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第一章
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「お腹すいた……」
物心ついた頃から、彼女はいつも食べ物のことを考えていた。
夕鈴に我慢しろと言われても、幼い彼女にそれを理解し納得するのは無理な話だった。
食べ物を求め、彼女は夕鈴が寝ている隙をついて、こっそり外に出た。
宮の外に出てはいけない。
それも夕鈴から口を酸っぱくして言われていたが、なぜ駄目なのか理由もわからず、またたとえわかったとしても、五歳児に通じるはずもない。
前の晩雨が降ったため、地面はあちこち水溜りが出来、避けて通るのは彼女の短い足では難しい。
もともとボロボロで穴の空いた靴に水が染み込み、グチョグチョという音を立てながら彼女は歩いた。
キャハハハという楽しそうな声が聞こえてきて、何事かと彼女は声のする方に、引き寄せられるかのように歩いて行った。
「皇太子様、公主様、雨のせいで池の水が濁り増えております。縁も滑りやすくなって危険ですのであまり縁に近づかないでくださいませ」
女性が声を張り上げ、「はあい」「わかったわ」という返事が聞こえる。
こっそり木の陰に隠れながら、彼女は様子を窺った。
そこにあったのは大きな池。
縁から朱塗りの屋根付き通路が池の中央まで伸び、中央には丸い柱に囲まれた四角く囲った場所が設けられている。
そしてその中央にでは、華やかな音楽と共に歌声や笑い声が聞こえてくる。
(何をやってるのかな)
楽しそうは雰囲気は、遠くから眺めている彼女にも伝わる。
軽快な調べに、彼女の体は勝手にリズムを取っていた。
どれくらい時間が経ったのか。「そろそろ戻りましょう」と誰かが言い、それを合図に皆が一斉にその場を離れ、辺りは静まりかえった。
「帰らないと……夕鈴、きっと怒ってるわ……わ」
時間が経つのも忘れ座り込んでいたため、立ち上がろうとしたが、足が痺れてよろめいた。
「きゃあっ」
よろけて踏ん張ろうとしたが、雨のせいで地面が泥濘んで足を滑らせ、そのままドボンと池に落ちてしまった。
物心ついた頃から、彼女はいつも食べ物のことを考えていた。
夕鈴に我慢しろと言われても、幼い彼女にそれを理解し納得するのは無理な話だった。
食べ物を求め、彼女は夕鈴が寝ている隙をついて、こっそり外に出た。
宮の外に出てはいけない。
それも夕鈴から口を酸っぱくして言われていたが、なぜ駄目なのか理由もわからず、またたとえわかったとしても、五歳児に通じるはずもない。
前の晩雨が降ったため、地面はあちこち水溜りが出来、避けて通るのは彼女の短い足では難しい。
もともとボロボロで穴の空いた靴に水が染み込み、グチョグチョという音を立てながら彼女は歩いた。
キャハハハという楽しそうな声が聞こえてきて、何事かと彼女は声のする方に、引き寄せられるかのように歩いて行った。
「皇太子様、公主様、雨のせいで池の水が濁り増えております。縁も滑りやすくなって危険ですのであまり縁に近づかないでくださいませ」
女性が声を張り上げ、「はあい」「わかったわ」という返事が聞こえる。
こっそり木の陰に隠れながら、彼女は様子を窺った。
そこにあったのは大きな池。
縁から朱塗りの屋根付き通路が池の中央まで伸び、中央には丸い柱に囲まれた四角く囲った場所が設けられている。
そしてその中央にでは、華やかな音楽と共に歌声や笑い声が聞こえてくる。
(何をやってるのかな)
楽しそうは雰囲気は、遠くから眺めている彼女にも伝わる。
軽快な調べに、彼女の体は勝手にリズムを取っていた。
どれくらい時間が経ったのか。「そろそろ戻りましょう」と誰かが言い、それを合図に皆が一斉にその場を離れ、辺りは静まりかえった。
「帰らないと……夕鈴、きっと怒ってるわ……わ」
時間が経つのも忘れ座り込んでいたため、立ち上がろうとしたが、足が痺れてよろめいた。
「きゃあっ」
よろけて踏ん張ろうとしたが、雨のせいで地面が泥濘んで足を滑らせ、そのままドボンと池に落ちてしまった。
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