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第四章

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『拝啓 クリスティアーヌ様

王宮での茶会が無事に終わったと手紙を拝見し、安堵いたしました。

此度の茶会は侯爵家に嫁いだばかりのあなたには大変なことだったかと思います。

オリヴァー殿下も結婚したばかりで夫である私が側にいてやれず心細い思いをされているのではと気遣い、イヴァンジェリン様にご提案されたそうです。

本来なら夫である私がもっと気遣うべきだったかと反省しております。

アッシュハルクは優秀な兵士で周囲の者からの人望厚く面倒見のいい男です。女性同士の付き合いに私が口を挟むことはできませんが、奥方と仲良くしていただいているようで安心しました。

貴族の付き合いは慣れないうちは大変なことと思いますが、苦手な方たちと無理にお付き合いなさらなくても構いません。
貴族社会は決まり事も多く、堅苦しいこともあり病み上がりのあなたには辛いこともあるでしょう。

あなたの好きなこと、やりたいことをなさってください。

ルイスレーン・リンドバルク』

ルイスレーン様からの二通目の手紙は茶会のことについて書いた手紙の約三週間後に届いた。

王都から戦地のベルトラン砦までは通常は馬で往復二週間ほどかかるという。

だから便りを受け取ってすぐ返事を書けば二週間で届く。
あくまでもすぐに書けばである。

私のように書くのに時間がかかったりすれば、返信はその分遅くなる。

瞬時にメールをやり取りしていた経験がある者に取ってはもどかしいことではあるが、紙に文字を書くのも味があっていい。

やはり茶会はルイスレーン様のことを心配した殿下が妃殿下に指示をしたことだったようだ。

はたして私は彼女たちの目にはどう映ったのだだろうか。

あのときのお二人の様子ではわからない。

及第点くらい取れただろうか。

それにしても、他の貴族の方と無理に付き合わなくていいなんて、この人、貴族としては大丈夫なのだろうか。上陸階級はとにかくお付き合いが大事だ。好きとか嫌いとかで付き合いを決められるものではないことは私でもわかる。

好きなこと、やりたいことをしてください。

良く言えば思いやりに溢れた言葉ではあるが、反面、あなたには何も期待していないので、何もしなくていいと言われているようだ。

穿った見方かもしれない。ネガティブな受け取り方かもしれない。

愛理の時の夫は自分はずっと他の女を囲いながら(この場合どちらが浮気でどちらが愛人なのか)私には貞淑な妻であることを強要した。

人目のある場所では仲の良い夫婦を演じ、それ以外は私を顧みることなく、私がどう思うか何が好きなのかまるで興味がなかった。

ルイスレーン様だって、満足に淑女としての教育を受けてもいないクリスティアーヌが、他の貴族たちの輪に入って恥をかくよりは付き合いを制限した方がいいと思っているのかもしれない。

考えすぎだと思いながら、先日、ついに読んだ引き出しにしまったままだった未開封の手紙のことを思い出した。

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