【R18】勇者の姉は究極のモブではなかったんですか?

七夜かなた

文字の大きさ
64 / 65
第七章

しおりを挟む
「何ですか?」
「二人の話を聞いていると、そのドラゴンは生まれたばかりみたいだけど」
「そうですね。まだ一週間も経っていません」
「なのに、どうしてそんなに話が出来るんだ?」
「え?」

 そう聞かれて、ルウと目を合わせ、それからポチタマを見る。

「そう言えばそうですね」
「言われてみれば・・」
『なに、どうしたの? ボクのこと?』
「えっとね。どうしてそんなに話せるのかなって。まだ卵から孵ったばかりでしょ?」
『そんなの、当たり前だよ』
「当たり前?」
『うん、だってボクはデルフィーヌと繋がっている。デルフィーヌが持っている記憶の中から、ボクに必要な知識を共有しているんだ』
「え、そうなの?」
「何て言っているんだ?」

 二人にポチタマの言ったことを伝えた。

「そんなこと、他のテイマーから聞いたことがないぞ」
「そうだな。視覚や聴覚などの感覚を共有するというのは聞いたことがあるけど、それはあくまで、従魔の力をテイマーが利用しているだけだ。知識を共有するなんて聞いたことがない」
「ドラゴン、だから?」
「そうかもしれないな。何せ、ドラゴンテイマー自体が稀だから、ドラゴンのこともよくわかっていない」

 そう言われて、ポチタマをもう一度見る。
 軽く頭を傾けて、つぶらな瞳を私に向けている。
 まだまだ小さいけど、その能力は計り知れない。そんなドラゴンをテイムしている私。
 おまけに謎の「勇者の加護」なんてものも付いている。

「ドラゴンの知能が高いことはわかったわ」

 私の知識を共有しているとは言え、言葉のチョイスは間違っていない。ということは、ちゃんと理解して選んでいると言うことだ。

「えっと、じゃあそろそろいいか?」
「はい」

 中断していた署名をすると、ポチタマの前足に腕輪が出現し、一瞬光った。

「え、これで終わり?」
「そうだ。なんだ、もっと派手なのを期待していたか?」
「まあ、そういうところです」

 図星を差されて少し照れる。

「じゃあ、無事に登録も終わったし帰るか」

 用は済んだとばかりにルウが部屋を出て行こうとする。

「おいおい、もう帰るのか」
「ああ」
「もう少しゆっくりして行けよ」
「昨日王都に来たばかりだから、デルフィーヌを案内しようと思って」
「何だ、デートか」
「そう。初デート」
「初デ・・デート・・」

 言われて初めてのデートだと気づく。

「それに、本当に行きたいところもあるから」
「そうか。じゃあ、またな」
「バッカスさん、ありがとうございました」
「まあ、色々大変だろうけど、姉ちゃんも結構強くなったみたいだから、頑張れよ」

 色々大変ってどういうことだろうと思いながら、私達はギルドを後にした。
 ポチタマは部屋を出るときに姿を隠し、ルウもギルドの外へ出るとまた魔法で少し姿を変えた。
 
「ねえ、どこに行くの? 行きたい所ってどこ?」
「着けばわかる」

 そう言ってルウはスタスタと人通りの多い王都の道を歩いて行く。
 センサーでも付いているのかと思うくらい、スイスイと人と人の間を上手に抜けていく。
 でも私の歩調に合わせてくれている。それどころか、手を繋いで私がぶつかりそうになると、さりげなく引っ張って、ぶつからないようにしてくれる。
 
「意外」
「何が?」
「すごく誘導が上手だなって思って。私が人とぶつからないように気を遣ってくれているみたいだし」
「それが意外ってこと?」
「うん、そう。これも何か魔法を使っているの?」
「そこまではない。ただ、人の歩いている方向や体の向きなんかで動きを予測しているだけだ」
「へえ、そうなんだ」
「勇者の訓練をしている時に教えてもらった。魔法や武器が使えなくても戦えるように、体術の訓練も受けた。その先生が気の流れを読むことを教えてくれた」

 話をしながらルウが私を連れてきたのは、ひときわ賑やかな通りから少し裏に入った場所にあるお店だった。

「ここだ」
「ここ?」

 お店なのか誰かの家なのか。特に看板もない。

「お友達の家?」
「友達の友達・・ベネデッタが紹介してくれた店だ」
「お店なの?」

 私はもう一度入り口の扉を見た。何の表札もない。

「看板とかないけど」
「わかるよ。オレも初めて来たときはすぐにわからなかった。ベネデッタが一緒じゃなかったら迷ったよ」

 そう言いながら、ルウは扉を外側に開いて中に入っていく。
 チリリンと、ドアベルが鳴る。
 私も慌ててルウの後に続いた。

「いらっしゃい、あら、ルウちゃん」
「ル、ルウちゃん?」

 奥から出てきたのは、なよなよとしたおねえ系の男性だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...