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番外編 公開模擬試合
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「そこに横になって」
先生の部屋の簡易ベッドに横になる。
「それで、いつから具合が悪い?」
「どうして、少し前からってわかるんですか?」
披露宴が決まって、招待客のリスト作成から、当日のメニューづくりなど、やり出すとやることが多過ぎてこのところ無理をし過ぎていたのだろう。そう言うと先生は熱を測り、舌を見たり聴診器を当てたりして調べてくれた。
「食事は?」
「………特に変わりは……あ、でもあまりお肉とか味の濃いものは最近食べられなくて、披露宴のメニューづくりをしながら料理長と食べられそうなものを研究して……」
「睡眠は?」
「えっと……まあ、ちゃんと取れてると思います……」
ほぼ毎晩ルイスレーンが仕事で遅くなる日以外は何度も抱き合った。
私の体を診察して肌に残る痕跡を見て先生もそのことは察しているだろう。
「夫婦仲がいいのは喜ばしいが、手加減してもらいなさい。暫くは控えた方がいい。これは医者の命令だ。披露宴は来月だったな。前日にもう一度来なさい」
「あの、私、どこか悪いんですか?」
「『黒い魔女』の後遺症ではないから安心しなさい」
先生は私のことがあってからカメイラ国の黒い魔石の作用について色々と情報を仕入れていた。
あれから二月ほどが経ち、体調に特に変化はなかったが、神妙な先生の顔色を見ると不安になる。
「病気ではない……まだ確信はないが、君もある程度は思い当たる節があるだろう」
「え……あ……」
言われてお臍の下辺りを見る。
「来月にもう一度確認するが、ほぼ間違いはないだろう。最後に月経があったのはいつ頃だ?」
「あ……えっと……先月の初め……」
バーレーンに拉致され、助け出されてからすぐ出血した。それからもう一回あった。
「ならその後か……」
模擬試合の日、帰りの馬車でも帰ってからも深く愛し合った。
その日以外も彼に何度も抱かれたが、何となくだが、潮まで吹いたあの時に出来たのではないだろうか。
「安静にしておけと言う意味がわかっただろう?今は流れやすい時期だ」
「はい」
「夜の生活を拒んでも侯爵は怒ったりせんだろう」
「それは……私の具合が悪いと言えば、無理なことはされませんし、逆に過保護になり過ぎるかと……」
「なら二週間の間、大人しくしていなさい。恐らく間違いはないだろうが、まだ確定するには少し早い」
「わかりました……その、はっきりするまでは黙っていた方がいいでしょうか?」
「それはあなた次第だな。もし違っていた場合のことを考えるならはっきりわかるまで黙っておくのもひとつだが、違っていても体を気遣うなら可能性として伝えておくのもひとつだ」
ある程度定期的だった私の月経が乱れていたらマリアンナやマディソンは気づくかもしれない。
彼女たちに知られるのはかまわないが、ルイスレーンは少し前から妊娠について口にするようになっていた。
彼が子どもを切望しているのがひしひしと伝わる。私も子どもは欲しい。それが二人が愛し合った結果なら尚更だ。
でも万が一妊娠ではなかったら……そう考えるとはっきりするまでは話すのはやめようと考えた。
ニコラス先生のところから戻ったその日、ルイスレーンが帰って来て、夕食を頂いてから私は暫く愛し合うのは控えて欲しいと伝えた。
突然の申し出にルイスレーンは固まった。
「なぜ?」
「あの、別に……ルイスレーンが嫌とかそう言うのではありません……その……最近少し忙しくて………それに披露宴……暫く何もしない方が……披露宴まで新鮮な気持ちでいられるというか……」
「そういうものか……しかし……二週間も別に過ごすというのは……」
あれ?体の関係は断ったが、別に過ごすとはひと言も言ってない……
「ルイスレーン…ただ、一緒のベッドで寝ないとは言ってませんけど、やっぱりそういうことをしないと一緒には寝られませんか?」
一緒に寝て何もしないのも辛いのかも知れないと思いつつ、一人で寝るのは寂しいと思ってしまう。
「私は……ルイスレーンの傍で眠りたいです…そういうことをしなくても、手を繋いだりひっついたり……でも、ルイスレーンができないなら一緒に寝たくないなら……」
「そんなことはない!」
遮るようにルイスレーンが叫んだ。
「また私は勘違いを……それに誤解させてしまった……抱けないから一緒にいたくないなど……そんなことはない。夫婦なのだから……もちろんどんな状況でも一緒に居たい」
「私も……一日の終わりは、一緒に過ごして朝一番にルイスレーンの顔を見たいです」
二人で見つめ合い、どちらからともなく抱き締め合った。
ここが…私の居場所……ずっとここでこの人と過ごす……そして家族が増え、もっと賑やかになるだろう。
ニコラス先生の診察を待たなくても私には予感があった。
きっと私の中には新しい命が宿っている。
皆に愛されて生まれてくる命が……
完
最後までお読みいただきありがとうございました。
本編後半のエピローグまでのエピソードでした。
先生の部屋の簡易ベッドに横になる。
「それで、いつから具合が悪い?」
「どうして、少し前からってわかるんですか?」
披露宴が決まって、招待客のリスト作成から、当日のメニューづくりなど、やり出すとやることが多過ぎてこのところ無理をし過ぎていたのだろう。そう言うと先生は熱を測り、舌を見たり聴診器を当てたりして調べてくれた。
「食事は?」
「………特に変わりは……あ、でもあまりお肉とか味の濃いものは最近食べられなくて、披露宴のメニューづくりをしながら料理長と食べられそうなものを研究して……」
「睡眠は?」
「えっと……まあ、ちゃんと取れてると思います……」
ほぼ毎晩ルイスレーンが仕事で遅くなる日以外は何度も抱き合った。
私の体を診察して肌に残る痕跡を見て先生もそのことは察しているだろう。
「夫婦仲がいいのは喜ばしいが、手加減してもらいなさい。暫くは控えた方がいい。これは医者の命令だ。披露宴は来月だったな。前日にもう一度来なさい」
「あの、私、どこか悪いんですか?」
「『黒い魔女』の後遺症ではないから安心しなさい」
先生は私のことがあってからカメイラ国の黒い魔石の作用について色々と情報を仕入れていた。
あれから二月ほどが経ち、体調に特に変化はなかったが、神妙な先生の顔色を見ると不安になる。
「病気ではない……まだ確信はないが、君もある程度は思い当たる節があるだろう」
「え……あ……」
言われてお臍の下辺りを見る。
「来月にもう一度確認するが、ほぼ間違いはないだろう。最後に月経があったのはいつ頃だ?」
「あ……えっと……先月の初め……」
バーレーンに拉致され、助け出されてからすぐ出血した。それからもう一回あった。
「ならその後か……」
模擬試合の日、帰りの馬車でも帰ってからも深く愛し合った。
その日以外も彼に何度も抱かれたが、何となくだが、潮まで吹いたあの時に出来たのではないだろうか。
「安静にしておけと言う意味がわかっただろう?今は流れやすい時期だ」
「はい」
「夜の生活を拒んでも侯爵は怒ったりせんだろう」
「それは……私の具合が悪いと言えば、無理なことはされませんし、逆に過保護になり過ぎるかと……」
「なら二週間の間、大人しくしていなさい。恐らく間違いはないだろうが、まだ確定するには少し早い」
「わかりました……その、はっきりするまでは黙っていた方がいいでしょうか?」
「それはあなた次第だな。もし違っていた場合のことを考えるならはっきりわかるまで黙っておくのもひとつだが、違っていても体を気遣うなら可能性として伝えておくのもひとつだ」
ある程度定期的だった私の月経が乱れていたらマリアンナやマディソンは気づくかもしれない。
彼女たちに知られるのはかまわないが、ルイスレーンは少し前から妊娠について口にするようになっていた。
彼が子どもを切望しているのがひしひしと伝わる。私も子どもは欲しい。それが二人が愛し合った結果なら尚更だ。
でも万が一妊娠ではなかったら……そう考えるとはっきりするまでは話すのはやめようと考えた。
ニコラス先生のところから戻ったその日、ルイスレーンが帰って来て、夕食を頂いてから私は暫く愛し合うのは控えて欲しいと伝えた。
突然の申し出にルイスレーンは固まった。
「なぜ?」
「あの、別に……ルイスレーンが嫌とかそう言うのではありません……その……最近少し忙しくて………それに披露宴……暫く何もしない方が……披露宴まで新鮮な気持ちでいられるというか……」
「そういうものか……しかし……二週間も別に過ごすというのは……」
あれ?体の関係は断ったが、別に過ごすとはひと言も言ってない……
「ルイスレーン…ただ、一緒のベッドで寝ないとは言ってませんけど、やっぱりそういうことをしないと一緒には寝られませんか?」
一緒に寝て何もしないのも辛いのかも知れないと思いつつ、一人で寝るのは寂しいと思ってしまう。
「私は……ルイスレーンの傍で眠りたいです…そういうことをしなくても、手を繋いだりひっついたり……でも、ルイスレーンができないなら一緒に寝たくないなら……」
「そんなことはない!」
遮るようにルイスレーンが叫んだ。
「また私は勘違いを……それに誤解させてしまった……抱けないから一緒にいたくないなど……そんなことはない。夫婦なのだから……もちろんどんな状況でも一緒に居たい」
「私も……一日の終わりは、一緒に過ごして朝一番にルイスレーンの顔を見たいです」
二人で見つめ合い、どちらからともなく抱き締め合った。
ここが…私の居場所……ずっとここでこの人と過ごす……そして家族が増え、もっと賑やかになるだろう。
ニコラス先生の診察を待たなくても私には予感があった。
きっと私の中には新しい命が宿っている。
皆に愛されて生まれてくる命が……
完
最後までお読みいただきありがとうございました。
本編後半のエピローグまでのエピソードでした。
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