くすぐり体験談/ くすぐり短編集

くすぐり小説 / くすくすくらぶ

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美里と夜の訪問者

美里は中学二年生の、ちょっとオカルト好きな女の子。
怪談の本を読み漁ったり、インターネットで見つけた怖い話を友達と語り合ったりするのが趣味だったが、自分には霊感がなく、いつか幽霊を見てみたいな、と心の底で少しだけ願っていた。
彼女の部屋は古い一軒家の二階。
木の床をキシキシ鳴らしながら登ると、ちょっとだけ不気味な雰囲気だなあ、と思う。
でも、それが逆に雰囲気を盛り上げてくれるから、少しボロいところも美里は気に入っていた。

その夜もいつも通りだった。
美里はベッドでごろごろしながら、
スマホで怪談スレッドを眺めた後、眠気に負けて目を閉じる。
外では風がギシギシと木の枝を揺らし、遠くで蛙が低い声で鳴いている。
時計の針は午前1時を少し回ったところだった。

そして、それは突然のことだった。

「……?」

落ちかけた意識が引っ張り上げられるように、不意に目が覚めた。
いや、目を開けただけだ。体が動かない。

彼女はこの感覚に慣れていた。小学生の頃から時々こうなることがあって、最初は怖かったけれど、今では「またか」と冷静に受け止められるようになっていた。
「目を閉じて、深呼吸して、じっと待てばそのうち解ける」と自分に言い聞かせ、
暗闇の中で心を落ち着けようとした。

だが、その夜は何かが違った。

最初に感じたのは、足元から首筋まで、冷たい空気が撫でるような感覚だった。風じゃない。
窓は閉まっているし、エアコンもつけていない。
そもそも体には薄いタオルケットをかけているから、風を感じるはずがない。
美里の心臓が、トクトクと速く打ち始めた。

次に、彼女の脇の下あたりで何かが動いた。
ふわっとした、でもはっきりと感じる不思議な感触。

(ひっ……何、これ…)

冷たくて柔らかい、「何か」が、そっと彼女の皮膚を這い上がるように動いた。
触れた瞬間、ぞくっと背筋に寒気が走る。
気持ち悪さにぶるっと体が震え、なんとか声を出そうと力を入れてみる。

「……!   っ….  っーー!!」

全く力が入らず、声が出せない。瞬きと、口の端がほんの少しピクリとしただけだ。
美里の目は暗闇の中でキョロキョロと動き、状況を理解しようと必死だった。
すると、
視界の端の腕のそばで、薄いブルーのタオルケットがむくりと小さく盛り上がった。

「…?」

それはタオルケットの下で、二つに分かれて動き出した。
まるで、そこに誰かの「手だけ」があるかのようなシルエット。
その二つの「手」は、しばらくすると、まるで彼女の反応を楽しむかのように、
ゆっくりと美里に近づき始めた。

ゆるゆると手は美里の腕と体の隙間を這ってくる。

(やだっ…来ないで…!)

ゴソゴソと動き、やがてそれぞれが両脇の下へ辿りつくと、一斉にぴたりとその動きを止めた。

(一体なんなのっ…?)

手は、タオルケットの下で美里をじっくり観察していた。
指がタオルケットのブルーの濃淡に浮かび上がって蠢く。
首を絞められてしまうかもしれない。
何をされるかわからない恐怖に、心臓の鼓動がどんどん早くなる。

(体、動いて…!)

懸命に体に力を入れようとしても、美里の体はまるっきり力の入れ方を忘れてしまったかのようだった。
そして、それに反応して動き始めたのは手の方だった。

つうっ……。

冷たい指先のようなものが、ゆっくりと両側から彼女の脇のくぼみをなぞった。

「っ!」

ムカデが這っているような気味の悪さに、全身にぞわっと鳥肌が立つ。
手は、もそもそ、とタオルケットの下で指を広げた。

さわ、さわ…。
数本の指でつうー...と細い線を描くように脇を撫でる。
くぼみのシワに沿うように、何度も、何度も。
その感覚は、ゾクゾクして不気味なのに、美里の中で違う感覚が生まれていた。

(くっ…くすぐったいぃ…!)

美里の体は動かないのに、怪しい手の悪戯に全身がビクッと反応する。
全く力が入らないから、その感覚を余すとこなく受け入れてしまう。

右の指が、つん、つん、と軽くつついて試すように動いたかと思うと、左がつーっと一本の指で円を描き始める。くる、くる、と美里の脇のくぼみで外側からゆっくり渦巻きを描いていく。

(いやあ…き、気持ち悪いっ…くう、ふうう…!)

そして、中心まで到達すると、くりっ…と指先でほじるように刺激してきた。

「 っ! っ、 …!!」

声にならない声が少しだけ開いた美里の口から溢れる。
それに気を良くしたのか、両方の指が、
くり…くり…くり…とくぼみの中心をしつこくほじくりだした。

彼女は心の中で(やめて! やめてってば!)と叫びながら、声にならない声で笑っていた。触れてくる手はヒヤリと冷たいのに、くすぐったさは熱を帯びたようにジワジワと広がり、美里の神経をくすぐり続ける。

(やっ、それ、やめてぇ…!)

どんなに美里が心の中で叫んでも手は止まらない。

脇の下を十分に楽しんだ後、今度は彼女の肋骨のあたりにゴソゴソと降りて、十本の指を美里の肋骨に添えた。

ゾクッ…とした怪しい感覚が肌を粟立たせる。
ピクリと美里の体が震えた。

そして、一本一本の肋骨をなぞるように、ゆっくりと指先が這い始めた。
すーり、すーり、と、広げてから窄めるように動かして、美里のなめらかな素肌を愛でる。

幽霊の手はまるで意地悪な友達のように、彼女の反応を見ていた。
体がぴくん、と跳ねるような、一番弱いところを的確に見つけてくる。
肋骨の隙間をカリカリとひとしきり楽しんだ後、
今度は美里が特にゾクゾクして耐えられない胸の下やその横ばかりを、しつこく両方から何度も指でなぞり始めた。

すり…すり…すり…。

(やっ…なんか、そこ、やばいっ…!)

内臓の奥までじわじわ染み込んでくるくすぐったさに小さな吐息が漏れる。
体の奥がぎゅう、と熱くなって、美里の体は薄桃色に火照っていた。

かち、こち、かち、と時計の秒針の音だけが薄暗い部屋に響く。
一体どのくらいの時間、そうやって弄ばれただろう。
気分が変わったのか、手は脇腹からもぞもぞと美里の体に上ってきた。

(うっ…くっ、くぅ…)

もう美里の体は、手が体を這い上る幽かな刺激だけでくすぐったさを感じていた。
さあ、次はどこで遊ぼうか。
二つの手はまるで迷っているかように、美里の体をモゾモゾと這い回った。
タオルケットの下で蠢く不気味な膨らみを、美里は目で追うことしかできない。

一方が反対の脇の方へ行ったかと思えば、鎖骨の窪みをつつつ、となぞり、
もう一方の手は胸の上で止まってじっくりと悩むようにつん、つん、とつつく。
そんな風に美里の体の上をひとしきり這い回った後、
手はもそもそ…とゆっくりお腹へ向かって歩き始めた。

(なっ…何?!)

お腹の方まで辿り着くと、手はTシャツの中へゴソゴソ潜り込み出した。

「ーーーっ!!」

素肌に直接、冷えた指先が触れて美里の体が跳ねる。
柔らかくすべすべした美里のお腹の上を、手は十本の指先で、さわ、さわ、と感触を楽しんでいる。

(うっ…くくくぅっ…)
触れるか触れないかのソフトタッチで撫でられて、耐え難いゾクゾク感が美里を悩ませる。
ウエストの締まったところから、すうっと指を揃えて撫でられると、くすぐったくてひくひく腹筋が痙攣した。
おへその周りをこしょこしょといじめられると、唯一動かせる瞼がぱちぱち瞬いて、涙が滲んだ。

(いひっ…ああぁ、そこっ…だめ)

片方の手は指を広げるようにしてお腹全体を撫で回し、
もう一方の手はへその周りを円を描くように、同時にくすぐってくる。
冷たい感触が皮膚を這うたび、美里の腹筋は勝手にピクピクと反応した。
すり、すり、こしょ、こしょ、こしょ、こしょ……

無防備な美里のお腹を撫でてたっぷりと楽しんだ後、
手は、ズボンの緩いゴムの隙間へ潜り込み出した。

「ーーっ!」
(やっ、そこ、いや……!)

二つの手は下腹部をこしょこしょとくすぐりながら、ゆっくりズボンの中へ侵入していく。
左右に分かれて、足の付け根を怪しい手つきでなぞり、太ももの内側へ入り込んできた。
そして、膝の裏から太ももにかけて、ゆっくりと這うようにくすぐってくる。

(いひひっ…この、エッチ!お化けの、癖にいっ…ひっ、ああん)

右の手はまるで遊ぶように、太ももの内側の敏感な部分をつん、つん、とつついて、左の手は一本指で線をなぞるようにすーっと膝から内ももの上まで撫で上げる。
両方の手が這い上がってきて、鼠蹊部を一斉にそろそろとくすぐられると、恥ずかしいくすぐったさに耐えきれなくて、美里は必死に足に力を入れようと足掻いた。
(んんん…ひゃああ、そこ、やっ、ちがうう…!)

「もう無理! 無理! 助けて!」と頭の中で叫んでも、全く力の入らない体は全てのくすぐったさを受け入れてしまう。

(はあああん…やあ、ダメっ…)
両方の膝小僧を、手でじわあっ…と開いて、閉じて、
心の中の反応をじっくり観察するように、手はひたすらいやらしくくすぐりながら、美里の脳を溶かしていった。

(も、しつこい、そこ、ばっかり…っ!)

そんな美里の悪態が届いたのか、二つの手は今度は膝から下の方へ進み始めた。

(っふう、んっ…早くどっかいきなさいよっ…うう)

しかし、そんな美里の思いを知ってか知らずか、

手は美里の足首のあたりでぴた、と動きを止めた。

そして、

(ひああっ…)
右の手は足の甲をサラサラと撫で始めた。
もどかしいくすぐったさが美里の心を犯していく。

(そんなのっ…やっ、耐えられないっ…!)
細い骨をなぞられ、足の指先が微かに動く。

反対の手はそんな足の指を気に入ったのか、指と指の間を広げた。
(あはあっ?!)
指と指の間を、ぺろっと舌で舐められたような不思議な触感がして、美里は足を見た。
さっきまでとは違う、湿った舌がピチャピチャと指の隙間を舐め上げてくる怪しい感覚。
ひんやりとしてざらついた舌が、ニュルニュルと指の股をなぞるたび、ぴく、と小さく腰が跳ねる。

「ーーっ!」
足の指を一本ずつ丁寧に舐められると、くすぐったくておかしくなりそうだった。

(あっ…ん、それやあ…ああっ…)

二つの手は飽きることなく、美里の足裏を満喫する。
右の手が足の裏に文字を書くように、指先でつーっと線を引く。
一本、二本、三本……。

焦らすようにじっくりと責める右に対して、
左の手は、足の裏の土踏まずを執拗にこちょこちょとくすぐり始めた。

「ーーー!!!!」

(いぎぃっひひひぃ!!!や、やめてええっ!!お、おかしくなるぅう!)

ぞわぞわする刺激と、激しいくすぐったさに挟まれ、美里は狂ってしまいそうだった。
心の中でどれだけお願いしても、手は止まることがない。

ひたすら足の裏をくすぐられて、どれくらい時間が経っただろう。
10分か、15分か、それとももっと長かったのか。
くすぐり続ける幽霊の手はまるで疲れを知らないようだった。

(あはっ….あはあ、いひっいひひひいひ….)
何も考えられず、されるがまま、ただくすぐったさに翻弄されながら、美里は心の中でくたくたになりながら笑い続けていた。

しばらくして、足裏のくすぐりに飽きたのか、手は、ゆっくり全身をこしょこしょとくすぐりながら彼女の首筋に這い上ってきた。

右の手が耳の裏を軽く撫で、左の手が愛おしむように首の横をそっとくすぐる。
ゾワゾワとした感覚を全身にさんざん教え込まれて、

(いひひっ…も、もう…ああん、お願いっ、許してっ…!)

美里は、心の中で懇願した。

突然、フワッと体が軽くなった。金縛りが解けたのだ。
美里ははあ、はあ、と息を切らしながらベッドを這って、ベッドサイドのランプを点けた。オレンジ色の光が部屋を照らし、彼女は息を切らしながら周りを見回す。

誰もいない。

窓は閉まっていて、カーテンは揺れていない。眠る前の部屋のまま。
ただ、彼女の脇腹、お腹、太もも、足の裏には、まだくすぐられているように、ゾクゾクとした余韻が残っていた。

美里はベッドに座ったまま、しばらく放心していた。

「幽霊……だよね、あれ」

呟きながら、自分の体を触って確かめる。
服に変な跡はない。じっとりと全身に冷や汗はかいているけど、怪我もない。
でも、あの感触は夢なんかじゃなかった。確信があった。

でも、それ以降、「くすぐり幽霊」は二度と現れなかった。

「成仏、したのかなぁ…」

美里は少しホッとしながらも、
いつかまた来ないかなあ、と天井を見上げながら思い出すのだった。


おしまい
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