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05 ■Reincarnation01■――転生者
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もうすぐ年末。
すこし雪が積もって、教会は白く衣替えだ。
私は神父様の魔法レッスンで、他人の簡単な怪我や病気も治せるようになってきた。
チビたちはよく怪我をするのでよい練習台になってもらってる。
チビたちにも私が治せることは内緒にするため、神父様が治すフリをして私が実は治す、という連携だ。
「さすがプラム。飲み込みが早いね。治癒の授業はもう修了にするね」
「ありがとう、神父様」
誕生日の後、神父様には、ブラウニーに運命の話をしてしまったこと、
その上でも二人で旅にでると決めたことを、ブラウニーと一緒に話しに行った。
『まあ……そうなるとは思ってたよ』
神父様はどこかあきらめた表情でそう言った。
『僕がどう言おうと君たちが決めたのならしょうがないからね。できるだけ支援はするよ』
神父様も頭を切り替えてくれたようだった。
結局、神父様がなぜそういった運命を知っているのかは聞けずじまいになっている。
私にもできるんだろうか。
「プラム、聞いてる? 次は少々…そうだね、魔法をからめた武器の扱い方とか教えようか。ショートソードにしようか。
僕が教えられるからなんだけど。それと素手による格闘も少しやっておいたほうがいいね。
まあ、正直君はそっち方面はどんくさいところあるから……魔力を使って自分を補うやり方覚えないとね。ちゃんと覚えていざという時はブラウニーを守るんだよ」
「私が守る前提なんですね!!」
「当然でしょ。プラムのほうが色々人間的にはるかに強いんだから。
屈強なただのおじさんくらい一捻りにできるようになってもらわなきゃ。
でも、ブラウニーも冒険者ギルドにインターンで通って色々覚えてはいるようだから二人で支え合ってね」
「屈強なただのおぢさんを一捻り……」
人間的に強くても女の子的にどうなんだそれ。
強くなるかわりに女性的イメージが損なわれていってるがする……!
「君は魔力を変質する事で筋力を補強できるから、それさえ覚えたら並大抵のやつは君に敵わないよ。
しかもその魔力も無尽蔵ときたものだ。まったくチートなんだから」
「え、そうなんですか? じゃあ鍛えてムキムキとかにはならなくていいの?」
「気にするのそこなんだね……。まあ、鍛えたほうがいいけど、君の場合筋力は計算にいれなくていい。
さっきも言ったけど、魔力を変質させて筋力のかわりに使う。
これも力加減を覚えないとね。峰打ちのつもりが神の身許に送る羽目になるかもしれない。
君はとにかく力加減を覚えるのが大事だ」
「……神父様、私ってそんなやばいの?」
「……あ~、えーっと、あとはその魔力変質は防御にも使うんだよ。
君なら練習詰めば、ダイヤモンドくらい硬くなれるかもしれないね。盾いらずだね。強いね。うん。高いところから落ちても、まとってる魔力に弾力を与えればノーダメで着地できるだろうし、身体は傷ついてもすぐなおるし、今や毒も病気も治せるし、隙がないね。……あくまで、扱えれば、だけどね」
「これは本気でそう思うから言うんだけどね?
色々覚えた後の君をどうやったら普通に殺せるのか教えてほしい」
ころ!?
「丁寧にやばいって教えてくださってありがとうございます!!
でもそんなに強くなることは私のただ、ブラウニーと一緒にいるっていう夢には本当に必要なんですかね!?」
……神父様、私に対して最近素がでてきてるけど、この人かなり毒舌なんじゃ……。
「なにいってんの、かなり重要なことだよ。
君は大きな運命を抱えてるのに、それを全部放り出してささやかな夢を叶える事にした。
運命のほうが君が必要で追いかけてくるんだ。
それを回避するには強くないと。
逆に言うと、いつかささやかな夢を捨てて大きな運命を受け入れる時がくるかもしれない。
その時にも必要。
なんにせよ君は強くならないといけない」
「とりあえずここでるまでに基本的なことは叩き込んであげるから覚えてよね。
その後は、新しい師を得るか、自分で勝手に強くなって」
「勝手に」
「大丈夫、君はチートだから」
神様……私は自分のこと人間だって思っててもよいのでしょうか。
その後、神父様がいない時に教会の裏手でこっそり魔力変質の練習をしていたところへシスター・イラがやってきた。
いつもどおりの難癖つけて殴られそうになった時、思わず魔力変質で身体を固めるのを初成功してしまい、シスター・イラの手の骨が砕けてしまった。
こっちが攻撃しなくても、相手にダメージ与えられることってあるんだな……。
神父様が気絶するシスター・イラを治療しながら言った。
「おめでとう。これでやっとシスター・イラを教会からほうりだして新しいシスター呼べるよ。結構長かったなぁ」
「……はい???」
「これは秘密なんだけどね。こういう出来事が起こるって知ってたから、この人を追い出さなかったんだよね。他にも君が魔力変質に成功するルートはあったんだけどこれが一番早かったからね」
驚愕した。
この人は本当に運命を色々知ってるんだ。……でも。
「神父さま、そのためにシスター・イラを教会においてた……って。
シスター・イラは確かに酷い人だと思うけど、でも……私のためにここに呼び込んでたとか、
それが終わったから追い出すとか……」
「うん、言いたいことはわかるよ。酷い話だよね。軽蔑する? 神父なのにね」
「いえ、軽蔑とかまではしませんが……」
この人は人を人扱いしてない時がある気がする。
「よいしょ。彼女の部屋まで運んで寝かせてくるよ」
辛辣なことを言う割に、神父さまはシスター・イラをお姫様だっこした。
正直俵抱きすると思ってたよ!
「あれ」
お姫様抱っこされたシスター・イラの顔を見ると、違和感を覚えた。
中年のおばさんかと思ってたけど、結構若くて、寝てるだけなら割と美人だ。
全然印象が違う……。
「これは信じてほしいんだけどね」
「?」
「このイベントは彼女にとっても必要なことだったんだ」
去り際にポツリそう言うと、神父様は宿舎のほうへさっさと行ってしまった。
その次の日の朝、私は絶叫することになる。
※※※
「……やっば、カワE……」
次の日の早朝、ふと妙な気配に目を冷ますと目の前にシスター・イラがいて、恍惚とした表情で私を覗き込んでいた。
「ぎゃああああああっ!?」
私は大悲鳴をあげた。
隣のベッドで寝ていたブラウニーがその悲鳴を聞いてガバっと起き上がり、アワアワしている私を抱き寄せる。
「大丈夫か? 落ち着けプラム! すいません、シスター。離れてもらえますか?」
シスター・イラの様子に普段冷静なブラウニーの顔もドン引きである。
チビたちも、どうしたの~?と目をこすりながら起きてきては、子ども部屋に悲鳴がひびく。
シスター・イラはそれだけ皆怖いのだ。
「やだ、私。変質者みたいね!? ごめんなさいっ」
変質者みたいではなく、まさに変質者では!?
シスター・イラはパタパタ小走りに子ども部屋を出ていった……。
「一体なんだったんだ…? 新手の嫌がらせか…?」
ブラウニーが青い顔で言った。
「わかんない……」
私は昨日の神父さまの言葉を思い出した……。
『彼女にとっても必要なことなんだ』
訳はわからないけど、彼女になにか変化があったってことはわかる。
さっきのシスター・イラはまるで別人だった。
「でも嫌がらせしようって感じはしなかったよね……」
ブラウニーにぎゅっと抱きつきながら、心臓を落ち着かせる。
ふぅ、びっくりしたけど。
……朝からブラウニーに抱き寄せてもらえた、ふふふ。
「いつまで抱き合ってんの?」
2つ年下のロベリオが口尖らせながら余計なことを言った。
「おっと。びっくりしたな、プラム、大丈夫か?」
ブラウニーが、はなれた。
うわーん。スキンシップチャンスは貴重なのに……。
すこし雪が積もって、教会は白く衣替えだ。
私は神父様の魔法レッスンで、他人の簡単な怪我や病気も治せるようになってきた。
チビたちはよく怪我をするのでよい練習台になってもらってる。
チビたちにも私が治せることは内緒にするため、神父様が治すフリをして私が実は治す、という連携だ。
「さすがプラム。飲み込みが早いね。治癒の授業はもう修了にするね」
「ありがとう、神父様」
誕生日の後、神父様には、ブラウニーに運命の話をしてしまったこと、
その上でも二人で旅にでると決めたことを、ブラウニーと一緒に話しに行った。
『まあ……そうなるとは思ってたよ』
神父様はどこかあきらめた表情でそう言った。
『僕がどう言おうと君たちが決めたのならしょうがないからね。できるだけ支援はするよ』
神父様も頭を切り替えてくれたようだった。
結局、神父様がなぜそういった運命を知っているのかは聞けずじまいになっている。
私にもできるんだろうか。
「プラム、聞いてる? 次は少々…そうだね、魔法をからめた武器の扱い方とか教えようか。ショートソードにしようか。
僕が教えられるからなんだけど。それと素手による格闘も少しやっておいたほうがいいね。
まあ、正直君はそっち方面はどんくさいところあるから……魔力を使って自分を補うやり方覚えないとね。ちゃんと覚えていざという時はブラウニーを守るんだよ」
「私が守る前提なんですね!!」
「当然でしょ。プラムのほうが色々人間的にはるかに強いんだから。
屈強なただのおじさんくらい一捻りにできるようになってもらわなきゃ。
でも、ブラウニーも冒険者ギルドにインターンで通って色々覚えてはいるようだから二人で支え合ってね」
「屈強なただのおぢさんを一捻り……」
人間的に強くても女の子的にどうなんだそれ。
強くなるかわりに女性的イメージが損なわれていってるがする……!
「君は魔力を変質する事で筋力を補強できるから、それさえ覚えたら並大抵のやつは君に敵わないよ。
しかもその魔力も無尽蔵ときたものだ。まったくチートなんだから」
「え、そうなんですか? じゃあ鍛えてムキムキとかにはならなくていいの?」
「気にするのそこなんだね……。まあ、鍛えたほうがいいけど、君の場合筋力は計算にいれなくていい。
さっきも言ったけど、魔力を変質させて筋力のかわりに使う。
これも力加減を覚えないとね。峰打ちのつもりが神の身許に送る羽目になるかもしれない。
君はとにかく力加減を覚えるのが大事だ」
「……神父様、私ってそんなやばいの?」
「……あ~、えーっと、あとはその魔力変質は防御にも使うんだよ。
君なら練習詰めば、ダイヤモンドくらい硬くなれるかもしれないね。盾いらずだね。強いね。うん。高いところから落ちても、まとってる魔力に弾力を与えればノーダメで着地できるだろうし、身体は傷ついてもすぐなおるし、今や毒も病気も治せるし、隙がないね。……あくまで、扱えれば、だけどね」
「これは本気でそう思うから言うんだけどね?
色々覚えた後の君をどうやったら普通に殺せるのか教えてほしい」
ころ!?
「丁寧にやばいって教えてくださってありがとうございます!!
でもそんなに強くなることは私のただ、ブラウニーと一緒にいるっていう夢には本当に必要なんですかね!?」
……神父様、私に対して最近素がでてきてるけど、この人かなり毒舌なんじゃ……。
「なにいってんの、かなり重要なことだよ。
君は大きな運命を抱えてるのに、それを全部放り出してささやかな夢を叶える事にした。
運命のほうが君が必要で追いかけてくるんだ。
それを回避するには強くないと。
逆に言うと、いつかささやかな夢を捨てて大きな運命を受け入れる時がくるかもしれない。
その時にも必要。
なんにせよ君は強くならないといけない」
「とりあえずここでるまでに基本的なことは叩き込んであげるから覚えてよね。
その後は、新しい師を得るか、自分で勝手に強くなって」
「勝手に」
「大丈夫、君はチートだから」
神様……私は自分のこと人間だって思っててもよいのでしょうか。
その後、神父様がいない時に教会の裏手でこっそり魔力変質の練習をしていたところへシスター・イラがやってきた。
いつもどおりの難癖つけて殴られそうになった時、思わず魔力変質で身体を固めるのを初成功してしまい、シスター・イラの手の骨が砕けてしまった。
こっちが攻撃しなくても、相手にダメージ与えられることってあるんだな……。
神父様が気絶するシスター・イラを治療しながら言った。
「おめでとう。これでやっとシスター・イラを教会からほうりだして新しいシスター呼べるよ。結構長かったなぁ」
「……はい???」
「これは秘密なんだけどね。こういう出来事が起こるって知ってたから、この人を追い出さなかったんだよね。他にも君が魔力変質に成功するルートはあったんだけどこれが一番早かったからね」
驚愕した。
この人は本当に運命を色々知ってるんだ。……でも。
「神父さま、そのためにシスター・イラを教会においてた……って。
シスター・イラは確かに酷い人だと思うけど、でも……私のためにここに呼び込んでたとか、
それが終わったから追い出すとか……」
「うん、言いたいことはわかるよ。酷い話だよね。軽蔑する? 神父なのにね」
「いえ、軽蔑とかまではしませんが……」
この人は人を人扱いしてない時がある気がする。
「よいしょ。彼女の部屋まで運んで寝かせてくるよ」
辛辣なことを言う割に、神父さまはシスター・イラをお姫様だっこした。
正直俵抱きすると思ってたよ!
「あれ」
お姫様抱っこされたシスター・イラの顔を見ると、違和感を覚えた。
中年のおばさんかと思ってたけど、結構若くて、寝てるだけなら割と美人だ。
全然印象が違う……。
「これは信じてほしいんだけどね」
「?」
「このイベントは彼女にとっても必要なことだったんだ」
去り際にポツリそう言うと、神父様は宿舎のほうへさっさと行ってしまった。
その次の日の朝、私は絶叫することになる。
※※※
「……やっば、カワE……」
次の日の早朝、ふと妙な気配に目を冷ますと目の前にシスター・イラがいて、恍惚とした表情で私を覗き込んでいた。
「ぎゃああああああっ!?」
私は大悲鳴をあげた。
隣のベッドで寝ていたブラウニーがその悲鳴を聞いてガバっと起き上がり、アワアワしている私を抱き寄せる。
「大丈夫か? 落ち着けプラム! すいません、シスター。離れてもらえますか?」
シスター・イラの様子に普段冷静なブラウニーの顔もドン引きである。
チビたちも、どうしたの~?と目をこすりながら起きてきては、子ども部屋に悲鳴がひびく。
シスター・イラはそれだけ皆怖いのだ。
「やだ、私。変質者みたいね!? ごめんなさいっ」
変質者みたいではなく、まさに変質者では!?
シスター・イラはパタパタ小走りに子ども部屋を出ていった……。
「一体なんだったんだ…? 新手の嫌がらせか…?」
ブラウニーが青い顔で言った。
「わかんない……」
私は昨日の神父さまの言葉を思い出した……。
『彼女にとっても必要なことなんだ』
訳はわからないけど、彼女になにか変化があったってことはわかる。
さっきのシスター・イラはまるで別人だった。
「でも嫌がらせしようって感じはしなかったよね……」
ブラウニーにぎゅっと抱きつきながら、心臓を落ち着かせる。
ふぅ、びっくりしたけど。
……朝からブラウニーに抱き寄せてもらえた、ふふふ。
「いつまで抱き合ってんの?」
2つ年下のロベリオが口尖らせながら余計なことを言った。
「おっと。びっくりしたな、プラム、大丈夫か?」
ブラウニーが、はなれた。
うわーん。スキンシップチャンスは貴重なのに……。
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