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45 急病人
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「おい、誰か治療師を呼んでこい」
「ばか、こんなところにいるわけないだろ!」
「じゃあ、神殿か」
「おい、ファビオ、しっかしろ」
「大丈夫だ。ちょっと立ちくらみしただけ…」
人気店の行列ではなく、誰かが倒れたらしい。
近くに寄って人々が立っている間から覗くと、男の人が座り込んでいた。
「誰かファビオの家に行って家族を呼んで来たほうが…」
「やめてくれ、家族に心配させたく…うっ」
どうやら具合が悪くなって周りが心配しているようだ。
「だけど、顔も赤いし目眩がするんだろ?」
「最近忙しくて寝る間も惜しんで働いているらしいじゃないか、無理がたたったんじゃ…」
「なあに……これ、くらい…」
そう言いながらも男の人は肩で息をして苦しそうにしている。
「あの、ちょっとすいません」
人混みをかき分けて前へ進み出た。
「おじさん、ちょっといいですか?」
「な、なんだい、おじょうちゃん」
真っ赤な顔をして苦しそうなおじさんの額に手を当てると、少し熱っぽい。それに汗が異常なほど吹き出ている。もしかしたら…
「あの、目眩や吐き気はありますか? 水は飲んでいますか? 手足のしびれやだるさは?」
「は? なんだい、やぶからぼうに…」
「訊いたことに答えてください、大事なことなんです」
意思疎通は出来ている。でも安心はできない。
「あ、頭が痛くて、目眩も…水は…忙しかったから…」
私の語気の強さに気圧されておじさんが答える。
「誰かこの人を日陰に連れて行ってください。それからベルトも緩めて楽にさせてあげて。後、冷たい水と布をいくつかお願いします」
「あんた、治せるのか?」
私が指示すると、横にいたおばさんが訊いて来た
「いえ、ただ症状を和らげることはできます。とにかく言ったとおりにお願いします」
「わかった。ちょっとあんたたち、ファビオを建物の裏に運んで、それから向こうの広場の井戸で水を汲んできて」
「あ、それからコップと…できれば塩を少し」
「塩?」
「わかった近所から少しもらってくる」
男の人三人がかりでおじさんを運び、衣服を緩める。その内に水を張った桶と、布が届いた。
「持ってきたけど、どうする?」
「濡らして首と脇の下、それから鼠径部…脚の付け根を冷やしてください」
「わかった」
男の人で私の言った場所に濡らした布を当てる。それから水の入ったコップが届いたので、塩を少し入れておじさんの前に差し出した。
「ゆっくり飲んでください。これでしばらく様子を見ましょう」
意識もあるし、差し出したコップを掴む手が少し震えていたけど、自分で飲むことができている。
「おじょうちゃん、ファビオはどこが悪いんだ?」
男の人の一人が訊ねた。
「たぶん、熱中症だと思います」
「ねっちゅー?」
「あ、体の熱がうまく発散されず、水分を取っていなかったようなので軽く脱水症状になったみたいです」
「だっすい…それは危ないのか?」
「放っておけば命に関わります」
「え!」
「でも意識はしっかりされているようなので、軽いとは思います」
「水に塩を入れたのは?」
「水だけでもいいんですが、汗で体の塩分も失っているので、少し補給しました」
「脇や首を冷やすのは?」
「ここに太い血管…血液が流れている管があるので、そこを冷やすと体を早く冷すことができるんです。どうですか、具合は?」
周りの人に説明しているうちに、おじさんの顔色が少し良くなって呼吸も落ち着いてきた。
「ありがとう…だいぶ楽になった」
「頭はまだ痛みますか?」
「まだ少し…だが、さっきよりはましだ」
おじさんがそう言うと、周りから安堵の声が上がった。
「驚いたよ。急にふらついて倒れるから」
「驚かせてすまない」
「大したことにならなくて良かった。神官や治療師を呼ばないといけないかと思った」
「心配かけたな。皆仕事に戻ってくれ」
「あの、お医者様っていないんですか?」
「医者?」
「病気や怪我を治してくれる人です。薬とかで…」
「薬草師なら…でも腹下しや軽い切り傷程度しか治せないし、今みたいなのはまず無理だな」
どうやらここでは魔法がある分、医療技術は発展していないようで、薬草などは出回っていても応急手当に毛が生えた程度の治療しかされないようだ。
「おじょうちゃんありがとよ。お陰で神官や治療師を呼んで余計な金を使わずに済んだ」
「いえ、私はただ同じ症状の人を世話したことがあるだけですから。でももう少し安静にしておかれた方がいいですよ」
「しかし、店をずっとほったらかしと言うわけには…」
「ではそこに居てください。私が店番をして、何かあれば声をかけますから」
「しかし…」
「そうしてもらいなよ、ファビオ。私らも協力するから。私はミランダ、隣で花を売ってるんだ」
先頭に立ってファビオさんの看病をしてくれていたきっぷのいいおばさんが自己紹介した。
「ばか、こんなところにいるわけないだろ!」
「じゃあ、神殿か」
「おい、ファビオ、しっかしろ」
「大丈夫だ。ちょっと立ちくらみしただけ…」
人気店の行列ではなく、誰かが倒れたらしい。
近くに寄って人々が立っている間から覗くと、男の人が座り込んでいた。
「誰かファビオの家に行って家族を呼んで来たほうが…」
「やめてくれ、家族に心配させたく…うっ」
どうやら具合が悪くなって周りが心配しているようだ。
「だけど、顔も赤いし目眩がするんだろ?」
「最近忙しくて寝る間も惜しんで働いているらしいじゃないか、無理がたたったんじゃ…」
「なあに……これ、くらい…」
そう言いながらも男の人は肩で息をして苦しそうにしている。
「あの、ちょっとすいません」
人混みをかき分けて前へ進み出た。
「おじさん、ちょっといいですか?」
「な、なんだい、おじょうちゃん」
真っ赤な顔をして苦しそうなおじさんの額に手を当てると、少し熱っぽい。それに汗が異常なほど吹き出ている。もしかしたら…
「あの、目眩や吐き気はありますか? 水は飲んでいますか? 手足のしびれやだるさは?」
「は? なんだい、やぶからぼうに…」
「訊いたことに答えてください、大事なことなんです」
意思疎通は出来ている。でも安心はできない。
「あ、頭が痛くて、目眩も…水は…忙しかったから…」
私の語気の強さに気圧されておじさんが答える。
「誰かこの人を日陰に連れて行ってください。それからベルトも緩めて楽にさせてあげて。後、冷たい水と布をいくつかお願いします」
「あんた、治せるのか?」
私が指示すると、横にいたおばさんが訊いて来た
「いえ、ただ症状を和らげることはできます。とにかく言ったとおりにお願いします」
「わかった。ちょっとあんたたち、ファビオを建物の裏に運んで、それから向こうの広場の井戸で水を汲んできて」
「あ、それからコップと…できれば塩を少し」
「塩?」
「わかった近所から少しもらってくる」
男の人三人がかりでおじさんを運び、衣服を緩める。その内に水を張った桶と、布が届いた。
「持ってきたけど、どうする?」
「濡らして首と脇の下、それから鼠径部…脚の付け根を冷やしてください」
「わかった」
男の人で私の言った場所に濡らした布を当てる。それから水の入ったコップが届いたので、塩を少し入れておじさんの前に差し出した。
「ゆっくり飲んでください。これでしばらく様子を見ましょう」
意識もあるし、差し出したコップを掴む手が少し震えていたけど、自分で飲むことができている。
「おじょうちゃん、ファビオはどこが悪いんだ?」
男の人の一人が訊ねた。
「たぶん、熱中症だと思います」
「ねっちゅー?」
「あ、体の熱がうまく発散されず、水分を取っていなかったようなので軽く脱水症状になったみたいです」
「だっすい…それは危ないのか?」
「放っておけば命に関わります」
「え!」
「でも意識はしっかりされているようなので、軽いとは思います」
「水に塩を入れたのは?」
「水だけでもいいんですが、汗で体の塩分も失っているので、少し補給しました」
「脇や首を冷やすのは?」
「ここに太い血管…血液が流れている管があるので、そこを冷やすと体を早く冷すことができるんです。どうですか、具合は?」
周りの人に説明しているうちに、おじさんの顔色が少し良くなって呼吸も落ち着いてきた。
「ありがとう…だいぶ楽になった」
「頭はまだ痛みますか?」
「まだ少し…だが、さっきよりはましだ」
おじさんがそう言うと、周りから安堵の声が上がった。
「驚いたよ。急にふらついて倒れるから」
「驚かせてすまない」
「大したことにならなくて良かった。神官や治療師を呼ばないといけないかと思った」
「心配かけたな。皆仕事に戻ってくれ」
「あの、お医者様っていないんですか?」
「医者?」
「病気や怪我を治してくれる人です。薬とかで…」
「薬草師なら…でも腹下しや軽い切り傷程度しか治せないし、今みたいなのはまず無理だな」
どうやらここでは魔法がある分、医療技術は発展していないようで、薬草などは出回っていても応急手当に毛が生えた程度の治療しかされないようだ。
「おじょうちゃんありがとよ。お陰で神官や治療師を呼んで余計な金を使わずに済んだ」
「いえ、私はただ同じ症状の人を世話したことがあるだけですから。でももう少し安静にしておかれた方がいいですよ」
「しかし、店をずっとほったらかしと言うわけには…」
「ではそこに居てください。私が店番をして、何かあれば声をかけますから」
「しかし…」
「そうしてもらいなよ、ファビオ。私らも協力するから。私はミランダ、隣で花を売ってるんだ」
先頭に立ってファビオさんの看病をしてくれていたきっぷのいいおばさんが自己紹介した。
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