【本編完結】政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません

七夜かなた

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番外編 公開模擬試合

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その日、ルイスレーンが帰宅し共に夕食を取り、お茶を飲んでいた。

「今日、軍部で勤務している時に、陛下に呼ばれて謁見してきた」

「陛下に……用件は?」

少し前の公開模擬試合でのやり取りを思い出す。保育所や奨学金という制度を私がどうやって思い付いたのか。陛下でなくてもそう考えるだろう。

「近いうちに君と共に登城しろと……美味しい手土産を持ってと仰っていた」
「そうですね……そうなりますよね」

むしろすぐに呼ばれなかったのが不思議なくらいだ。

「大丈夫……私が傍にいる。陛下も無体なことはなさらない」

不安そうな私の手を彼が握ってくれる。

「それから結婚して来月で一年になる。式はあっけなく済ませてしまったが、どうだろう、披露宴をしないか?」
「披露宴……」

突然のことに驚いた。

「それも、陛下が何か仰ったのですか?」
「……特には……ただ、そろそろ一年になるなと、仰ったのでふと思ったのだ。式はクリスティアーヌに取って、いい思い出ではなかったようだから」

叔父のせいで男性の暴力に怯えていた私は、目の前の夫になる彼を、ただただ恐れていた。

今思えば馬鹿だったと笑い飛ばすところだが、マリッジブルーにも程がある最悪な状態だったのは認めざるを得ない。

「この邸の庭で世話になった人たちを呼んで料理を振る舞う……どうだろうか?」

私が彼の考えに手放しで喜ばないので、彼が様子を伺うように訊いてきた。

「えっと……それは身分など関係なく呼んでもいいのでしょうか……保育所の人たちや遺族慰問の人たちも?」

「もちろん、君が呼びたいと思う人達を呼べばいい」
「じゃあ、この邸の皆も?あ、それだとおもてなしが出来ない」
「それなら外から人を雇おう。彼らも大事な招待客だ」

「素敵……とっても素敵だわ」

がばっと私は彼に飛び付いた。
ここで私はたくさんの大事な人達が出来た。披露宴という名で皆を招待して楽しんで貰うのだ。

「あの、その時に皆さんの前でもう一度誓いを交わすのはだめですか?」
「もう一度?」
「はい……だめでしょうか……」
「だめな筈がない……皆がいて今日の私たちがいるのだから、彼らに二人の決意を聞いてもらおう」

優しく包容し、背中を撫で下ろして彼が言ってくれた。

「じゃあ、すぐにダレクに招待客のリストを作ってもらって招待状を送らないと……あ、でももう今夜は遅いかしら」
「そうだな。今からでは徹夜してでもやりきりそうな勢いだ。明日にしなさい」

すぐにでも取りかかりたかったが、ルイスレーンも今夜はやめた方がいいと言うので、思い止まった。

次の日、ダレクとマリアンナにそのことを告げると、彼らは喜んだが、外から誰かを雇うことには反対だった。

それで仕方なく、皆は給仕をしながら参加するということになった。

それから急いで招待客のリストを作り、招待状を送った。

招待状を送ってから暫くして私はその日、保育所の庭の工事の進捗を見に行った。

「こんにちは、先生」
「やあ、いらっしゃい。様子を見に来たのか?」
「はい。その後どうですか?」
「この前来た時よりかなり進んだ。来週には予定どおり終わるだろう」

先生が言った通り、遊具の殆どは設置されていて、後は木陰になる木々を植え通路を整備すれば完成だった。

「子どもたちが待ちきれないようで、毎日まだかまだかと朝に夕に聞いてくる」
「喜んでもらえて嬉しいです」
「ニールセンさんに感謝だな」

寄付をしてくれたニールセンさんがルイスレーンだとは先生には伝えていない。
ルーティアス・ニールセンという存在はルイスレーンが今後も必要とすることもあるため、彼からは内緒にしておくようにと言われていた。

職人さんたちに飲み物と軽食を差し入れし、皆にお礼を言って回る。

「あまり無理をするなよ。外はまだ暑いからな」

「わかっています…でも皆さんもこんな暑さの中で作業しているのですから、仕事を頼んだ者としては申し訳あり……あ」

「ほら言ったそばから……」

軽く目眩がして、先生に支えられた。

「大丈夫ですか、我々のことなら気にしないでください。貴族の奥さまからわざわざこんなことまでしていただいて……こちらで働けてこの仕事ができて光栄です」

傍にいた職人さんたちも心配して、ここはいいからと皆で言う。

「ほら、日陰に行こう。ここにいては逆に彼らの邪魔になる」

「わかりました……すいません、皆さん……ゆっくり休んでから仕事をしてください」

「大丈夫か?」
「はい……お手数をおかけしました」

「どこか悪いのか?よければ診察するが……」

「単なる立ち眩みです……気にしないで……あ」

一瞬目の前が暗くなり、またよろめいた。

「ほら、言っているそばから……本当にちゃんと診てやるから、私の部屋へ来なさい」

二度も先生の前でよろめいたので、抵抗もせずに素直に従った。


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