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第10話 尻ぬぐい
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ブロード家の敷地は広い。外へ出るのに馬車で5分以上かかる。但し、教会は敷地から出て1分ほどで着く距離。
教会の中へ入ると、シスター長と数人のシスター達に出迎えられた。その中にシスターサラの姿もあり、超満面の笑みを向けてくる。しかも、両手を超高速で振ってきた。
緊張しているのもあり、私は曖昧に笑って反応を返した。が、お気に召さないのか、不満そうに唇を突き出してくる。
うぜぇ……。
私はげんなりとした。
「ようこそ、お二人方、心よりお待ちしておりました」
シスター長が頭を下げると、他のシスターも同じように頭を下げる。ラナが頭を下げるのを見て、私も慌てて後に続いた。
シスター長は60過ぎの背が低いお婆さんであり、優しげな顔は、彼女の性格をよく表している。
教会は各地にあるが、王国にある教会が全てを取りまとめている。聖女がトップで、各教会はシスター長が治めている。
「それでは、こちらへ」
シスター長に促され、私と妹は彼女の背を追った。他のシスター達は頭を下げたまま、私達は見送られる。何故かシスターサラだけは私達の後を付いてきた。
特に何も言ってこないため、私は無視することに決めた。
* * *
一番奥の部屋で、お母様は待っていた。
「お館様、お二人方を連れてまいりました」
「シスター長、ありがとう。レナとラナはこちらへ」
私達は祭壇の前に立たされる。
ある意味、生贄扱いなのか?
「膝をつき、精霊に祈りを」
私は膝をつき、目を閉じ、手を合わせた。正直、何を祈ればいいのかがまったく分からない。
それより、儀式といっても凄くシンプルだなぁ。
「本当、信仰心がないんだね、君は」
その声に驚き、私はつい、目を開けてしまった。
そこは、別世界だった。
何にもない、白だけで埋め尽くされた空間。
そこに立っていたのは、昨日会った少女。
「本当は今日、初めましてのつもりだったんだけどね」
「えっと、火の精霊様――だったんですか?」
「違うよ」
「え? では――誰なんですか?」
私の問に、少女は何故か少しだけ悩む仕草を見せた。
けれど、直ぐに私を見て微笑んだ。
「そうだね――では、時の精霊、クロノス様――とでも呼んでくれ」
「き、聞いた事ありませんけど? そんな名前」
「そりゃーそうだよ。何百年も前の話だからね。今世で知っている人間なんて、あまりいないんじゃない?」
「その――クロノス様が、何故ここに?」
「そんなの、決まっているでしょ。君に加護を与えるためだよ」
一瞬、理解できずに、固まった。
「そんな話――聞いたこと、ないんですけど?」
精霊の加護は直系から直系にしか引き継がれないものだと聞いている。一度繋がりが絶たれれば、もう二度と精霊の加護は得られない。
そもそも、私はブロード家、火の精霊の加護を受けた一族のはず。その一族から別の精霊の加護を受けた――なんて聞いたことがない。
「それはそうだと思うよ。だってこれは、初めてのことだからね」
少女は両手を開き、笑顔で言葉にした。
「何で――何で、私?」
正直な話、意味が――分からない。
「それは単純に――僕が気に入ったからさ。だから、この世界に転生させた」
ありえない――と、思った。
「本当にそれだけ、ですか?」
「それだけでは、駄目なのかな?」
少女――クロノス様は、首を傾げる。
か、可愛い!
だけど、何処か――わざとらしくも見えた。
全くの嘘というわけではないのかもしれないが、それだけのはずはないと、私は思った。
だけど、これ以上尋ねたところで、無駄な気がした。
クロノス様は両手を下ろし、ゆっくりとこちらへ近づき、私の右手を取った。
そして、甲の部分にキスをした。
え?
ええ!?
その感触に、顔が熱くなるのを感じる!
唇が離れると同時に、甲の部分が光――印が浮かび上がった。
「これは、契約の証だよ。これからは――君の時代が始まる。僕の代わりにね」
体の内側から何かが溶け出す感覚に身震いした。
「その感覚は、僕の魔力に触発され――今まで君の中に眠っていた原石たちが形を変えている感触さ」
私は胸を手で押さえる。感覚的に、この体内を駆け巡る流れが魔力だと理解した。
自分でも、訳がわからないほどの高揚感で身体が震える。
先ほどまでの疑問も、疑いも、どうでもよくなっていく。
「こ、これで私も――魔法が、使えるんですか?」
「それは君次第だよ」
魔力の流れは理解したが、使い方は全く想像できない。
「どんな魔法が使えるんですか?」
「時間と空間、重力に関する魔法が使えるよ」
「えーと、つまり?」
「例えば、自分と相手の時の流れを変えたり、空間移動したり、色々だよ。前の世界の知識で何となく分かるでしょ?」
「それは、まぁ、なんとなくなら?」
でも、前の世界の知識はアニメからですよ?
それだけで、本当に魔法が使えるようになるのか? 全く想像がつきません。
だけど本当にそれで魔法を使えるようになるなら、アニメすげぇ!
「本当なら、魔法の使い方も親から子へと引き継がれるものだけど、君はまぁ――ゆっくり覚えていけばいいよ」
「教えてくれないんですか?」
「まぁ、まずは自分なりに考えてみなよ」
意外と厳しいなぁ。
「でも、何百年ぶりに時の精霊の加護をえてしまったら、なんか大騒ぎになるような気がするんですけど?」
「そんなの当たり前だよ」
「え?」
「何を驚いた顔してるの? 君はもう、君が望んだ悠々自適な生活は諦めたほうがいいだろうね」
「な、なんですと!? 私の夢を壊してまで、私に一体何をやらせたいんですかね!?」
「うーん、そうだねぇ」
クロノス様は顎に手をやり、わざとらしく悩むふりをしてくる。
「君には僕の勇姿を、この世界中すべての人に語り継ぐ指名を任命する!」
そう言って、クロノス様は私に向かって指を突き付けた。
それ――別に私じゃなくてもよくないですかね?
まただ、声が出ないし体が動かない。
クロノス様は可愛いらしく笑みを浮かべている。いくら可愛くても、ちょっと、許せねぇ。
「まぁ、君には悪いとは思っているよ。これは――僕の我儘だからね」
悪い、と謝られると、何も言えなくなる。
「前にも言ったけれど――君の仕事は、言ってしまえばただの尻拭いだ。それも何百年と前のね」
何か、嫌だなぁ――それ。
「訳あって、あまり多くは語れないんだけど――可愛そうだから、助言だけはしてあげることにしたよ」
助言?
「そう、助言。まずは王国にいるメリエーヌを訪ねることをお勧めする」
メリエーヌ?
「大賢者メリエーヌ。人の世で唯一現存する変わり者のエルフさ」
その言葉を最後に、世界は暗転。
意識が、途切れる――――。
教会の中へ入ると、シスター長と数人のシスター達に出迎えられた。その中にシスターサラの姿もあり、超満面の笑みを向けてくる。しかも、両手を超高速で振ってきた。
緊張しているのもあり、私は曖昧に笑って反応を返した。が、お気に召さないのか、不満そうに唇を突き出してくる。
うぜぇ……。
私はげんなりとした。
「ようこそ、お二人方、心よりお待ちしておりました」
シスター長が頭を下げると、他のシスターも同じように頭を下げる。ラナが頭を下げるのを見て、私も慌てて後に続いた。
シスター長は60過ぎの背が低いお婆さんであり、優しげな顔は、彼女の性格をよく表している。
教会は各地にあるが、王国にある教会が全てを取りまとめている。聖女がトップで、各教会はシスター長が治めている。
「それでは、こちらへ」
シスター長に促され、私と妹は彼女の背を追った。他のシスター達は頭を下げたまま、私達は見送られる。何故かシスターサラだけは私達の後を付いてきた。
特に何も言ってこないため、私は無視することに決めた。
* * *
一番奥の部屋で、お母様は待っていた。
「お館様、お二人方を連れてまいりました」
「シスター長、ありがとう。レナとラナはこちらへ」
私達は祭壇の前に立たされる。
ある意味、生贄扱いなのか?
「膝をつき、精霊に祈りを」
私は膝をつき、目を閉じ、手を合わせた。正直、何を祈ればいいのかがまったく分からない。
それより、儀式といっても凄くシンプルだなぁ。
「本当、信仰心がないんだね、君は」
その声に驚き、私はつい、目を開けてしまった。
そこは、別世界だった。
何にもない、白だけで埋め尽くされた空間。
そこに立っていたのは、昨日会った少女。
「本当は今日、初めましてのつもりだったんだけどね」
「えっと、火の精霊様――だったんですか?」
「違うよ」
「え? では――誰なんですか?」
私の問に、少女は何故か少しだけ悩む仕草を見せた。
けれど、直ぐに私を見て微笑んだ。
「そうだね――では、時の精霊、クロノス様――とでも呼んでくれ」
「き、聞いた事ありませんけど? そんな名前」
「そりゃーそうだよ。何百年も前の話だからね。今世で知っている人間なんて、あまりいないんじゃない?」
「その――クロノス様が、何故ここに?」
「そんなの、決まっているでしょ。君に加護を与えるためだよ」
一瞬、理解できずに、固まった。
「そんな話――聞いたこと、ないんですけど?」
精霊の加護は直系から直系にしか引き継がれないものだと聞いている。一度繋がりが絶たれれば、もう二度と精霊の加護は得られない。
そもそも、私はブロード家、火の精霊の加護を受けた一族のはず。その一族から別の精霊の加護を受けた――なんて聞いたことがない。
「それはそうだと思うよ。だってこれは、初めてのことだからね」
少女は両手を開き、笑顔で言葉にした。
「何で――何で、私?」
正直な話、意味が――分からない。
「それは単純に――僕が気に入ったからさ。だから、この世界に転生させた」
ありえない――と、思った。
「本当にそれだけ、ですか?」
「それだけでは、駄目なのかな?」
少女――クロノス様は、首を傾げる。
か、可愛い!
だけど、何処か――わざとらしくも見えた。
全くの嘘というわけではないのかもしれないが、それだけのはずはないと、私は思った。
だけど、これ以上尋ねたところで、無駄な気がした。
クロノス様は両手を下ろし、ゆっくりとこちらへ近づき、私の右手を取った。
そして、甲の部分にキスをした。
え?
ええ!?
その感触に、顔が熱くなるのを感じる!
唇が離れると同時に、甲の部分が光――印が浮かび上がった。
「これは、契約の証だよ。これからは――君の時代が始まる。僕の代わりにね」
体の内側から何かが溶け出す感覚に身震いした。
「その感覚は、僕の魔力に触発され――今まで君の中に眠っていた原石たちが形を変えている感触さ」
私は胸を手で押さえる。感覚的に、この体内を駆け巡る流れが魔力だと理解した。
自分でも、訳がわからないほどの高揚感で身体が震える。
先ほどまでの疑問も、疑いも、どうでもよくなっていく。
「こ、これで私も――魔法が、使えるんですか?」
「それは君次第だよ」
魔力の流れは理解したが、使い方は全く想像できない。
「どんな魔法が使えるんですか?」
「時間と空間、重力に関する魔法が使えるよ」
「えーと、つまり?」
「例えば、自分と相手の時の流れを変えたり、空間移動したり、色々だよ。前の世界の知識で何となく分かるでしょ?」
「それは、まぁ、なんとなくなら?」
でも、前の世界の知識はアニメからですよ?
それだけで、本当に魔法が使えるようになるのか? 全く想像がつきません。
だけど本当にそれで魔法を使えるようになるなら、アニメすげぇ!
「本当なら、魔法の使い方も親から子へと引き継がれるものだけど、君はまぁ――ゆっくり覚えていけばいいよ」
「教えてくれないんですか?」
「まぁ、まずは自分なりに考えてみなよ」
意外と厳しいなぁ。
「でも、何百年ぶりに時の精霊の加護をえてしまったら、なんか大騒ぎになるような気がするんですけど?」
「そんなの当たり前だよ」
「え?」
「何を驚いた顔してるの? 君はもう、君が望んだ悠々自適な生活は諦めたほうがいいだろうね」
「な、なんですと!? 私の夢を壊してまで、私に一体何をやらせたいんですかね!?」
「うーん、そうだねぇ」
クロノス様は顎に手をやり、わざとらしく悩むふりをしてくる。
「君には僕の勇姿を、この世界中すべての人に語り継ぐ指名を任命する!」
そう言って、クロノス様は私に向かって指を突き付けた。
それ――別に私じゃなくてもよくないですかね?
まただ、声が出ないし体が動かない。
クロノス様は可愛いらしく笑みを浮かべている。いくら可愛くても、ちょっと、許せねぇ。
「まぁ、君には悪いとは思っているよ。これは――僕の我儘だからね」
悪い、と謝られると、何も言えなくなる。
「前にも言ったけれど――君の仕事は、言ってしまえばただの尻拭いだ。それも何百年と前のね」
何か、嫌だなぁ――それ。
「訳あって、あまり多くは語れないんだけど――可愛そうだから、助言だけはしてあげることにしたよ」
助言?
「そう、助言。まずは王国にいるメリエーヌを訪ねることをお勧めする」
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