【本編完結】政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません

七夜かなた

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番外編 その後の二人

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翌日、ルイスレーンは陛下に謁見を申し出て、直接私達の決断について話に行くことにした。

私と子どもたちのことは研究者だけが知ることとし、徹底した情報管理を約束してもらうことで協力することにした。
モアラさんには口外しないことを誓約してもらい、状況について話すことにした。

私達の決断を聞いた陛下は情報が決して漏れないよう細心の注意を払うよう直々に指示をされた。さっそくオリヴァー殿下が責任者となった研究期間が王宮医師団の中に作られ、ニコラス先生が外部顧問として関わることになった。

妊娠が発覚してから四ヶ月が過ぎ、先生たちからそろそろ五カ月目に入ると言われていた。

妊娠は世間に広まり、双児だと言うことも知れ渡り王室の方々や筆頭侯爵家のカレンデュラ侯爵夫妻やマイセラ侯爵夫妻からも既に祝の品が届けられ、着々と出産に向けて準備が進められていた。

「後は私が引き受けよう。皆は下がって大丈夫だ」
「畏まりました」

ルイスレーンは定時に帰宅する時は必ず私と入浴を共にする。
少しずつだが大きくなるお腹を確認し、私の体の隅々をつぶさに観察する。
私以上に私の体の変化を知っているのではないか。

「また大きくなったな」

背後から両掌で片方ずつ乳房を包みながらその大きさを確認する。

「そ、そうですか?」

言われてみればそうかも知れないが自分ではよくわからない。

「本を読んだが、妊娠中からここをほぐすといいらしい」
「あ…」

そう言ってきつく乳首を指で挟んで押し潰す。
ルイスレーンはこの数週間、軍と領地管理の仕事の合間に育児に関するあらゆる書物を読み漁っている。
加えてカメイラから手に入れた『黒い魔女』に侵された人たちの観察記録を読み、私の体のどんな変化も見逃さないという気概を感じる。

「ルイスレーン…あ…」

ここ数日は母乳の出が良くなり、授乳する際に子どもが母乳を吸いやすくなるようになるという胸のマッサージに余念がない。

「お腹が張っている時はやらない方がいいそうだ。張ってくるなら教えてくれ」
「はい…あ…ん」

痺れるような痛みに混じり、不謹慎ながら快感を覚えてしまうのは相手がルイスレーンだからだ。
教えてくれれば自分ですると最初の頃は主張したが、日々変わっていく母体の様子を実感したいのと、自分も父親として生まれてからではなく今のうちから関わりたいというルイスレーンの熱意に負けた。

妊娠中に彼に抱かれることができなくて、こうして二人で湯船に浸かり親密な時を過していると、どうしても体が反応してしまう。

彼も同じように感じているのか、お尻の辺りで彼の下半身が頭をもたげていることを私は知っている。
妊娠中でも安定期を過ぎれば性行為はできないことはないことは知っているが、どんな影響があるかわからないため、私からも怖くて言い出せない。
ルイスレーンもそれをわかっているので、ひたすら我慢してくれている。

お風呂でのぼせる手前でお風呂から上がると、体を拭いて保湿のためのクリームを塗ってくれる。
そうすることでお腹がもっと大きくなると出てくる妊娠線が残りにくくなるそうだ。

「どんな姿で生まれてくるんだろう。君の金色の瞳か、それと私の瞳か…髪は何色だろう」

優しく弧を描き膨らみ始めたお腹を擦りながら、まだ見ぬ子どもたちの姿を想像して、ルイスレーンがお腹に語りかける。

「生まれたら庭に果実のなる木を植えよう。子どもたちが大きくなって実がなったら共に収穫するのだ。馬場も広くしないと。初めはやはりポニーがいいか」

それから子どもが生まれたらやりたいと思うことを次から次へと語って聞かせてくれる。
すでにそのリストは複数枚に及び、それをすべて実現させるには何年かかるだろう。

「娘ならダンスの相手を、息子なら剣の相手をしてやろう。天気のいい日はアイリの作った料理とお菓子を持って庭でピクニックをしよう」

デレデレの父親ぶりを発揮するルイスレーンを見て診察に来る先生たちが呆れるほどだった。

「私が今まで取り上げてきた赤ちゃんのお父さんで、こんなに積極的に関わっている方は初めてです」

モアラさんが心から関心するのもわかる。貴族のお産に立ち会ったことも何度かあるそうだが、彼の溺愛ぶりは群を抜いている。
私でさえルイスレーンがここまで熱心になるとは思わなかった。
今でこれなら、赤ちゃんが生まれたらどうなるのだろう。

すべてが順調に思われたが、その日診察に訪れたニコラス先生たちが何やら難しい顔をしているのが気になった。

「何か問題でもあるのですか?」

ニコラス先生とスベン先生、そしてモアラさんの三人でヒソヒソと相談しているのを見て、私は不安を覚えた。

ルイスレーンも立ち会う予定だったが、軍の方で何やらトラブルがあったということで帰りが遅くなっていた。

「そろそろ胎動の兆候が見られるはずなのですが…」
「個人差もあります。ねぼすけでのんびり屋の赤ちゃんかもしれませんし。双児なので発育が遅いこともあります」

一生懸命大したことはないと三人で慰めてくれるが、胎動がないということはお腹の中で赤ちゃんたちに何かあったのかもと悪いことを想像する。

「念の為、三日後もう一度診察にまいります。今のクリスティアーヌ様はこれまでに見たことがないくらい最高の環境で過ごされています。だから気を楽にしてお過ごしください。落ち込むとお子様たちにもよくありませんから、どうか気に病まないでください」

医者というのはいつも最悪の場合どうなるかも伝える。
効果のある薬を処方しても、この薬は稀に効かない人もいるのだと言う。
手術をすれば治る怪我や病気も、万が一のことがあるかもと言う。
だから今回も予想と違っただけで、必ずしも絶対ではない。
そう自分に言い聞かせた。
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