百合好き転生令嬢は、黒髪に生まれたことで親族たちから疎まれていますが、念願通り百合に囲まれ今日も幸せです

tataku

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第27話 メリエーヌ様

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 普段のメリエーヌ様は、お城での生活よりも外へ出て、各地を渡り歩くことの方が多いらしい。

 だから、こうやってメリエーヌ様に会える私は、運がいい。

 王都へ滞在するときはお城の別棟にて生活をしているらしく、私たちはそこへ目指して歩いている。

 その別棟とお城は長い渡り廊下により繋がっていた。

 その廊下を歩きながら、美しい庭園を眺める。ここはメリエーヌ様ただお一人のための場所とのこと。

 何とも贅沢なことだ。



 別棟は、長い塔だった。

 入り口の扉には複雑な模様。近づくと、それは自動的に開いた。

 中は、大図書館。

 タイルの床上に本棚がびっしりと敷き詰められており、高さは5m以上。まるで敵の侵入を防ぐための壁だ。

 少し中に入ると扉は再び、自動的に閉まる。

 アリシア様が足を止めた。

 私は辺りを見回し、上を見上げる。

 高い、凄く高い天井。

 螺旋階段は天を目指す。

 メリエーヌ様のお部屋は、ここから見える天井の上なのかもしれない。

 今、確認できた人の姿は婆やさんのみ。彼女は本棚と本棚の隙間から顔を覗かせたあと、こちらに向かってきた。

「皆様、メリエーヌ様はこちらですぞ」

 そう言って、手招きをしてくる。

 私たちは婆やさんの後を追いかけた。

 並んだ本棚のすき間により道が作られている。しかしそれは、まるで迷路のようだ。単純な一本道とはなっていない。そのため、部屋の全体像が掴めない。だって、本棚で視界が遮られているから。

「何でこんなに、道が複雑なんです?」

 私は、素朴な疑問を投げかけた。なんか、本棚のすき間めちゃくちゃ狭いし。

「それはもう、メリエーヌ様の好み――としか言えませんなぁ」

 と言われれば、なるほど、と頷くほかにない。



 本棚を抜けた先は、少しだけ広けた空間。

 そこで婆やさんも、アリシア様も足を止めた。

 ふかふかの白い絨毯。そしてこれ又、ふかふかしていそうな一人用のソファが、丁度真ん中に鎮座している。

 そこに、人がいた。

 大きな本を広げ、優雅に寝そべっている。

 美しいと思った。

 美しすぎると――そう、思う。

 そのだらけた姿を見ても、神々しい――と思わせる何かを、彼女は持ち合わせていた。

 その姿を見て、私は感動している?

 金色の髪に金色の瞳。

 アリシア様よりも、女王様よりも、誰よりも濃く輝く金の色。

 そして、驚くぐらい白い肌。

 絶世の美女ではなく、絶世の美少女。

 身長も、私と同じぐらいに感じられるし、年齢も同じぐらいに感じられる。

 顔のパーツが全て完璧であり、動きがなければひとつの完成された芸術品。とても、生きた人間とは思えない。

 細く流れるようなしなやかな髪はかなり長く、おそらく膝下ぐらいまでは伸びている。そんな髪から覗く尖った耳は、私が思い描くエルフそのものだ。
 
 シンプルなノースリーブの白いワンピースに、白いサンダル姿。そんなラフな格好に違和感を感じながらも、それ以外ありえないと思う矛盾。
 
 彼女を見ていると――身体に違和感を覚え、何だかソワソワとしてきた。
 
「メリエーヌ様、お客様ですぞ」
「そんなの、分かってるわ」

 メリエーヌ様? は、本から視線を逸らすことなく、言葉を紡いだ。

 美しい声が、脳を震わせる。

「でも、少し待って。今、いいとこなの」

 妹の身体がふらついた。

 私が動こうとしたときには既に、アリシア様が妹の身体を受け止めてくれていた。

「す、すみません」

 と、ラナは謝った。

「気にしないでください。今のメリエーヌ様にお会いした人は必ずこうなりますから」

 アリシア様のその言葉に、私の口から疑問がこぼれ落ちた。

「それって、どう言うことなんですか?」
「あの方の魔力は膨大であり、それは常に外部へと漏れ出しています。慣れない内は、あの人の魔力にあてられ、脳がやられます」
「え? それ、やばいじゃん」

 私の開いた口が、塞がらなくなりそうだ。
 
「大丈夫です、害はありませんから。お二人なら、直ぐに耐性ができるかと思いますよ?」

 と、アリシア様は言った。

 ラナはゆっくりと、アリシア様から身体を離した。が、まだ少し足元がおぼつかない。

 手で頭を押さえ、身体がまだふらふらと揺れている。

「だ、大丈夫ですか?」

 アリシア様の両手が、不安そうに宙で揺れている。

「大丈夫です」

 と、妹は手で制止しながら答えた。

 私もアリシア様と一緒で不安なため、ラナの方に気持ち身体を近づけた。妹は勘が鋭いため、近づき過ぎると私の意図に気づいてしまうだろう。気づかれたなら、絶対に不機嫌となる。間違いなく。

「それにしても、レナ様は何も問題がなさそうですね」

 アリシア様の感心したような声。

 つい、ニヤけかけたが――妹からの視線に気づき、シャキっとした。

「そんなことないですって。だって私、脳がグワングワンと揺れている感じありますもん」
「大したものだと思います。何せレナ様は、しっかりと自分の力で立ち、自分のことだけでなく――ラナ様がいつ倒れても大丈夫なように、目を走らせているのですから」
「……姉様?」

 妹が、ジロリと、私を睨みつけた。

「ち、違うからね!」

 と、私は必死に否定した。

 アリシア様は首を傾げられる。

「何故、否定をするのですか?」

 それは今の妹が、ツンツンデレ、だからですね!

 普段は、ツンデレデレ、なのにぃ。

「そ、それにしても、このような状態で外とか出ても問題ないんですかね?」

 確か、旅に出るとか言ってたけど――これでは、軽いテロ行為では?

「この塔の外へでるときは、ちゃんと魔法道具を装備し、魔力が漏れないようにはしているので問題ありません」

 なるほど、それなら大丈夫かもしれない。

 だけど、あのような美少女が旅に出ている姿――とても想像できませんね!
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