危ない双子〜その愛に溺れて〜

橘 葛葉

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「なんで、こんな……」
「諦めて、桜」
そう言って澄人が桜に覆い被さり、唇を奪う。濃厚にキスを交わしながら、腰を動かす。
「あっ……あぁっ……」
隣から伸びてきた手が、桜の顎を掴んで顔を横に向かせる。熱い吐息を吐きながら見た先には、澄人とそっくりの顔。
「阿澄……」
その名を呼ぶと、唇が近づいてくる。
「ん……」
阿澄のキスは唇を離れると、首筋に移動し胸に到達する。
ぬちぬちいわせて緩く腰を動かしている澄人は、邪魔しないように桜の足を持ち上げた。
阿澄の顔はどんどん桜と澄人が結合している部分に近づいていく。やがてその手前で止まると、桜の敏感な部分を探しだして舐める。
「あ……阿澄、だめ……あぁ!」
中に入っている澄人が、少し強めに桜を突いた。
「あぁ!澄人……」
澄人の名を呼ぶと、阿澄の舌が早くなる。
「あっ……だめ、阿澄……だめ……」
呼応するように澄人の腰が動き、阿澄の舌もリズムを合わせるように動く。
阿澄が桜の下腹部をぐっと押すと、桜の嬌声がさらに大きくなる。
跳ねた腰を押さえ舌を使う阿澄に、桜の脚を持ち上げて腰を使う澄人。
「あ……あぁ、だめ、阿澄……澄人……いき……そう」
少しだけ早まる二人の動きに、下半身の力が入っていくのを桜は止められなかった。
「あっ、あぁ!」
ガクガクと大きな痙攣が桜を覆い、二人の動きがしばらく止まる。
「あっ……」
少し待った阿澄は離れ、ペットボトルの水を自らの口に含むと、桜に口移しで飲ませる。
澄人にもそれを渡すと、繋がったままの二人の背後に回る。
ペットボトルをベッドに放り投げた澄人、さらに腰を動かし桜を突いた。
「あっ……」
桜の反応を見ると、満足げに阿澄を見る。
それに頷いた阿澄は、澄人の腰を持つ。
「挿れるぞ」
澄人にそう言うと、返答を待たずに突き刺した。
「あぁっ」
押し出されるようにして桜の奥へ入り込む澄人。阿澄がいなくなった桜の上半身に覆い被さると、背後から突かれながら桜にキスをする。
「む……んん、澄人っ……あぁ……あっ……」
桜の頬に手をあてた澄人は、愛おしそうにキスを繰り返す。
背後の阿澄はどんどん動きを早め、澄人も声を押さえられなくなりつつあった。
「あっ、いいっ、いきそうだよ阿澄、桜」
澄人の手が桜の小さな突起を探して刺激する。
「あっ、だめ澄人……」
「ふふ、ダメじゃないって阿澄から聞いてる」
「あっ、そんな……だめ、なのに……」
桜の顔横に両腕をついた澄人。突かれながら桜を薄く目を開けて見る。
「いいよ、あっ、あっ、でも、気持ち、いいでしょ?」
「うん……また、いきそ……う……」
桜の中には澄人が、澄人の中には阿澄が。
三人にしか分からない幸せの形が、その揺れと共に育まれていく。







「ね、桜。今日も居るよ、あの双子」
ランチタイムのイタリアンレストラン”マーレ”で、魚介類のサラダを前菜に食べていた桜は、同僚である美奈子の言葉でその目線を追った。顔は正面だったが、目だけが右を見ている。
その目線につられて見たそこに、よく見かける双子がいた。
白と灰色で纏められて落ち着いた雰囲気の、桜が想像するに兄と、オレンジ色のセーターを着た弟(たぶん)の双子。
桜の視線に気がついたのか、オレンジセーターの弟が微笑んで手を振ってくる。
「!」
慌てて顔を逸らしサラダに戻る。正面に座った美奈子もつられるようにして双子を見るが、目が合わなかったようで残念そうに溜息をついた。
「素敵だよねぇ。なんの仕事してるのかな」
「聞こえたら失礼だし、今はやめよう」
小さく言った桜に、美奈子は不満そうな顔をする。
「え~ケチ。いいじゃない、聞かれたって。これもアピールのうちでしょ」
「アピールって……」
目が合って手まで振られた桜は、気まずい思いでサラダを突く。
「ね、今度、声かけてみよっか」
「やめて、相手にされないよ」
そんな会話の途中でメインのパスタが来た。
「食べましょ」
桜はそう言うとフォークをとってパスタを巻きつける。
男達の方は見ないようにしてランチを進めた。







食べ終わって食後のコーヒーを飲みながら、美奈子はまだチラチラと双子の方を見ている。しかし桜は戻る時間が近いことが気になって、時計を確認すると財布を取り出す。
「ちょっとトイレ。一緒に払っておいてくれる?」
食べ終わった桜は美奈子にランチ代を渡し、急いで立ち上がるとトイレに向かった。







リップを塗り直して店内に戻ると、美奈子が双子と話しているのが見えて驚いた。
本当に声をかけるとは思ってなかったが、そこに合流する勇気などない。入り口付近で美奈子を待った。
「ごめん、お待たせ」
頬を上気させてやってくる美奈子に、桜は何も言わず首だけ傾けて問う。
「本当に声をかけたの?」
会計を済ませた美奈子と店を出て歩き出す。
「それがさ、うっかり財布落としちゃって」
「あぁ、拾ってもらったついでに?」
「うん。声までイケメンだった。それになんか色気ある」
「どっちが?お兄さんっぽい方?」
桜がそう問うと、今度は美奈子の首が傾く。
「お兄さんってどっち?」
「どっちって……」
顔の特徴が同じだから説明しようがない。
「えっと、手を振ってきたのが弟じゃないかなって思ってるんだけど、確認してないし分からないよね」
「じゃ、確認しに行かない?」
「え?」
桜は美奈子を見る。
「連絡先交換したんだ~。今度四人で飲みましょうって」
「えぇ!」
「どっちか分からないけど、桜にも興味あるって。手を振った方じゃないの?えっとね、灰色のセーターの人が言ってたよ」
「手を振って来たのはオレンジの方だけど……。私が見ちゃったから愛想で振っただけだよ」
桜がそう言うと、美奈子はぷくっとふくれる。
「じゃあ、何?兄も弟も桜狙い?」
「そんなことなないと思うけど……」
「く~、悔しい!でもでも、あぶれた方とワンチャンあるよね!」
「そ、それは……私にはなんとも」
会話はそれまでだった。会社についてしまった二人は、それぞれの部署に戻り作業をする。
二島ほど離れている彼女の様子をチラチラ伺っていると、こっそりスマホを取り出してやりとりをしているように見える。
そんな美奈子は夕方、定時の一時間前になるとこちらのデスクへ来て、メモを貼って去っていく。
【オレンジセーターは澄人くん】
仕事中、ずっとその澄人くんとやりとりしていたのだろか。
苦笑しながら入力作業を進めていると、また美奈子がやってきてメモを貼り付ける。
【弟くんで合ってた!今日行ける?】
「え、今日?」
小さく呟いてしまった桜に、隣の事情を知らない同僚が顔をむける。
「どうしたの?」
「う、ううん。なんでもない」
あまりに早い展開に、内心ドキドキしながら仕事を進めた。
特にトラブルもなく一日を終え、美奈子と共に会社を出た。








「ねえ、本当に行くの?危なくない?」
桜は美奈子に心配そうな顔を向けて言う。
「大丈夫大丈夫。それに桜は連絡先渡してないから、怖くなったらさっと帰ればいいよ」
「でも……お金取られたり、囲まれてどっかに売り飛ばされたりしない?」
「お金は分からないけど、売り飛ばすって何」
笑いながら言う美奈子に、不安そうな顔のまま桜は付いていく。
「待ち合わせ”マーレ”だから大丈夫。そこから移動先決める事になってんの。あたし達が行きたいところで良いって」
そう聞いてようやく桜は安心した。
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