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43 視線の行き先
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その日、公爵は事前に言いおいていたように、なかなか帰宅しなかった。
ジャックさんはいつ公爵が帰宅するかわからないため、何かあれば全て自分が対応すると言って皆には早々に仕事を上がらせた。
シリアさんたちは昨晩のうちにヨガ用衣装を半分ほどは作り終えており、今夜のうちに仕上げると意気込んでいた。
驚いたことに、皆少しずつ差はあるが、もっと露出の少ないものを作るかと思いきや、私の衣装とほぼ変わらないものを作っていた。
この分なら、明日の夜には第一回目のレッスンを始められるだろうと考え、私はカリキュラムを組み立てるため、視察も兼ねて一人ボウルルームへ向かった。
三本立ての燭台に差した蝋燭を灯し、僅かな灯りだけの中にいると、視覚が制限される分、他の感覚が研ぎ澄まされる。
初めてのレッスンは体をほぐしたり、伸ばしたり、簡単な動作に絞る。動作に気を取られ過ぎて呼吸がおろそかにならないよう、気を付けなければならない。
皆に教える分のカリキュラムが出来上がると、今度は自分用にもう少し難易度を高くする。
最後の5分、ゆっくりと呼吸を整え、側に置いた水差しからコップに水を注ぎ、一気に飲んだ。
一息ついてから立ち上がり、荷物を片付けてボウルルームを出た。
「あ……」
ちょうど部屋を出ると、帰宅した殿下とエントランスで鉢合わせた。
慌てて頭を下げる。
「お帰りなさいませ、旦那様」
「…………」
返事がないので不振に思って腰を曲げたまま顔だけをあげると、こちらをじっと見る彼の視線とぶつかった。
「旦那様」
ジャックさんが声をかけると、彼は呪縛が解けたようにそちらに視線を向ける。
「何かお召し上がりになりますか?」
「いや、いい。王宮で兄上たちと共に済ませた。ジャックも今日は朝早くから疲れただろう、戸締まりを確認したらもう休め。後は自分でする」
ジャックさんにそう指示すると、視線は外したまま私の方に顔だけをむける。
「夕べはすまなかった。あまりに気持ちが良すぎて不覚にも寝入ってしまった」
反らされた視線の先に入ろうと立っている場所を動いてみたが、今度はくるっと反対の方を向かれてしまった。
「お役に立てましたなら、幸いでございます。ご要望がありましたら、いつでもお申し付けください」
もう一度殿下が顔を向けた方に場所を移動する。
私の動いた気配に顔を背けたまま、ちらりとこちらの様子を見たが、今度ははっきり体を階段の方に向け、さっさっと階段を上がっていく。
「そなたも早く休め。明日はいつもどおりの時間に起きて登城する。寝坊するな」
立ち止まらず、そのまま二階に上がり振り返ることなく奥へ消えていった。
「ぷ……」
近くにいたジャックさんが口許を覆い、肩で笑っている。
「殿下はご機嫌が悪いのでしょうか」
怒らせることを何かしたのかと考えてみるが、それほど殿下のことを知らないので、何も思い浮かばない。
王宮で何かあったのかも知れない。
「………さあ、私にも殿下のお心のうちは解りかねます」
うっさらと涙目をこちらに向け、次に階上を見て、ジャックさんは、自分も戸締まりを確認したら今日は休むので、早くお休みなさい、と言って私から離れていった。
ジャックさんはいつ公爵が帰宅するかわからないため、何かあれば全て自分が対応すると言って皆には早々に仕事を上がらせた。
シリアさんたちは昨晩のうちにヨガ用衣装を半分ほどは作り終えており、今夜のうちに仕上げると意気込んでいた。
驚いたことに、皆少しずつ差はあるが、もっと露出の少ないものを作るかと思いきや、私の衣装とほぼ変わらないものを作っていた。
この分なら、明日の夜には第一回目のレッスンを始められるだろうと考え、私はカリキュラムを組み立てるため、視察も兼ねて一人ボウルルームへ向かった。
三本立ての燭台に差した蝋燭を灯し、僅かな灯りだけの中にいると、視覚が制限される分、他の感覚が研ぎ澄まされる。
初めてのレッスンは体をほぐしたり、伸ばしたり、簡単な動作に絞る。動作に気を取られ過ぎて呼吸がおろそかにならないよう、気を付けなければならない。
皆に教える分のカリキュラムが出来上がると、今度は自分用にもう少し難易度を高くする。
最後の5分、ゆっくりと呼吸を整え、側に置いた水差しからコップに水を注ぎ、一気に飲んだ。
一息ついてから立ち上がり、荷物を片付けてボウルルームを出た。
「あ……」
ちょうど部屋を出ると、帰宅した殿下とエントランスで鉢合わせた。
慌てて頭を下げる。
「お帰りなさいませ、旦那様」
「…………」
返事がないので不振に思って腰を曲げたまま顔だけをあげると、こちらをじっと見る彼の視線とぶつかった。
「旦那様」
ジャックさんが声をかけると、彼は呪縛が解けたようにそちらに視線を向ける。
「何かお召し上がりになりますか?」
「いや、いい。王宮で兄上たちと共に済ませた。ジャックも今日は朝早くから疲れただろう、戸締まりを確認したらもう休め。後は自分でする」
ジャックさんにそう指示すると、視線は外したまま私の方に顔だけをむける。
「夕べはすまなかった。あまりに気持ちが良すぎて不覚にも寝入ってしまった」
反らされた視線の先に入ろうと立っている場所を動いてみたが、今度はくるっと反対の方を向かれてしまった。
「お役に立てましたなら、幸いでございます。ご要望がありましたら、いつでもお申し付けください」
もう一度殿下が顔を向けた方に場所を移動する。
私の動いた気配に顔を背けたまま、ちらりとこちらの様子を見たが、今度ははっきり体を階段の方に向け、さっさっと階段を上がっていく。
「そなたも早く休め。明日はいつもどおりの時間に起きて登城する。寝坊するな」
立ち止まらず、そのまま二階に上がり振り返ることなく奥へ消えていった。
「ぷ……」
近くにいたジャックさんが口許を覆い、肩で笑っている。
「殿下はご機嫌が悪いのでしょうか」
怒らせることを何かしたのかと考えてみるが、それほど殿下のことを知らないので、何も思い浮かばない。
王宮で何かあったのかも知れない。
「………さあ、私にも殿下のお心のうちは解りかねます」
うっさらと涙目をこちらに向け、次に階上を見て、ジャックさんは、自分も戸締まりを確認したら今日は休むので、早くお休みなさい、と言って私から離れていった。
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