227 / 266
番外編 その後の二人
7
しおりを挟む
翌日、ルイスレーンは陛下に謁見を申し出て、直接私達の決断について話に行くことにした。
私と子どもたちのことは研究者だけが知ることとし、徹底した情報管理を約束してもらうことで協力することにした。
モアラさんには口外しないことを誓約してもらい、状況について話すことにした。
私達の決断を聞いた陛下は情報が決して漏れないよう細心の注意を払うよう直々に指示をされた。さっそくオリヴァー殿下が責任者となった研究期間が王宮医師団の中に作られ、ニコラス先生が外部顧問として関わることになった。
妊娠が発覚してから四ヶ月が過ぎ、先生たちからそろそろ五カ月目に入ると言われていた。
妊娠は世間に広まり、双児だと言うことも知れ渡り王室の方々や筆頭侯爵家のカレンデュラ侯爵夫妻やマイセラ侯爵夫妻からも既に祝の品が届けられ、着々と出産に向けて準備が進められていた。
「後は私が引き受けよう。皆は下がって大丈夫だ」
「畏まりました」
ルイスレーンは定時に帰宅する時は必ず私と入浴を共にする。
少しずつだが大きくなるお腹を確認し、私の体の隅々をつぶさに観察する。
私以上に私の体の変化を知っているのではないか。
「また大きくなったな」
背後から両掌で片方ずつ乳房を包みながらその大きさを確認する。
「そ、そうですか?」
言われてみればそうかも知れないが自分ではよくわからない。
「本を読んだが、妊娠中からここをほぐすといいらしい」
「あ…」
そう言ってきつく乳首を指で挟んで押し潰す。
ルイスレーンはこの数週間、軍と領地管理の仕事の合間に育児に関するあらゆる書物を読み漁っている。
加えてカメイラから手に入れた『黒い魔女』に侵された人たちの観察記録を読み、私の体のどんな変化も見逃さないという気概を感じる。
「ルイスレーン…あ…」
ここ数日は母乳の出が良くなり、授乳する際に子どもが母乳を吸いやすくなるようになるという胸のマッサージに余念がない。
「お腹が張っている時はやらない方がいいそうだ。張ってくるなら教えてくれ」
「はい…あ…ん」
痺れるような痛みに混じり、不謹慎ながら快感を覚えてしまうのは相手がルイスレーンだからだ。
教えてくれれば自分ですると最初の頃は主張したが、日々変わっていく母体の様子を実感したいのと、自分も父親として生まれてからではなく今のうちから関わりたいというルイスレーンの熱意に負けた。
妊娠中に彼に抱かれることができなくて、こうして二人で湯船に浸かり親密な時を過していると、どうしても体が反応してしまう。
彼も同じように感じているのか、お尻の辺りで彼の下半身が頭をもたげていることを私は知っている。
妊娠中でも安定期を過ぎれば性行為はできないことはないことは知っているが、どんな影響があるかわからないため、私からも怖くて言い出せない。
ルイスレーンもそれをわかっているので、ひたすら我慢してくれている。
お風呂でのぼせる手前でお風呂から上がると、体を拭いて保湿のためのクリームを塗ってくれる。
そうすることでお腹がもっと大きくなると出てくる妊娠線が残りにくくなるそうだ。
「どんな姿で生まれてくるんだろう。君の金色の瞳か、それと私の瞳か…髪は何色だろう」
優しく弧を描き膨らみ始めたお腹を擦りながら、まだ見ぬ子どもたちの姿を想像して、ルイスレーンがお腹に語りかける。
「生まれたら庭に果実のなる木を植えよう。子どもたちが大きくなって実がなったら共に収穫するのだ。馬場も広くしないと。初めはやはりポニーがいいか」
それから子どもが生まれたらやりたいと思うことを次から次へと語って聞かせてくれる。
すでにそのリストは複数枚に及び、それをすべて実現させるには何年かかるだろう。
「娘ならダンスの相手を、息子なら剣の相手をしてやろう。天気のいい日はアイリの作った料理とお菓子を持って庭でピクニックをしよう」
デレデレの父親ぶりを発揮するルイスレーンを見て診察に来る先生たちが呆れるほどだった。
「私が今まで取り上げてきた赤ちゃんのお父さんで、こんなに積極的に関わっている方は初めてです」
モアラさんが心から関心するのもわかる。貴族のお産に立ち会ったことも何度かあるそうだが、彼の溺愛ぶりは群を抜いている。
私でさえルイスレーンがここまで熱心になるとは思わなかった。
今でこれなら、赤ちゃんが生まれたらどうなるのだろう。
すべてが順調に思われたが、その日診察に訪れたニコラス先生たちが何やら難しい顔をしているのが気になった。
「何か問題でもあるのですか?」
ニコラス先生とスベン先生、そしてモアラさんの三人でヒソヒソと相談しているのを見て、私は不安を覚えた。
ルイスレーンも立ち会う予定だったが、軍の方で何やらトラブルがあったということで帰りが遅くなっていた。
「そろそろ胎動の兆候が見られるはずなのですが…」
「個人差もあります。ねぼすけでのんびり屋の赤ちゃんかもしれませんし。双児なので発育が遅いこともあります」
一生懸命大したことはないと三人で慰めてくれるが、胎動がないということはお腹の中で赤ちゃんたちに何かあったのかもと悪いことを想像する。
「念の為、三日後もう一度診察にまいります。今のクリスティアーヌ様はこれまでに見たことがないくらい最高の環境で過ごされています。だから気を楽にしてお過ごしください。落ち込むとお子様たちにもよくありませんから、どうか気に病まないでください」
医者というのはいつも最悪の場合どうなるかも伝える。
効果のある薬を処方しても、この薬は稀に効かない人もいるのだと言う。
手術をすれば治る怪我や病気も、万が一のことがあるかもと言う。
だから今回も予想と違っただけで、必ずしも絶対ではない。
そう自分に言い聞かせた。
私と子どもたちのことは研究者だけが知ることとし、徹底した情報管理を約束してもらうことで協力することにした。
モアラさんには口外しないことを誓約してもらい、状況について話すことにした。
私達の決断を聞いた陛下は情報が決して漏れないよう細心の注意を払うよう直々に指示をされた。さっそくオリヴァー殿下が責任者となった研究期間が王宮医師団の中に作られ、ニコラス先生が外部顧問として関わることになった。
妊娠が発覚してから四ヶ月が過ぎ、先生たちからそろそろ五カ月目に入ると言われていた。
妊娠は世間に広まり、双児だと言うことも知れ渡り王室の方々や筆頭侯爵家のカレンデュラ侯爵夫妻やマイセラ侯爵夫妻からも既に祝の品が届けられ、着々と出産に向けて準備が進められていた。
「後は私が引き受けよう。皆は下がって大丈夫だ」
「畏まりました」
ルイスレーンは定時に帰宅する時は必ず私と入浴を共にする。
少しずつだが大きくなるお腹を確認し、私の体の隅々をつぶさに観察する。
私以上に私の体の変化を知っているのではないか。
「また大きくなったな」
背後から両掌で片方ずつ乳房を包みながらその大きさを確認する。
「そ、そうですか?」
言われてみればそうかも知れないが自分ではよくわからない。
「本を読んだが、妊娠中からここをほぐすといいらしい」
「あ…」
そう言ってきつく乳首を指で挟んで押し潰す。
ルイスレーンはこの数週間、軍と領地管理の仕事の合間に育児に関するあらゆる書物を読み漁っている。
加えてカメイラから手に入れた『黒い魔女』に侵された人たちの観察記録を読み、私の体のどんな変化も見逃さないという気概を感じる。
「ルイスレーン…あ…」
ここ数日は母乳の出が良くなり、授乳する際に子どもが母乳を吸いやすくなるようになるという胸のマッサージに余念がない。
「お腹が張っている時はやらない方がいいそうだ。張ってくるなら教えてくれ」
「はい…あ…ん」
痺れるような痛みに混じり、不謹慎ながら快感を覚えてしまうのは相手がルイスレーンだからだ。
教えてくれれば自分ですると最初の頃は主張したが、日々変わっていく母体の様子を実感したいのと、自分も父親として生まれてからではなく今のうちから関わりたいというルイスレーンの熱意に負けた。
妊娠中に彼に抱かれることができなくて、こうして二人で湯船に浸かり親密な時を過していると、どうしても体が反応してしまう。
彼も同じように感じているのか、お尻の辺りで彼の下半身が頭をもたげていることを私は知っている。
妊娠中でも安定期を過ぎれば性行為はできないことはないことは知っているが、どんな影響があるかわからないため、私からも怖くて言い出せない。
ルイスレーンもそれをわかっているので、ひたすら我慢してくれている。
お風呂でのぼせる手前でお風呂から上がると、体を拭いて保湿のためのクリームを塗ってくれる。
そうすることでお腹がもっと大きくなると出てくる妊娠線が残りにくくなるそうだ。
「どんな姿で生まれてくるんだろう。君の金色の瞳か、それと私の瞳か…髪は何色だろう」
優しく弧を描き膨らみ始めたお腹を擦りながら、まだ見ぬ子どもたちの姿を想像して、ルイスレーンがお腹に語りかける。
「生まれたら庭に果実のなる木を植えよう。子どもたちが大きくなって実がなったら共に収穫するのだ。馬場も広くしないと。初めはやはりポニーがいいか」
それから子どもが生まれたらやりたいと思うことを次から次へと語って聞かせてくれる。
すでにそのリストは複数枚に及び、それをすべて実現させるには何年かかるだろう。
「娘ならダンスの相手を、息子なら剣の相手をしてやろう。天気のいい日はアイリの作った料理とお菓子を持って庭でピクニックをしよう」
デレデレの父親ぶりを発揮するルイスレーンを見て診察に来る先生たちが呆れるほどだった。
「私が今まで取り上げてきた赤ちゃんのお父さんで、こんなに積極的に関わっている方は初めてです」
モアラさんが心から関心するのもわかる。貴族のお産に立ち会ったことも何度かあるそうだが、彼の溺愛ぶりは群を抜いている。
私でさえルイスレーンがここまで熱心になるとは思わなかった。
今でこれなら、赤ちゃんが生まれたらどうなるのだろう。
すべてが順調に思われたが、その日診察に訪れたニコラス先生たちが何やら難しい顔をしているのが気になった。
「何か問題でもあるのですか?」
ニコラス先生とスベン先生、そしてモアラさんの三人でヒソヒソと相談しているのを見て、私は不安を覚えた。
ルイスレーンも立ち会う予定だったが、軍の方で何やらトラブルがあったということで帰りが遅くなっていた。
「そろそろ胎動の兆候が見られるはずなのですが…」
「個人差もあります。ねぼすけでのんびり屋の赤ちゃんかもしれませんし。双児なので発育が遅いこともあります」
一生懸命大したことはないと三人で慰めてくれるが、胎動がないということはお腹の中で赤ちゃんたちに何かあったのかもと悪いことを想像する。
「念の為、三日後もう一度診察にまいります。今のクリスティアーヌ様はこれまでに見たことがないくらい最高の環境で過ごされています。だから気を楽にしてお過ごしください。落ち込むとお子様たちにもよくありませんから、どうか気に病まないでください」
医者というのはいつも最悪の場合どうなるかも伝える。
効果のある薬を処方しても、この薬は稀に効かない人もいるのだと言う。
手術をすれば治る怪我や病気も、万が一のことがあるかもと言う。
だから今回も予想と違っただけで、必ずしも絶対ではない。
そう自分に言い聞かせた。
26
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる