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24 人生初の…
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朝食の場所は夕べの食堂とは違うということで、スフィアについていく。
「やっぱり…おかしくないですか?」
王女殿下のお古というドレスは袖や裾の長さはちょうど良かったけど、腰の位置は肋骨の下辺りにあって、胸周りは弱冠の余裕があった。
つまり足の長さは私の方が短くて、胸もまだボリュームが足りないと言うこと。
身長百七十の財前さんでも小柄なのに、これでは本当にお子様サイズ。
それよりももうすぐ三十代になろうとする私が十代のフリルが付いたドレスを着るなんて、心情的に痛いものがある。
「大丈夫です。良くお似合いですよ」
ベラや他の二人がいくら太鼓判を押してくれても、ショップ店員さんの「わあ、お客様にピッタリです」というビジネストークにしか聞こえない。
「おはようございます」
「あら、おはよう」
「おはよう」
案内された部屋は奥にガラス張りの温室のある広さニ十畳の部屋。
すでにアドルファスさんとレディ・シンクレアが着座していた。
私が入っていくとアドルファスさんがさっと立ち上がり、レディ・シンクレアの向かいの椅子を引いた。
「ありがとうございます」
彼の待ち構える所に着座する。
「良くお似合いですね」
「そうですか? 私には少しデザインが若過ぎるかと…」
「そんなことはありません。きっとあなたなら何を着てもお似合いですよ」
「……どうも」
本気なのかリップ・サービスなのか、どちらかわからないので当たり障りのない返事をした。
「あの、顔に何か付いていますか」
アイスブルーの瞳が私の顔をじっと見るので気になる。
「いえ、明るいところで見ると瞳の色が違うので。真っ黒だと思っていました」
黒い瞳と言っても実際黒いのは瞳の中心で、その周りは茶色だったりする。
「それに、我々のような色より相手の顔がよく写る」
きっと私の瞳には今目の前にいるアドルファスさんの顔が写っているのだろう。
魅入るように見つめられてこっちが恥ずかしくなって視線が泳いだ。
「アドルファス、そろそろ席に戻りなさい」
レディ・シンクレアが声をかけなければ、もっと見つめられていたのではないだろうか。
「お部屋は気に入っていただけましたか?」
渋々と言った感じで元の席に戻った彼が質問した。
「はい。でも私には広過ぎるくらいです」
「よく眠れましたか?」
「実はあまり…」
ひと晩睡眠時間が少なくなったとしてもすぐに顔には出ないとは思うが、嘘をついても仕方がない。
「寝具が合いませんでしたか?」
不眠の原因のひとつが自分の発言だとわかっているのかいないのか、アドルファスさんが更に追加で問いかけてきた。
「そういうわけでは…色々あって気が立っていたみたいです。でも明け方には少し眠れましたから」
「いきなり環境が変わって、何も感じないわけがありません。もし今夜も眠れないようなら私が睡眠の魔法で眠らせて差し上げますから、遠慮なく言ってください」
魔法とは睡眠導入剤的なものなのか、眠ったら何があっても起きられない気がする。
「考えておきますが、出来るだけそう言うのは頼らないでおきます。横になっているだけでも少しは休めますから」
「そうですか…」
残念そうな顔をされて、断って悪かったと心が痛む。
「アドルファスに聞きましたが、厨房を見学されたいとか」
レディ・シンクレアが話題を変えた。
「はい、夕べアドルファスさんにお訊きしたら、それはレディ・シンクレアの許可がいると…構いませんか」
「構いませんよ。では、食事が終わったらベラに案内させましょう」
「ありがとうございます」
「こちらの世界の料理はあなたの世界のとは違いますか?」
「それほど大きな違いはありませんが、やはり慣れ親しんだ味はあります。それに単純にどんな様子なのか興味があります」
「変わっているわね。あ、これは悪い意味で言っているのではありませんよ」
「わかっています」
そこへ朝食か運ばれてきた。
ボウルいっぱいに盛られたスクランブルエッグと、太くて大きなソーセージ、薄くスライスした硬いパン、朝から食べられるのかと思うかたまり肉とぶ厚いベーコン、それから色とりどりと山盛りフルーツ。
相変わらず野菜の存在はない。
でもフルーツがあるのは嬉しい。
「すごい量の卵ですね」
色は黄色というより赤に近いオレンジだが、多分卵だろう。
「これはコカトリスという鳥の卵だ。これで卵一個分だな」
「こ、これで一個分」
私の顔くらいの大きさのボウルいっぱいに盛り上がって盛り付けられているそれを、給仕の人が大きなスプーンで皿に取り分けていき、そこにソーセージとベーコンを乗せていく。
「あなたの分は私が」
アドルファスさんがボウルを給仕から受け取り、自分の半分の料理を私の皿に乗せた。
「これくらいで?」
「あ、はい…」
主がそこまでするものなのか。レディ・シンクレアの方を見ても彼女は何も言わず、自分のお皿のものを食べている。
そのまま卵に続いてソーセージ一本とベーコンの半分をそれぞれアドルファスさんがナイフで切って、自分の皿と私の皿に取り分けるのを眺めていた。
「さあ、召し上がれ」
「いただきます」
満面の笑みで差し出されたお皿を見て思った。
男の人に取り分けてもらうのは人生初めてかも知れない。
「やっぱり…おかしくないですか?」
王女殿下のお古というドレスは袖や裾の長さはちょうど良かったけど、腰の位置は肋骨の下辺りにあって、胸周りは弱冠の余裕があった。
つまり足の長さは私の方が短くて、胸もまだボリュームが足りないと言うこと。
身長百七十の財前さんでも小柄なのに、これでは本当にお子様サイズ。
それよりももうすぐ三十代になろうとする私が十代のフリルが付いたドレスを着るなんて、心情的に痛いものがある。
「大丈夫です。良くお似合いですよ」
ベラや他の二人がいくら太鼓判を押してくれても、ショップ店員さんの「わあ、お客様にピッタリです」というビジネストークにしか聞こえない。
「おはようございます」
「あら、おはよう」
「おはよう」
案内された部屋は奥にガラス張りの温室のある広さニ十畳の部屋。
すでにアドルファスさんとレディ・シンクレアが着座していた。
私が入っていくとアドルファスさんがさっと立ち上がり、レディ・シンクレアの向かいの椅子を引いた。
「ありがとうございます」
彼の待ち構える所に着座する。
「良くお似合いですね」
「そうですか? 私には少しデザインが若過ぎるかと…」
「そんなことはありません。きっとあなたなら何を着てもお似合いですよ」
「……どうも」
本気なのかリップ・サービスなのか、どちらかわからないので当たり障りのない返事をした。
「あの、顔に何か付いていますか」
アイスブルーの瞳が私の顔をじっと見るので気になる。
「いえ、明るいところで見ると瞳の色が違うので。真っ黒だと思っていました」
黒い瞳と言っても実際黒いのは瞳の中心で、その周りは茶色だったりする。
「それに、我々のような色より相手の顔がよく写る」
きっと私の瞳には今目の前にいるアドルファスさんの顔が写っているのだろう。
魅入るように見つめられてこっちが恥ずかしくなって視線が泳いだ。
「アドルファス、そろそろ席に戻りなさい」
レディ・シンクレアが声をかけなければ、もっと見つめられていたのではないだろうか。
「お部屋は気に入っていただけましたか?」
渋々と言った感じで元の席に戻った彼が質問した。
「はい。でも私には広過ぎるくらいです」
「よく眠れましたか?」
「実はあまり…」
ひと晩睡眠時間が少なくなったとしてもすぐに顔には出ないとは思うが、嘘をついても仕方がない。
「寝具が合いませんでしたか?」
不眠の原因のひとつが自分の発言だとわかっているのかいないのか、アドルファスさんが更に追加で問いかけてきた。
「そういうわけでは…色々あって気が立っていたみたいです。でも明け方には少し眠れましたから」
「いきなり環境が変わって、何も感じないわけがありません。もし今夜も眠れないようなら私が睡眠の魔法で眠らせて差し上げますから、遠慮なく言ってください」
魔法とは睡眠導入剤的なものなのか、眠ったら何があっても起きられない気がする。
「考えておきますが、出来るだけそう言うのは頼らないでおきます。横になっているだけでも少しは休めますから」
「そうですか…」
残念そうな顔をされて、断って悪かったと心が痛む。
「アドルファスに聞きましたが、厨房を見学されたいとか」
レディ・シンクレアが話題を変えた。
「はい、夕べアドルファスさんにお訊きしたら、それはレディ・シンクレアの許可がいると…構いませんか」
「構いませんよ。では、食事が終わったらベラに案内させましょう」
「ありがとうございます」
「こちらの世界の料理はあなたの世界のとは違いますか?」
「それほど大きな違いはありませんが、やはり慣れ親しんだ味はあります。それに単純にどんな様子なのか興味があります」
「変わっているわね。あ、これは悪い意味で言っているのではありませんよ」
「わかっています」
そこへ朝食か運ばれてきた。
ボウルいっぱいに盛られたスクランブルエッグと、太くて大きなソーセージ、薄くスライスした硬いパン、朝から食べられるのかと思うかたまり肉とぶ厚いベーコン、それから色とりどりと山盛りフルーツ。
相変わらず野菜の存在はない。
でもフルーツがあるのは嬉しい。
「すごい量の卵ですね」
色は黄色というより赤に近いオレンジだが、多分卵だろう。
「これはコカトリスという鳥の卵だ。これで卵一個分だな」
「こ、これで一個分」
私の顔くらいの大きさのボウルいっぱいに盛り上がって盛り付けられているそれを、給仕の人が大きなスプーンで皿に取り分けていき、そこにソーセージとベーコンを乗せていく。
「あなたの分は私が」
アドルファスさんがボウルを給仕から受け取り、自分の半分の料理を私の皿に乗せた。
「これくらいで?」
「あ、はい…」
主がそこまでするものなのか。レディ・シンクレアの方を見ても彼女は何も言わず、自分のお皿のものを食べている。
そのまま卵に続いてソーセージ一本とベーコンの半分をそれぞれアドルファスさんがナイフで切って、自分の皿と私の皿に取り分けるのを眺めていた。
「さあ、召し上がれ」
「いただきます」
満面の笑みで差し出されたお皿を見て思った。
男の人に取り分けてもらうのは人生初めてかも知れない。
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