【本編完結】政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません

七夜かなた

文字の大きさ
52 / 266
第五章

3

しおりを挟む
色々話し合った結果、私は明日一杯で暫く休みをもらうことになった。

明日は砦に駐屯していた軍隊が帰ってくる日。

あさってには王宮のパーティーに出る。そしてその次の日は陛下のお茶会だ。

「マリアンナ、旦那様のお部屋の支度は大丈夫?」
「はい。リネン類はすべて新しいのに変え、カーテンなども洗い終えました。お掃除も毎日してお部屋の空気も入れ換えております。お部屋は全て完璧です」
「お食事の方は?」
「旦那様のお好きなものをご用意しております。お食事に合うワインも」

優秀な使用人たちのお陰でルイスレーン様の帰還を明日に迎え、準備は滞りなく進んでいた。
私ができることは殆どなく、気持ちだけ焦る。

「私に何かすることは?」

「では明日の朝、お庭の花を摘んできて下さい。クリスティアーヌ様のお好みで」

そう言われ、帰還の日の朝、庭師と一緒に花を選んだ。
仕事のできる庭師がいて庭にはいつも花がたくさん咲いている。
王都にあって庭付き邸宅を持つということはなかなかリンドバルグ侯爵家はかなり裕福みたいだ。
ドレスを作ることにいちいちびくびくしている私は前世社長令嬢のわりに小市民かも知れない。
どことなく暗い色味の落ち着いた雰囲気のルイスレーン様の部屋にあまり色とりどりの色もどうかと思い、白を中心に花を選んだ。

凱旋パレードが行われる通りに面した店などは華々しい飾り付けがされ、王都内はお祝いムード一色だ。

もともとこの戦争はカメイラ国がしかけてきたもの。その終わり方も彼の国のクーデターによる政権交代という、自滅型と言える。

武力により相手国を完膚なきまでに叩き潰したものではないが、それでもエリンバルアの勝利には違いない。
第二皇子率いる前線部隊がベルトラン砦で相手を足留めしてくれたお陰でエリンバルアの都市や村が戦火に巻き込まれることなく、非戦闘員である国民に誰一人被害がなかったことを国民の誰もが知っている。

だからこそのお祝いムード。彼らは英雄と讃えられる。

パレードは正午の鐘とともに始まる。

いつもはちょうど診療所で子どもたちの食事の世話をしている頃だ。

「今日は早めに食事を取って皆でパレードを見に行こう」

大きい子どもたちが行きたがったこともあり、ニコラス先生が提案した。
グレンダさんも旦那様が一団の中に入っていることもあり、本当は行きたいと思っていた。

「きっと大勢の人がいるだろうから、迷子には気をつけてね」

大きい子が小さい子の手を繋ぎ、大人も小さい子の手を繋いで皆で大通りまで歩いて行くと、随分手前からたくさんの人が並んでいた。

引率は大人が五人。それぞれに子どもたちを二人ずつ連れて、固まって歩いていった。

ちょうど正午の鐘が鳴り響いた。

私たちが立っているのは正門から王宮までのちょうど中間あたりだった。

だから鐘がなってもすぐには一団は見えない。
鐘が鳴って、子どもたちが数分おきに口々にまだかまだかと催促してくる。
何十回目の「もうすぐ」を言った時、大通りの向こうから歓声が徐々に近づいてきた。

そうは言ってもずいぶん距離があるのか、歓声が聞こえだしてからさらに時間がかかった。

ようやく通りの中央をこちらへ向かってやってくる一団の影が見えた。

先頭は当然総大将であるオリヴァー殿下だ。
その後ろに恐らくルイスレーン様がいる。何しろ彼は副官だ。

ルイスレーン様は私に気づくだろうか。

私は彼の顔を覚えていないが、彼は私とは違う。

グレンダさんたちの影になるように立ちながら、一団が近づいてくる方向をじっと見守った。
しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...