよ、炎魔獣フィール!」

 召喚陣の光が増し、その中からフィールが飛び出した。

「おい、本気でやる気なのか?」

 ここに来てエドアールが訊く。

「自分で煽っといて何なのよ」
「やるにしてももうちょっと待ってた方がいいんじゃないか? 他の魔獣を勝手に減らしてくれるって言うのだからな」
「だからあんたは強くなれないのよ。それに、弱い魔獣が一方的にやられてるのをただ見てるのも魔獣召喚士としては名折れでしょう」

 フラムはフィールの背に飛び乗り、飛び上がった。

「仕方ないな。俺は地上から援護するか」

 フリードも剣を抜く。

「結局俺もやらなきゃいけないのか。こんなことなら頼まなければよかったな」

 溜息を洩らしつつ、エドアールも立ち上がりながら剣を抜いた。
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