【完結】異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます

七夜かなた

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77  小さくなっていくもの

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馬車の中で散々達かされ、クタリとアドルファスさんに寄りかかる。洗浄魔法で綺麗にしてもらったが、体の奥に残る余韻までは消せない。でもその余韻が心地良い。

「急ぎすぎましたか。でもあなたも案外濡れやすいですね」
「アドルファスさんの意地悪」
「すみません。あなたがあまりに愛らしくて…少し嫉妬もあって乱暴だったかも知れません」
「私は器用ではないので、一度に何人もは無理です。だから二股されることは、あってもすることはないです」
「そのことですが、されたこと…あるということですか?」
「実は…」

少し前に付き合った人が実は既婚者だったこと。それで別れたばかりだと話した。

「その男の頸をへし折ってやりたいです」

アドルファスさんなら本当にやりそう。

「でも、私もそこまで真剣ではなかったし、騙されたことはショックでしたけど、こうして話していても、悲しくはないんです」
「あなたが悲嘆に暮れていないならいいのですが」
「それより、異世界に来たり、魔法を見せてもらったり、こっちに来て色々あって、その人のこともどうでも良くなりました。アドルファスさんとこうしている方が夢みたいで…」
「夢ではありません」

軽く口づけし、私を夢見心地にさせる。とても甘やかな時間。最初は躊躇していたのが信じられない。私の何もかもを受け入れてくれる懐の深さを感じる。

「そう言えば、宴がどうとか別れ際に仰っていましたね」
「聖女殿の儀式と平行して魔巣窟へ向かう準備が進められていました。儀式も終わり、聖女殿の浄化の力も無事慧眼したということで、明後日一番近くの魔巣窟へ出発することになりました」
「もう、ですか?」

あまりに早い出発に驚く。

「それだけ猶予がないということです。明日、王宮で壮行会なるものが開かれるそうです。聖女の正式なお披露目が目的ですが」

慌ただしく何もかもが進められていく。

「財前さんに、頑張ってと伝えてください」
「それは直接言ってあげてください」
「え、私が?」
「陛下からあなたも連れてくるように言われております」
「でも私は…」
「この国の者は知るべきなのです。私達の国を、この世界を救うために自分たちが何に希望を託し、誰がその任を負うのか。そして誰が巻き込まれたのか。聖女もしかり、あなたのこともしかり」
「それは、私が皆の前に立つということですか?」

大勢の前で聖女と同じ世界からやってきた者として紹介される姿を想像する。
熱中症予防や感染症予防の注意喚起を、朝礼で全校生徒の前に立って話したことはあるけど、それ以外で大勢の注目を浴びる機会などなかった。

「すべて陛下が話してくれます。あなたは私の手を握って微笑むだけでいい」
「アドルファスさんが傍にいてくれるのですか?」
「もちろん。レディ・シンクレアもいます。私や彼女が後見に立ち、陛下も認めている。それに、聖女殿も、あなたが彼女にとって大事な存在だと、きっと公言してくれるでしょう。少なくともこの国であなたを蔑ろにする者はいなくなる」

私がこの国で片身の狭い思いをしないように。そのために、心を砕いてくれている。

「唯一の気がかりはエルウィン殿下ですが、殿下は聖女殿があなたを気にかけるのが気に入らないようです」
「そのことなんですけど…」

神殿でのことをアドルファスさんに話した。私にきつく当たっていた彼とも、一応はわかりあえたと思っていいのではないだろうか。

「そうですか…あなたは本当に優しいんですね」
「別に…ただ人と不用意に争いたくないだけです」
「ええ、ただ、その場にアドキンスやカザールがいたことが気になります。彼らもきっとあなたに増々惚れ込んだに違いありません」

アドルファスさんは嫉妬心を隠そうともせず、宙を睨んで忌々しく話す。その脳裏に例の二人がいるのがわかる。

「そうでしょうか」
「この国の女性はとかく自己肯定感が強い。全員が同じとは言いませんが、男性に褒められたり、注目を浴びることが当たり前だと考える人が多い。そんな中であなたのように控えめで、でも芯の強さを持った人を好ましく思う者は多いでしょう」
「アドルファスさんの贔屓目でしょ?」
「いいえ、加えてその見た目の可愛らしさ。小柄で庇護欲を掻き立てる。なのに、夜ともなると、その小さな体からは想像できない大胆さを見せる。正しい眼を持っている者なら、その価値に気づくはずです」
「本当に、買い被り過ぎです」

そこまで褒められるとは思わずアドルファスさんの腕の中でもじもじする。

「少なくとも私はもうあなたに夢中ですから」

甘い言葉と口づけに私は蕩けそうになる。

「アドルファスさんに出会えて良かった」
「私もです。あなたに出会い、こうしていられることを神に感謝します」

レインズフォード家に着くまで、私はアドルファスさんの膝の上で甘い囁きとキスにどっぷりと浸かり、夢見心地の状態だった。

最初はただ帰りたかった元の世界への未練が、どんどん小さくなって来ているのを頭の隅で感じていた。
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