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第四章
⑤
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「ドラゴン・・テイマー?」
「そうだ。普通に魔物を従え使役するテイマーと違い、竜を使役するのがドラゴンテイマーだ」
「それが、私?」
元のベッドを置いてある場所に戻り、そこに座ってルウの話を聞く。
膝の上にはポチタマがスウスウと寝息を立てながら寝ている。
あの後、ポチタマはルウに噛みついたまま、なかなか離そうとしなかった。
「それくらいで離してあげて。ルウも大人げないわよ」
見かねた私が一人と一匹に声を掛けると、彼らはピタリと動きを止めて、ポチタマはルウの腕から牙を抜き、ルウは恨みがましい目でポチタマを睨みながら自分の腕に回復魔法をかけた。
『デルフィーヌ』
ポチタマはまだ弱々しい羽を羽ばたかせながら、よたよたと私の胸に飛び込んできた。
「お前、性懲りも無くデルフィーヌに抱きついて」
憎々しげにポチタマを睨み付ける。
「もう、ルウ。大人げないわよ」
『そうだ。大人のくせに』
ポチタマも私の言葉に便乗してルウを馬鹿にする。
「何を言っているかわからないが、馬鹿にされているのはわかる」
「え、ルウはこの子が何を言っているのかわからないの?」
「オレには相変わらず『グルグル』とか『ガウガウ』としか聞こえない。デルフィーヌには違うんだな?」
「え、うん。ちゃんと聞こえるよ。ねえ、『助けて』って言ったのはあなた?」
『うん。ボクね。卵から出たかったのに、とても硬くて、どんなに頑張っても出られなかったの。だからずっと誰かが助けてくれるのを待ってたの』
パタパタと尻尾を振りながら、ポチタマは言った。
『デルフィーヌが来てくれてうれしい。ボクね、デルフィーヌが大好き。ずっと真っ暗なところに閉じ込められて寂しかったんだ。でもデルフィーヌに名前をもらってデルフィーヌの傍にいられて、もう寂しくないよ』
「えっと、あなた・・お父さんとかお母さんは?」
『お父さん? お母さん? 何それ? ボクはデルフィーヌのものだよ』
どうやらここに卵のまま放置されていて、自分の親が誰かまではわからないらしい。
「一応、竜にも孤児ってあるのかな」
「竜の生態はよく分かっていない。近いところで翼竜の生態からおおよその見当はつくけど、人間だって血は繋がっていても希薄な関係もあるからね。そのあたりはオレたちの思うような親子の絆というものが少ないのかも知れない」
「竜って、何を食べるんだろ」
『ボク何でも食べるよ。デルフィーヌがくれるものなら、何でも好き』
「なんでもって・・じゃあ、私と同じものとかで、いいのかな」
『うん。デルフィーヌ、ボクに名前をくれてありがとう』
「よろしくね、ポチタマ」
どれくらいの期間、卵から孵ろうとして頑張っていたのかわからないが、すっかり疲れてポチタマはすぐに寝てしまった。
そして私はルウからドラゴンテイマーの話を聞かされたのだった。
「テイマー・・ねえ」
「暗黒竜と双剣の勇者」の世界で、勇者の姉としてモブだと思っていた自分に、まさかそんな力があったとは思わなかった。
「でも、それって私がもっと早くにこの力に目覚めていたら、暗黒竜も殺さなくて良かったのかな」
そんなことになったら、双剣の勇者として讃えられるルウの存在意義が無くなってしまう。
ストーリーの展開どおり、ルウは暗黒竜を倒した。
そして勇者として地位と名声を手に入れた。
「それは仕方が無い。そんな能力があるなんて知らなかったんだから。それに、この『ポチタマ』がテイムできても、暗黒竜を同じように出来たかどうかはわからない。もしかしたらテイム出来ずに、殺されていたかもしれないんだ」
ぎゅっと私の手を握り、もし私が死んでしまったらと想像したのか、ルウは青い顔をした。
「デルフィーヌが強いことは知っている。オレには負けるが狩りの腕だっていい。でも、そんなことは関係なく、オレはデルフィーヌが好きだ。何の力がなくても」
「ルウ」
「オレの手でデルフィーヌを甘やかしたい。もっとオレなしで生きられないように、グズグズに蕩けさせて、オレの体の下で喘いで啼く姿が見たい」
「ん?」
最初感動の告白だったのが、次第にあっち方面に方向転換されていく。
「駄目よルウ。ポチタマが起きちゃう」
「忌々しい。デルフィーヌはそいつとオレ、どっちが大事なの?」
「は? 何を言っているのよ」
私と仕事どっちが大事、と聞いてくる彼女みたいなルウの言葉に呆れる。
「この子とルウを天秤に掛けるなんてできないわ。この子は、この子でルウはルウよ」
どっちも大事だし、大事の意味が違う。
「オレって、デルフィーヌにとって何? オレにとってデルフィーヌは全てだよ」
肩を引き寄せ、ルウの唇が頭や額、瞼や頬に触れる。ルウにとって今のところ私が一番なのはその言動から伝わってくる。
そんなルウの想いに応えるため、私は膝の上のポチタマを起こさないように、そっと腰を捻ってルウの頬に触れる。
「私にとってもルウは特別よ。何とも思っていない相手に抱かれて、あんな風に乱れたりしない。ルウのことは大事に思っているわ」
「デルフィーヌ。うれしい」
ポチタマもそうだが、私の言動に一喜一憂しているルウを見ると、ルウがどれだけ私のことを大事に思ってくれているのかがわかる。
(こんなご褒美あっていいのかな)
前世では特に何か良いことをした記憶も無い。
なのに、こんな風に重たいほどの愛情を向けられて、悪い気はしない。人生何の特典かと思った。
「そうだ。普通に魔物を従え使役するテイマーと違い、竜を使役するのがドラゴンテイマーだ」
「それが、私?」
元のベッドを置いてある場所に戻り、そこに座ってルウの話を聞く。
膝の上にはポチタマがスウスウと寝息を立てながら寝ている。
あの後、ポチタマはルウに噛みついたまま、なかなか離そうとしなかった。
「それくらいで離してあげて。ルウも大人げないわよ」
見かねた私が一人と一匹に声を掛けると、彼らはピタリと動きを止めて、ポチタマはルウの腕から牙を抜き、ルウは恨みがましい目でポチタマを睨みながら自分の腕に回復魔法をかけた。
『デルフィーヌ』
ポチタマはまだ弱々しい羽を羽ばたかせながら、よたよたと私の胸に飛び込んできた。
「お前、性懲りも無くデルフィーヌに抱きついて」
憎々しげにポチタマを睨み付ける。
「もう、ルウ。大人げないわよ」
『そうだ。大人のくせに』
ポチタマも私の言葉に便乗してルウを馬鹿にする。
「何を言っているかわからないが、馬鹿にされているのはわかる」
「え、ルウはこの子が何を言っているのかわからないの?」
「オレには相変わらず『グルグル』とか『ガウガウ』としか聞こえない。デルフィーヌには違うんだな?」
「え、うん。ちゃんと聞こえるよ。ねえ、『助けて』って言ったのはあなた?」
『うん。ボクね。卵から出たかったのに、とても硬くて、どんなに頑張っても出られなかったの。だからずっと誰かが助けてくれるのを待ってたの』
パタパタと尻尾を振りながら、ポチタマは言った。
『デルフィーヌが来てくれてうれしい。ボクね、デルフィーヌが大好き。ずっと真っ暗なところに閉じ込められて寂しかったんだ。でもデルフィーヌに名前をもらってデルフィーヌの傍にいられて、もう寂しくないよ』
「えっと、あなた・・お父さんとかお母さんは?」
『お父さん? お母さん? 何それ? ボクはデルフィーヌのものだよ』
どうやらここに卵のまま放置されていて、自分の親が誰かまではわからないらしい。
「一応、竜にも孤児ってあるのかな」
「竜の生態はよく分かっていない。近いところで翼竜の生態からおおよその見当はつくけど、人間だって血は繋がっていても希薄な関係もあるからね。そのあたりはオレたちの思うような親子の絆というものが少ないのかも知れない」
「竜って、何を食べるんだろ」
『ボク何でも食べるよ。デルフィーヌがくれるものなら、何でも好き』
「なんでもって・・じゃあ、私と同じものとかで、いいのかな」
『うん。デルフィーヌ、ボクに名前をくれてありがとう』
「よろしくね、ポチタマ」
どれくらいの期間、卵から孵ろうとして頑張っていたのかわからないが、すっかり疲れてポチタマはすぐに寝てしまった。
そして私はルウからドラゴンテイマーの話を聞かされたのだった。
「テイマー・・ねえ」
「暗黒竜と双剣の勇者」の世界で、勇者の姉としてモブだと思っていた自分に、まさかそんな力があったとは思わなかった。
「でも、それって私がもっと早くにこの力に目覚めていたら、暗黒竜も殺さなくて良かったのかな」
そんなことになったら、双剣の勇者として讃えられるルウの存在意義が無くなってしまう。
ストーリーの展開どおり、ルウは暗黒竜を倒した。
そして勇者として地位と名声を手に入れた。
「それは仕方が無い。そんな能力があるなんて知らなかったんだから。それに、この『ポチタマ』がテイムできても、暗黒竜を同じように出来たかどうかはわからない。もしかしたらテイム出来ずに、殺されていたかもしれないんだ」
ぎゅっと私の手を握り、もし私が死んでしまったらと想像したのか、ルウは青い顔をした。
「デルフィーヌが強いことは知っている。オレには負けるが狩りの腕だっていい。でも、そんなことは関係なく、オレはデルフィーヌが好きだ。何の力がなくても」
「ルウ」
「オレの手でデルフィーヌを甘やかしたい。もっとオレなしで生きられないように、グズグズに蕩けさせて、オレの体の下で喘いで啼く姿が見たい」
「ん?」
最初感動の告白だったのが、次第にあっち方面に方向転換されていく。
「駄目よルウ。ポチタマが起きちゃう」
「忌々しい。デルフィーヌはそいつとオレ、どっちが大事なの?」
「は? 何を言っているのよ」
私と仕事どっちが大事、と聞いてくる彼女みたいなルウの言葉に呆れる。
「この子とルウを天秤に掛けるなんてできないわ。この子は、この子でルウはルウよ」
どっちも大事だし、大事の意味が違う。
「オレって、デルフィーヌにとって何? オレにとってデルフィーヌは全てだよ」
肩を引き寄せ、ルウの唇が頭や額、瞼や頬に触れる。ルウにとって今のところ私が一番なのはその言動から伝わってくる。
そんなルウの想いに応えるため、私は膝の上のポチタマを起こさないように、そっと腰を捻ってルウの頬に触れる。
「私にとってもルウは特別よ。何とも思っていない相手に抱かれて、あんな風に乱れたりしない。ルウのことは大事に思っているわ」
「デルフィーヌ。うれしい」
ポチタマもそうだが、私の言動に一喜一憂しているルウを見ると、ルウがどれだけ私のことを大事に思ってくれているのかがわかる。
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